「インボイスは廃止が最良策」に向け、共産党をはじめとした左派系野党議員の課題点を考える
埼玉県議会に続け!合言葉は「インボイスは廃止が最良策」ということで、誰でも自由に使えるインボイス廃止を求める陳情書の雛形を公開しています。
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意見書採択には多数派工作が不可欠だ
前回、自民の議員に伝えたいことの、ほんの一部を書いた。今回は野党、特に左派系の政党の議員に伝えたいことを記事にしてみる。
たぶん、共産党などの支持者や議員からは反論が出てくると思うけれど、STOP!インボイスのメンバーとして、全国の地方自治体に働きかけをしてきた立場から、これまでの経験を記録に残したいと思う。それがインボイスを止めるための役に立ち、そして、地方議会に働きかけをしようとする次の人たちへのヒントになると考えている。
ちなみに、今は「STOP!インボイス」のメンバーではないので、あくまで個人的な見解として書きます。
市民がインボイスに反対する陳情書ないし、請願書を自治体に提出する際、議員に知り合いがいれば、まずはその人を頼るのがいいと思います。いなければ、応援する政党に声がけするのでもOKです。まずは反対の声を議員に伝える、それが基本だと、いろんな地方議会への陳情書提出を手伝ってきた身としては感じている。
ただ、こちらの記事でも触れたように、意見書を採択させるには多数派工作が不可欠で、その意味では、どの政党に声がけするのかは大事なポイントとなる。
大半の地方議会は自民党系が多数派を占めている。少数派の野党が騒ぐことで、かえって自民党がインボイスの問題を敬遠することもある。
実際に自民党議員から「インボイスって共産党が騒いでいるアレでしょ? 自民党は共産党の話には乗らないから、与党はこの意見書には賛同しないよ」みたいな発言を何度も耳にしてきた。
そういう自民党議員はインボイスにどんな問題がはらんでいるのか知りもしないし、知ろうともしない。こうした自民党議員の態度には呆れるし、その根底には自民一強時代が長く続き過ぎたゆえの怠慢や傲慢さがあると思っている。ただ、いっぽうで、共産党にも問題を感じている。
評判が悪い抱き合わせの請願書
まず、評判がすこぶる悪いのが、各地の共産党議員が提出しているインボイス廃止と消費税減税を抱き合わせた請願書だ。おそらく、この請願はすべてが不採択になっているはずである(採択された事例をご存じの方は教えてください。こちら誤りがありました。京都府長岡京市議会ではこの請願が採択されているという情報をいただき、確認したところ採択されていました。失礼いたしました。)。自公だけではなく、本来、近しい立場である左派やリベラル系の議員からも評判が悪い。それはインボイス反対には賛同できても、消費税については見解が分かれるためである。
国政政党の野党共闘が思うように進まなかった理由のひとつに消費税がある。増税か、現状維持か、減税か、減税するなら何%か、あるいは廃止か。その見解を統一させることに野党は難航した。
インボイス制度は消費税の問題と直結しているため、共産党が抱き合わせの請願を出したい気持ちもわかるが、意見が割れやすい問題をインボイス廃止と並列で語ると、採択される可能性は極めて低くなる。
与党系議員から、共産党が提出する請願書は自動的に否決すると言われたことがある。抱き合わせ請願のように、非現実的な請願がしょっちゅう出されるからだと理由を述べていた。
左派系の地方議員からも抱き合わせ請願の評判の悪さを聞いていたので、共産党がその請願を出す度にぼくは落胆していた。
共産党からの抱き合わせ請願は、採択されることを本気で考えていない、ポーズの請願だと個人的には思っている。もちろん、抱き合わせでもインボイスや消費税の問題を訴えることに、まったく意味がないとは思わない。けれども、これをやることで支持者からの賞賛は得られても、ほかの政党からの評判を下げている事実がある以上、共産党にとってもインボイス反対運動にとっても抱き合わせ請願はデメリットが多いと感じている。
インボイス反対は支持者への単なるポーズ
これまで何度か地方議員からインボイス反対の請願について、相談を受けたことがある。対面でそうした相談を受けるとき、ぼくは必ず、「本気で採択させる気はありますか?」と聞く。なぜなら、支持集めのためにインボイス反対のポーズを取る政治家を何人も見てきたからだ。
例えば、マスコミが来るとわかった途端に、STOP!インボイスが主催する抗議イベントに出席を表明する国会議員とか。いや、政治活動には打算も必要なので、そういう態度をそこまで悪くは思わないけれど、それでも現金なものだなとは思う。
某野党の地方議員とは次のようなやりとりもあった。
その議員は、インボイス廃止の請願を出したいという。そこでインボイスの問題がわかる資料や推進派に反論するための材料が欲しいという。
ぼくは、採択には自民党の議員を説得する必要があるから根回しをして欲しいとさんざん伝え、そのために使える資料をメールで送った。その議員からの最後の返信には「玉砕覚悟でがんばります」という趣旨のコメントが力強く書かれていた。
正直、ズッコケた。こちらが望んだことは玉砕ではなく、与党議員の説得だ。
案の定、この地方議員は与党議員からの集中砲火を浴び、玉砕した。そして議会終了後、支持者に向かって頑張った自分、インボイス反対をどの政党よりも訴えた自分、自公は市民の敵であることを猛烈にアピールしていた。しかも、力強く。
こうした野党議員は何人も見てきたし、でも、案外、与党議員もポーズでインボイス反対を口にする人もいる。だから、紹介議員をお願いする際には、ちゃんと根回しを含めた活動をしてくれる議員かどうかを見極めることは大事だと思っている。
別イシューを混ぜ込むのはいただけない
ときどき、インボイスによる増税と軍拡の問題を結びつける左派系議員の見解を見聞きすることがある。政府の防衛予算については僕も言いたいことはあるが、インボイスと別のイシューを持ち込むと、広く賛同を得ることができなくなるので、いかがなものかと思っている。
これと似たものに、自党のチラシやポスターに書かれたキャッチフレーズを盛り込んだ答弁を読んだことがある。「地方から国を揺らしましょう!」と勇ましく言われても、他党からしたら、「俺、おたくの政党の議員じゃないからさ」とツッコミを入れられて終了となる。
しょせん政治は、意見が違う者同士の総意をまとめる調整なので、党派性を執拗に出さないで、他党も乗りやすい意見書を作成し、答弁をしたほうがいいのではないかと素人ながらに思っている。
自治体によって異なる事情
東京の某市議会での活動を手伝ったときのこと。紹介議員になってくれた少数会派の議員は、議会が始まる数日前に、自民、公明、維新、立憲、共産など、各会派にアポを取り、一緒に説得にまわってくれた。残念ながら不採択になってしまったが、各会派に直接、声を届けることができたのは、その議員のおかげだし、意味のあることだったと感じ、今でも感謝している。
自民党と共産党がわりと良好な関係を築けている議会や共産党がやたらと嫌われている議会、党の垣根を超えてインボイスの問題に向き合ってくれる自民党議員がいる議会、意見書を採択させたかったら、まずは多数派である自民に挨拶しとけとアドバイスを受けた議会、紹介議員をつけて下手に党派性を出すよりは陳情書のほうが採択されやすい議会など、自治体によって様相や勝手、事情はさまざまだ。
そのため、陳情書や請願書の提出を考えている方は、まずは話ができる議員を見つけて仲よくなり、その議会がどんな様子なのか、相談をしてみるのがいいと思っている。
意見書の採択がすぐにインボイス廃止へとつながることはないが、全国の自治体から反対の声をあげることは、その流れをつくる力になる。
地元の議員に「インボイス、困るんです」と伝えるだけでもいいし、先日、ぼくが公開した陳情書の雛形を議員に渡して、「世の中にはこういう陳情書があります!」と伝えるだけでもいいと思う。そして、余力がある方は陳情書や請願書を自治体に提出してみてください。どんなに小さな行動でも、一人一人のその行動が廃止に向けた力になると思っています。
最後に、共産党もれいわ新選組も社民党も真剣にインボイスの問題に取り組み、さまざまな場面で力を貸してくださっていること、そしてそれが大きな力のひとつになっていることは、ちゃんとお伝えしておきます。
国会議員の話ですが、共産党の元衆議院議員の宮本徹さんは、政治家の登壇をお断りしたイベントに一般参加者として足を運んでくださったことがあります。そんなふうにインボイスの反対運動に熱心にコミットしてくれる議員が多いのが共産党です。
同じく、れいわ新選組の地方議員もイベントに参加してくださることが多いです。それはとっても心強いと思っています。
引き続き、インボイス廃止に向けたうねりを、党派性を超えてつくっていけたらと思っています。
次回は自民党に関する話を書く予定です。