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「地域に溶け込む理学療法士・ほりじゅんさん」――医療の専門職が地域とつながるのはなぜ?

皆さんこんにちは!
あべのって学生です。

 今回は、阿倍野区のお隣、東住吉区を拠点に活動されている、「地域に溶け込む理学療法士・ほりじゅん」さんの活動をご紹介します!

 2024年4月7日、あべのキューズモールで「3世代で行ってQ! 大阪ヘルスLOVER」という大きな"体験型健康フェスタ"を開催されたほりじゅんさん。「理学療法士」という専門職として働くほりじゅんさんが、何を思い、なぜ地域で活動されているのか、詳しくお話を聞いてきました!


地域に溶け込む理学療法士

 ほりじゅんさんは、「ヴァンサンクポルテ」という通所型の介護施設で働いている理学療法士です。施設を訪れるお年寄りや、障がいを持つ方々のリハビリを支援しています。

 そんな理学療法士であるほりじゅんさんが、なぜ「地域に溶け込む理学療法士」と称し、地域での活動に取り組むようになったのかを見ていきましょう。

活動の始まり――東住吉区リハビリテーション連絡会

 ほりじゅんさんは、キャリアの始めから理学療法士として活動されていました。

 理学療法士が関わるリハビリには、患者さんの状況によっていくつかの形態があります。

・病院における、入院中のリハビリ
・施設における、通所(リハビリ施設に通う形)でのリハビリ
・訪問による、自宅でのリハビリ

 それぞれのリハビリは独立しているわけではなく、例えば「入院中にリハビリを行い、退院後は通所と自宅でもリハビリを行う」といった形で、患者さんの状況によっては、連続して行われることも多いそうです。

 しかし、病院、施設、訪問でリハビリをサポートする医療従事者はそれぞれが独立して活動していて、横のつながりが希薄である、という課題がありました。

「注意事項やその日の体調など、ちょっとしたことを情報共有できるだけでも、リハビリの進行がスムーズになるのではないか」

 そう考えたほりじゅんさんは、リハビリに関わる専門職同士が”電話一本で連絡できる関係性"を作るために動き出しました。

 初めは、身近な同僚を集めた食事の席としてカジュアルな交流会を開催していたそうですが、仮説通り、情報交換によるリハビリの質の向上を実感した堀江さんは、平成28年に東住吉区リハビリテーション連絡会(通称:リハ連)」を立ち上げました。


 リハ連の活動は今も続いていて、最近では、リハビリにメインで関わる「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士」のほか、介護プランを組み立てるケアマネージャーや、薬剤師、歯科衛生士、管理栄養士など、より広い分野の医療・介護・福祉のプレイヤーが集まる多職種交流会となっています。

 一括りに「医療・介護」の専門職といっても、資格や分野が異なる他の職種については実態を知らないことも多く、「理学療法士ってそういうことをやってたの?!」、「管理栄養士ってそこまで担当してるの?!」と、参加者それぞれがお互いの専門分野について学び合う場ができているそうです。


東住吉区理学療法士会

 ほりじゅんさんは他にも、東住吉区リハビリ連絡会の活動から派生し、平成31年に東住吉区理学療法士会も設立しました。


 こちらは、カジュアルな集いであるリハ連とは異なり、「大阪府理学療法士会」という、理学療法士のための会員組織の東住吉区支部、という位置づけです。

 大阪府理学療法士会から予算も下りるため、東住吉区理学療法士会では、理学療法士向けの研修会やイベントなど、より専門性を絞り込んだ活動が行われています。

 リハ連を含め、ほとんどの活動をボランティアとして賄っているほりじゅんさんですが、「東住吉区理学療法士会の活動に関してはある程度の活動予算が下りるので、活動の拡大が早かった」とも教えてくれました。
 現在、東住吉区理学療法士会には約130人の会員が所属していて、地域のリハビリを支えています。

 また、ほりじゅんさんは現在、大阪府理学療法士会の政策特別委員会としても活動されていて、専門職と社会をつなぐ活動を更に広く展開されています。

その他の地域活動

 ほりじゅんさんは以上の2つの他にも、

  • 「ノンテクニカルスキル(※)」のエバンジェリストとして活動している"ひがぽん"さんとの「ヒガホリプロジェクト」

  • 東住吉区の地域活動・市民活動交流・連絡会「じょいなす☆なっぴー」

 などでも活動されています。


 まずは、ヒガホリプロジェクトについてご紹介します。

 ヒガホリプロジェクトでは、東住吉区にある長居公園を会場として、"プレゼンテーションや地域に関心のある方"を対象に、"プレゼンテーションを通して熱い想いを共有し、学びを深め、人と人とのつながりをみんなで愉快に楽しむことを目的"としたプレゼン大会を開催するなど、お二人の得意をかけ合わせた地域活動を展開しています。

 ちなみに、お二人は「自称・東住吉区の広報大使」として、地域の様々な情報を積極的に発信されています。



 続いて「じょいなす☆なっぴー(通称:じょいなす)」について。
 じょいなす☆なっぴーは、「元気をつなぎ、ひろげ、ふかめ、東住吉をもっともっと「おもろいまち」」にするための市民コミュニティです。"東住吉を元気にしたいと思う人であれば、誰でも参加でき、集い、話しあう"ことができます。

 2012年、東住吉区に関わる行政職員さんの呼びかけで誕生し、コロナ禍を経て、現在は月に一度、毎月第一金曜日の20時から、オンラインミーティングとして開催されています。

 "今、自分が思う、まちの魅力・課題、将来の夢、取り組みたいこと、そのほか少しなら愚痴も・・・など、なんでも自由に“前向きに”発言し、参加者で話し合って”いきます。

 ほりじゅんさんは、リハ連での活動と並行して、専門職以外の地域の人とも繋がりたい、と、じょいなす☆なっぴーに参加しはじめ、今ではメインメンバーの一人になっています。

 最近のじょいなす☆なっぴーは、参加者それぞれの地域での活動事例の報告会としての色が強くなっているそうで、地域でなにかをやってみたい、つながりを作りたい、という人にとって、具体的なヒントを得られるつどいになっているのではないでしょうか。

 聞くだけの参加も大歓迎とのことなので、"じょいなす"が気になった方はぜひ、こちらのFacebookページもご覧ください。


広がる"地域×専門職"

 
 ここまで、ほりじゅんさんのお仕事から、地域活動を始めた理由、活動の変遷についてご紹介してきました。

 まずはご自身の利用者さん・患者さん、次に同じく医療・介護の専門職の皆さん、そしてより広く東住吉区に住む皆さんなど、少しずつ活動の範囲を広げてきたほりじゅんさん。

 ここからは、あべのって学生部がほりじゅんさんと出会ったきっかけでもあり、ほりじゅんさんの活動の一つの結晶ともいえるイベント、あべのキューズモールで開催された体験型健康フェスタ、「3世代で行ってQ! 大阪ヘルスLOVER」についてご紹介していきます。

3世代で行ってQ! 大阪ヘルスLOVER

 「3世代で行ってQ! 大阪ヘルスLOVER」は、医療・介護・福祉に関わる専門職や、専門知識を持って活動されている皆さんがそれぞれ、体験ブースやステージでの催しを展開する、健康をテーマにした"フェス"イベントです。

Let's 誤嚥
食べ物、飲み物を上手く飲み込めず、喉に詰まらせてしまったり、むせてしまったり、場合によっては命に関わることもある"誤嚥(ごえん)”。そんな誤嚥、誤嚥予防についての啓発と、状況によっては年を取ったり、病気で弱っていなくても、ものを上手く飲み込めなくなることを体験するワークを体験しました。
いやし庵
医師・歯科医師・薬剤師・鍼灸師など、地域で活動する医療従事者を中心に集まったグループ。ポップにお口の健康を啓発する「ハミガキ団」や、お灸体験、ハーブティーの試飲、健康相談など、それぞれの専門を生かした多様なブースでした。
「青空手話体験」
東住吉区で活動されている、手話教室の出張版でした。私も体験させてもらい、簡単な挨拶、自分の名前を手話で表現できるようになりました。(今は忘れてしまったので、復習しなければ……)
こちらはステージでのトークの様子。いやし庵を主催されている医師の方がお話されています。
東住吉区のマスコットキャラ「なっぴー」


 利用者さん・患者さん→医療・介護の同業者→東住吉区の皆さん、と活動範囲を広げてきたほりじゅんさん。このイベントでは更に、東住吉区のお隣である阿倍野区や、ターミナル駅である天王寺駅、その中心スポットであるあべのキューズモールに集うより多くの人々、また、普段関わることの少ない若い世代や小さなお子さんにもターゲットを広げることが狙いでした。

 そして、タイトル通り「3世代」がそれぞれに健康に関心を寄せるイベントとなり、現在、介護や支援が必要な人たちに対するケアの充実だけでなく、将来の介護を予防し、生活の質を保ち、向上していく取り組みへと広がっていきました。


 ちなみに、あべのキューズモールという大型ショッピング施設の一角を貸し切っての一大イベントでしたが、運営として参加された87名の皆さんは、ほりじゅんさんを含め全員がボランティアだったそうです。

 また、こちらの会場についても、あべのって学生部もお世話になっていて、地域に根付くショッピングモールを目指しているあべのキューズモールさんが提供してくれた、とのこと。

(あべのキューズモールと、学生部や地域との関わりについてはこちらの記事も覧ください)


活動にかかるコストのお話

 最後に、リハ連や東住吉区理学療法士会、ヒガホリプロジェクトにじょいなす☆なっぴー、3世代で行ってQ! 大阪ヘルスLOVERなど、とても精力的に活動に取り組まれているほりじゅんさんに、時間や金銭面など、活動にかかるコストについての考えもお聞きしました。

 ほりじゅんさんや、あべのって学生部などのような地域活動・社会活動・市民活動においては、活動にどこまで費用をかけるのか、ボランティアとして行うのか、補助金や予算などを受けて行うのか、企業などのステークホルダーと協働して行うのか、といった様々な選択肢があります。

 完全なるボランティア(ほとんどの場合はこちらだそうです)から、東住吉区理学療法士会のように補助金や予算をもらう形、「3世代で行ってQ! 大阪ヘルスLOVER」のように企業と協働する形など、様々なパターンを経験されているほりじゅんさんに、それぞれの印象について教えていただきました。

 例えば、東住吉区理学療法士会では予算がある分、活動の拡大がしやすかったり、3世代で行ってQ! 大阪ヘルスLOVERでは、大型商業施設という、医療や介護に関心が高くない人もたくさん通りかかる場でイベントを行うことで、社会に対する啓発効果が高まったりと、コストに対してそれなりの支援を受けられる活動のメリットについて、強く実感されているそうです。

 そのため、活動を拡大するためにもう少し協賛や協力者を募るといった展開は、これから突き詰めていきたいとのことでした。

 続いて、ともすれば昨今話題の"やりがい搾取"にも繋がりかねない「ボランティア」での活動についても、ほりじゅんさんの意見をお聞きしました。

「なにかをやろうと思ったときに、お金やいろいろな人の協力が大切なのは間違いないですし、そちらもきちんとやっていくべきだと思います」

「ただ、僕は基本的にはボランティアでいいと思っていますし、それがお金や時間の無駄とは感じないですね。だって、ボランティアで出会う人たちって良い人しかいないんですもん。そういった活動やご縁でまちや身近な暮らしが良くなれば、回り回って自分にも還ってくるじゃないですか」

 ちなみに、3世代で行ってQ! 大阪ヘルスLOVERについて、出展者や出演者、キューズモールの担当者の方などは全て、地域活動やボランティアなどのご縁でつながったものだそうです。


広がる活動

 目の前の患者さんから、身の回りの同業者、地域の人々、より広い世代の人々へと、どんどんと活動範囲を広げ、様々な人の健康について啓発を行っているほりじゅんさん。

 活動の勢いは止まらず、2024年7月14日には、東住吉区で「3世代で行ってQ!」の第二弾も開催されました。


 今回は、地域に溶け込む理学療法士・ほりじゅんさんの活動についてご紹介しました。

 ほりじゅんさんのご活動は本当に幅広く、今回の記事では紹介し切れなかったものもたくさんあります。ご本人や活動が気になった方はぜひ、じょいなす☆なっぴーのミーティングに参加する、イベントに参加するなどして、ほりじゅんさんとお話してみてください! とても気さくに色々なことを教えてくださいます。

 こちらのstand.fmでも、もう少し詳しい活動のお話を聞くことができます。

 そんなほりじゅんさんの活動を通じて、身の回りから地域、社会、世の中をよくしていくヒントを感じていただければ嬉しく思います。



 最後まで読んでくれてありがとうございました!

 これからもこのnoteでは、あべのって学生部の活動や、その一環として、あべの/昭和町のまちにまつわる面白いひと・もの・ことを記録、紹介していきます。

 また、「あべのって学生部」は、あべの・昭和町のまちを楽しんで活動したり、一緒に取材に行ってnoteの記事を書いてくれる仲間を募集中です。少しでも気になる、という方はぜひ、あべのって学生部のInstagramなどに気軽にご連絡くださいね。

筆者:増田ひろ

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