インパクト投資とテクノロジー
インパクト投資は未来の自分ごとだ
2024年8月19日、「持続可能な未来を築くインパクト投資」をテーマにセミナーを開催します。このテーマの企画に至るまで数年間かかり、それまで何度か壁にぶつかりました。
私が初めてインパクト投資を知ったのは、2016年11月17日でした。小林立明さんが主催するソーシャル・ファイナンス研究会の特別企画に参加し、当時「ファイナンスの哲学」という著書を書かれた堀内勉さんが登壇されると聞き、ぜひお話を伺いたいと思ったのがきっかけです。そのイベントで各団体によるLTが行われ、インパクト投資の取り組みが紹介されました。実は、今回のセミナーに登壇いただく五十嵐剛志さんもその時にプレゼンテーションをされた方で、その後もずっとこの活動を続けていらしたので、今回ぜひオファーさせていただきました。このセミナーでは、新しい方々との出会いがあり、それが私にとって非常に刺激的な体験となりました。
また、SDGsを初めて知ったのは、2017年6月29日でした。この日、今回のセミナーにもご登壇いただく熊沢拓さんたちが主催したワークショップに参加し、それまでMDGs(ミレニアム開発目標)しか知らなかった私が初めてSDGs(持続可能な開発目標)について学びました。この経験は、慈善活動が「自分ごと」へと変わる大きな転機となりました。
その当時、私は「BIG PIVOT」という本を読んでいました。この本を通じて、大企業が社会課題の解決に向けてピボットし、社会の一部として持続的に活動することを目指していることを知り、コカコーラがコーラを売ることや、ミシュランがタイヤを売ることが彼らの真の目的ではないという考えに衝撃を受けました。この感銘を受け、私はAmazonレビューまで投稿を投稿したほどです。そして、MDGsからSDGsへの移行が、自分自身や子供たちの未来のために何をすべきかを明確に示していると感じ、それ以来、私の中で ソーシャルインパクトは優先事項となっていきました。
2017〜19年当時はまだ注目されなかったテーマ
これらの経験を通じて、私にとってインパクト投資やソーシャルインパクトボンドは非常に重要なテーマとなりました。しかし、当時勤めていた金融機関の上司に、フィンテックやオープンイノベーションの一環としてこれらの取り組みを提案したところ、「マネタイズにはつながりにくい」という理由で受け入れてもらえませんでした(提案内容が未熟だった可能性もあります)。
また、2019年に執筆した『フィンテック養成読本』でも、ソーシャルインパクトボンドに関するコラムを掲載したいと考えていましたが、当時はフィンテックが金融とテクノロジーをテーマにしている中で、ソーシャルインパクトボンドはテクノロジーとの関連性が薄いと見なされ、掲載が見送られました。その後、ビジネスインサイダージャパンで毎月ファイナンスの記事を寄稿している村上 茂久さんが主催するFED (Financial Education & Design)にて、この書籍の出版イベントを企画いただき、登壇する機会を得ました。その際、没になった企画の一覧を紹介しましたが、ソーシャルインパクトボンド以外にも、Web3、ESG投資、金融包括、金融教育、ゲーミフィケーション、トークンエコノミー、アルゴリズムトレーニングなどのトピックが含まれていました。これらのテーマは対象読者には受け入れにくいと判断され、最終的に掲載が見送られたのです。
インパクト投資の特徴を理解する
このような背景を経て、主催するFinGATEに相談し、ようやくこのテーマでセミナーを開催できることになりました。FinGATE Campusセミナーは、金融やフィンテック分野で話題性のある最先端のトピックを多く特集していますが、インパクト投資は実はかなり昔から存在しています。それでも、最近このテーマを扱った企画やカンファレンスが活発に行われていることから、今回のセミナーも実現できたのではないかと考えています。実際、9月上旬、9月末にはインパクトスタートアップなどのカンファレンスやセミナーが予定されており、それに先駆けて今回概要を学ぶセミナーを開催できるのは、とても幸運だと感じています。
このセミナーの目的は、金融やフィンテックに関心のある方々に、インパクト投資の重要性を認識していただくことです。この分野では、社会課題の解決が求められるため、スタートアップ単独では対応しきれない課題も多く、行政や自治体、大企業との連携が不可欠です。また、こうしたスキームでの投資について、まだイメージが湧かない組織や投資家も少なくないでしょう。特にテクノロジーの分野では、データを活用した評価などが進展しており、最新の動向を積極的にキャッチアップしていただきたいと考えています。スタートアップ、VC、エンジェル投資家、行政、大企業など、関係する全ての方々にご参加いただき、セミナー後のネットワーキングを通じて、互いに繋がりを深めていただければ幸いです。
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