データサイエンス組織のマネージャーを終えたので、これまでを振り返り、キャリアについて考える話
皆さん、こんにちは!ABEJAでデータサイエンティストをしている服部といいます。先月末で2年半務めたデータサイエンス組織のマネージャーからプレイヤーに戻ることになりました。そんなこれまでの振り返りとそこで感じたことを共有するために、記事にしてみました。キャリアを考える参考になれば嬉しいなと思います。
これまで
2021年12月から2年半、データサイエンティストが所属しているデータサイエンスグループという組織のマネージャーをしていました。元々プレイヤー志向が強かったのですが、マネージャーの打診があったときに一度経験してみてもいいかも?組織的にそれがベストなら?という思いで、マネージャーに就任しました。
データサイエンスグループでは、お客さんとなるクライアント企業の課題解決のために機械学習モデルなどのデータサイエンス技術を活用・社会実装していくことをメインに仕事をしています。他にはLLM開発を行ったり、知見が共有できるような仕組みづくりなども行っています。
マネージャーとしての仕事は、プロジェクトへのアサイン・サポート、1on1での相談・壁打ち、組織改善、業務フロー改善・仕組み化、採用、目標設計・評価1on1等がありますが、組織・会社のアウトプットを最大化させるためであれば何でもやってきました。
私がマネージャーになる前は組織としてもチームリーダーまでしかおらず、データサイエンス組織としては最初のマネージャーでした。また私自身もキャリアの中で始めてのマネジメント経験でした。
会社・組織的にも拡大期で、この2年半でグループの人数が2倍以上になりました。また昨年には会社として上場したタイミングであり、上場前後の成長フェーズという貴重な期間にマネージャーを務める事ができたとも言えます。そして、この6月にマネージャーからプレイヤーに戻り、別メンバーにバトンタッチしました。
なぜプレイヤーに戻ったのか
一言でいうと「データサイエンティストとしてのスペシャリストの道を探求したい」という気持ちからです。マネジメントも一度経験してみたいということでマネージャーをしていたのですが、改めてスペシャリスト・プレーヤーとして頑張りたいという気持ちが強くなっての判断でした。
なぜその気持が強くなったのかといいますと、マネージャーが嫌というより、スペシャリストのキャリアでの「楽しさと成長」が理由です。
私は、純粋にデータと触れている時間、仮説立てて試行錯誤する時間、コードを書く時間、そしてそれが誰かの役に立つということが好きです。ある意味これが仕事になるという時点で天職だと感じることもあります。楽しいと思える仕事でなければもう少しマネージャー寄りの考えになってたと思いますが、天職があるのであれば、それをもっとやりたくはなるというシンプルな理由が一つ目です。
もう一つが成長の面で「好きこそものの上手なれ」という言葉のとおりです。私自身の性格的に好きなことはとことん没頭してやるけど、そうでないことは手が進まないことがあります(もちろん仕事はちゃんとしますw)。
例えば、会社でも優秀なマネージャー・経営陣の方は、プライベートな時間でマネジメントやビジネス関連の本をめちゃ読んでます。それに対して、私は最初の頃は何冊かは読んだもののどうも今となっては自分の時間をそこにあまり使えなくなっていきました。ただ、その時間を技術書や最新手法のキャッチアップ、Kaggleなどのコンペ、コードを書くことに使うのは進んでやりますし、楽しい時間だと感じます。
読書自体は一例ですが、この気持ちと自然とコミットできるかの差は大きいと思っています。今私が楽しめる・やりたいと思うことに時間を使うのが単純に楽しいし成長できるという意味で一石二鳥だと思っています。
もちろん長期的なキャリアとして何を伸ばすべきか?バランスは?という観点はありますが、今楽しいと思える・熱中できることをやることによる成長の絶対値の大きさは大事だと思っています。
若者に委ねるべきなのか?
先ほど天職と言いましたが、データサイエンティストという世界はどんどん強い若者が出てきて、「手を動かすのは若者に任せて自身はマネジメントに….」みたいな話をよく聞きます。
これはすごくわかりみが深い話で、ABEJAの若手も非常に優秀ですし世の中的にもこれからもどんどん強くなっていくでしょう。そんな中、あえてマネジメントから離れてもいいのか?みたいな心の声も少し聞こえました。ただ楽しいと感じるなら限界までやってみて、ニッチもサッチもいかなくなったら改めて考えたらいいかなと思っています。というか生存戦略よりも自身の直感的な気持ちを優先させたいということです。
振り返り1: 大変だった?
大変でした(笑)。
「マネージャー楽だよ!」とは正直言えません。ただこれは性格・志向性的なところも大きいのかなと思っています。
例えば、自責と他責みたいな話があります。マネージャーをしていると降り注ぐトラブル・課題の量は多いです。自分事として許容範囲の自責は大事ではあるのですが、許容を越える自責は重いダメージになります。私は割と自責思考が強いのもあり、ここは結構大変に感じました。一方で多くの優秀なマネージャー・経営者なども何度もハードな場面を受け入れて乗り越えてきていますし、成長するためには大事な要素でもあるとは思っていますし、成長し強くなったとも思います。
他にも、争いを避ける傾向にある私にとっては、どうしても立場上強めにフィードバックすべき場面はハードだったりしました。
あとは、自身のやりたいこととやるべきことのギャップです。
マネージャーとして発展途上であり自身の仕事として今すべきこと・学ぶべきことはマネジメント面のことがどうしても多くなります。一方で自身のやりたいことは別にあり、やりたいこととやるべきことのギャップはどうしても大きくなりました。直接の業務のしんどさではないですが、このギャップを抱えることは大変ではありました。
他には評価、会議時間、立場間の板挟みなど、よく聞くつらみポイントもありました。が、あるあるな話でここに書き連ねても仕方ないのでこれくらいにしておきます!笑
振り返り2: よかったこと・楽しかったこと
当然やってよかったことも沢山あります。
メンバーが結果を出す・称賛される嬉しさ
自分で手を動かして、結果を出して称賛されるというのも嬉しいのですが、自組織のメンバーが結果を出したり称賛されるのは、全く違うタイプの嬉しさがあります。
自分が関与してるかどうかにかかわらず嬉しいです!
優秀な経営陣・マネージャーの方々と仕事できる
これは改めて今の会社でマネージャーを経験できてよかったと思えることの一つです。
一緒に仕事して分かるのですが、経営陣や他のマネージャーの方々すごいなと思うことが多々ありました。もちろん現場にも優秀な方々はたくさんいるのですが、自身とは全く異なるバックグラウンド・ベクトルで優秀な方々が多く、刺激になりましたし、多くのことを学ぶことが出来ました。
経営・マネジメントの視点で物事を考えられるようになる
これがめちゃくちゃでかいです。
もちろん私自身マネージャーとしてはまだまだ未熟ではあったので、経営視点が分かります!と言うつもりはないですが、マネージャーやる前とは大きく変わったと思います。
特にベンチャーでは、現場に近いマネージャーでも、経営陣との距離が近く、議論したり考え方が学べる機会は多いため、単純なマネージャー視点だけでなく経営陣がどういうことを考えているのかも一部知ることができると思っています。
そして、この学びはプレイヤー・スペシャリストの道を進むとしてもとても大きいと思っています。
プレイヤーであれ、マネジメントであれ、最終的には会社にどれだけ価値貢献できたかが大事な指標です。その指標を最大化させようとしたら、会社・経営にとって嬉しいことは何か?を知っているほうが当然やりやすいです。
そして、マネージャーをすることでそれを学ぶことが出来ました。
振り返り3: 意識してよかったこと
この施策をしてよかった/仕組みを作ってよかったと具体というより、気持ちの面で意識したことが一つあります。
それは、「いい人であり続け、真摯に人に向き合うこと」です。
私は、コミュニケーションが得意なわけでもないですし、人との深い関係性を構築するのも得意ではないです。ただ、自分が悪にならず良心を持ってちゃんと人と向き合っていれば、結果として、良い方向に行くのではないかと思っています。例えば、何かの意思決定で誤ってしまったとしても、ここのポリシーがぶれてなければ、そんなに悪いことにはならないだろうといった感じです。
結果的にそれにより、どう変わったのか?は分からないですが、それでよくなったことはあると思うし、失敗はあれどマネージャーをやっていた期間に誇りはもててると思います。真摯に向き合うことでしんどい場面もありましたが、振り返ってみてもここは良かったなと思います。
気づき: マネージャーは価値が出やすいようになっている
「マネージャーにならないと給料があがらない」「マネージャーになるほうが年収が上がる」みたいな話はよく聞きます。
マネージャーを経て思ったのが、「マネージャーのほうが価値が出やすい・大きくしやすい」そして「そりゃ世間一般マネージャーのほうが給料あがりやすいわ」ということです。
これは組織の構造上、干渉範囲が広く、プレイヤーよりもレバレッジが効きやすいことが多いからだと思っています。厳密ではないですが、足し算要素より掛け算要素が大きくなっているイメージです。(逆に言えばマネージャー次第で、トータルとしてマイナスにもなりやすいとも言えます。)
そして感じたのは、「スペシャリストとしてマネージャー以上に価値出すって結構難しいな」ということです。
マネージャーになる前は、専門性を極めていけばマネージャーより希少性高いし、スペシャリストだって全然マネージャーより価値出せるでしょくらいに思っていました。もちろん職種や事業によってはスペシャリストの腕次第で、売上が何倍も変わるようなものもあるかもしれませんが、多くの場合組織構造的にも影響範囲が狭くなりがちかなと思います。
これはある意味当然で、特定の専門家で売上が大きく変わるというのは、その腕に依存しすぎている会社ということになるので、不安定になりがちだと思います。それよりは依存度合いを抑えながら、汎用的なマネジメント側の依存度合いを上げるほうが、安定すると思います。
じゃあスペシャリストがマネージャーより価値が出せないか、給料が低くならざるを得ないかでいうと当然そんなことはないと思います。
何をすると短期的・中長期的に会社にどう影響があるかを考えて行動したり、どうやればレバレッジが効くかを考えながら動いたり、そこと紐づく専門性・優位性が何かを考えて磨き続けたりすれば、より大きな価値を出せると思います。ただ仕組み的に、割合的にはマネージャーのほうが価値が出やすくなりがちなだけかなとも思います。
そして私はこのスペシャリストで価値出す側の道をチャレンジしたいと思っています。
マネージャーとスペシャリストのキャリアについて
「マネジメント路線か?スペシャリスト路線か?」といった問いはよく聞くと思います。
今回のマネージャー経験を経て私が改めて思ったのは、「別にどちらか決める必要はなく、両方を行ったり来たりしていい」ってことです。
もちろん片方だけやることでどちらかを極めるという選択もあるとは思いますが、スペシャリストとしての経験はマネジメント・経営にも活きるし、マネジメントの経験はスペシャリストにも活きます。チームの半分がマネジメント経験を持っている組織とか絶対強いと思います。
2本の枝分かれではなく、常に連絡通路がある2つの道のようなイメージでしょうか。
そういうキャリアがこれからどんどん増えていい気がしていますし、ABEJAでも増えるといいなと思っています。
私も今回マネージャーからプレイヤーに戻りスペシャリストの道を選びましたが、また将来マネジメントの道を選ぶこともあるかもしれません。どちらにせよ、やってきたことは活きてくると思っています。
スペシャリストを目指す人こそマネージャーを経験してみてもいいかも?
マネージャーを離れた人間が言っても説得力は薄いですが、私はオススメします。
これまでに記載した通り、スペシャリストとして価値を出すうえでのヒントがマネージャーをやることで沢山得られます。その間、技術的なアップデート量が減ったり、腕が鈍ったりとかはあるかもしれませんが、長いキャリアの中で2, 3年でもそういった経験を積んでみてもいいのではないかと思います。
もちろん向き不向きはあります。求められるスキル自体は変わりますし、明らかにスペシャリストのほうが向いている人が無理にやる必要はないと思います。
どちらかというと、マネジメントのほうが向いてるけどスペシャリストを目指したい人や、どっちでもやっていけそうな人、不安要素はありつつもマネジメントもなんとか出来そうな人くらいが対象かとは思います。
そういった方々で、迷っていたり、機会があってどうしようとなっている人は一度試してみてもいいのではないかと思います。
今後について
冒頭にも書いた通り、「データサイエンティストとしてのスペシャリストの道を探求したい」と思っており、それに向けて頑張りたいと思います。
データサイエンティストとしても、ハードスキル的に自身の足りていないところは自覚していますし、ソフトスキル面ではマネージャーの経験を通して自身の強みや弱み、成長余地がある点にも気付けました。伸びしろしかありません!
そしてただ頑張るだけでなく、スペシャリストとしてのキャリアの道をABEJAの中で整えていくことにも繋げたいと思っています。
幸い、私のWillを汲み取ってくれた部長・経営陣の方々や、マネージャーを引き受けてくださった方、人事など別の立場で応援してくださった方など多くの方のサポートしてくれたおかげで、今こうした機会を得ています。
今でもそういったキャリア選択ができる会社ですし、その道がより広がるような会社にしていけたらと思っています。
最後に
色々と書きましたがこの2年半マネージャーとして色々ありましたが、マネージャーになったことへの後悔はなく、むしろやってよかったと思っています。そしてそう思える環境を用意してくれた、会社の皆さんには感謝しかありません。ABEJAは、一緒にゆたかな世界を実装していく仲間となってくれる方をお待ちしています。ABEJAに興味を持たれた方がいましたら、下記リンクよりお願いします。(まずはカジュアル面談からという方いましたら職歴備考欄にカジュアル面談希望と記載ください)
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