見出し画像

01(zeroONE) 2024 4セッションの観覧メモ

primeNumber社主催のデータの祭典「zeroONE 2024」に行ってきた。12:00から計4セッションを観たので、それぞれのセッションについて印象的だったポイントを3つずつまとめる。Xのハッシュタグ「#01pN」もご参考ください。


※聞き違いなどの可能性は大いにございますので、ご留意ください。
※本記事はTROCCO® Advent Calendar 2024に捧げます


AIドリブンカンパニー化に向けた組織の成長とデータ基盤の進化

エン・ジャパンさんが、

「AI活用したい。なんとかして」
「わかりました(できる人いないっすよ)」

に、どう対応しているかの話。これはいま、たくさんのデータ活用組織が直面している状況だろう。組織形成の事例として興味深かった。印象的だったポイントを3つ挙げます。

1. データ活用部署はAIと親和性が高い

何を今更と思うかもしれない。だが、データ活用組織にとって生成AIとは「日々の業務に加えて、無理難題を言われやすいバズワード」になっている向きがある。僕も巡り合わせによっては、生成AIという言葉にアレルギー反応を示すようになっていたかもしれない。

そこをエン・ジャパンさんは、「データアナリスト組織は、生成AIへの、CAN(データを扱うナレッジ)とWILL(AIを学び活用したい志向)が高いはず」という考えのもと、果敢に立ち向かっていた。このマインドは、データ活用組織にとって重要だと思う。

「AIドリブンカンパニー = AIを中核に据えて事業活動を行う企業」を掲げて、経団連のAI活用レベル4-5を目指しているそうだ。そういう旗印を立てるのもいいなと思った。

2. 生成AIの波は、データ活用組織を母体とした、横断組織創設と予算獲得のチャンス

エン・ジャパンさんは今年の7月にAIテクノロジー室を発足した。既存のアナリティクス組織が、散在していたAIシステム(職務要約の自動生成システムなど)を統合できる箱にもなったそうだ。

今後どの会社でも、あちこちの部署で運用されるようになったAIシステムを横断的に扱うべきかどうか、扱うならばどういう箱が適切か、を検討するタイミングが来るだろう。

そのときデータ活用組織がミッションを拡大して、予算を獲得して、人員を増やすことができたならば。AI周りのみならず、データ基盤自体も進化させて、データのポテンシャルを発揮させられるチャンスになるだろう。

3.データエンジニアの採用難易度は高い

データエンジニアの採用は時間がかかるし、難易度が高いという話があった。人材サービスを展開しているエン・ジャパンさんがそう言うのだから、やはり難しいのだろう。データエンジニアがたくさん増えて活躍できる世界になりますように。

余談だが、紹介されていたエン・ジャパンさんの、ソーシャルインパクト採用プロジェクトが面白そうだった。


聴取者データ分析が変えるコンテンツ戦略の未来

僕は前職AbemaTVなので、TBSラジオさんのこのセッションは聞かずにはおれなかった。ちなみに妻が『安住紳一郎の日曜天国』を聴いています。

このセッションでは、

「なぜデータを活用することになったのか?」 
「そういう部署ができたから」

という、逆境からデータ活用を始めたTBSラジオさんが、たくさんのエピソードを話してくれた。印象的だったポイントを3つ挙げます。

1. 新規ユーザーもセグメントして解像度を高める

つい新規or既存という軸でユーザーをセグメントしがちだが、TBSラジオさんは新規ユーザーに関して、

  • radikoの新規ユーザー

  • TBSラジオの新規ユーザー(radikoは既存)

  • 番組の新規ユーザー(radikoは既存、TBSも既存)

の3つでセグメントするに至ったと話していた。番組の新規ユーザーを増やそういう時に、このどれを増やすかでアプローチが変わってくるためだ。言われてみれば当然のように感じるが、「新規」に関して解像度を高められていないケースは自分も多いと反省した。

2. 同じコンテンツでもメディアによってグロース戦略が異なる

TBSラジオさんは同じラジオ番組を3つの経路で配信している。radiko、TBS Podcast、YouTubeである。この3つでグロースに効く方法が異なるとのことだった。YouTubeは聴取者の理解というより、プラットフォームの理解と応用が肝というのが面白かった。一方、自社メディアはランキングなどを活用しやすくてグローススキームを定められる、というのも学びになった。

3. 会社にデータ分析の成果を伝えるのは大変

データ活用の宿命だが、我々は価値証明のハードルを超えなければならない。

TBSラジオさんも、プロデューサーから用語(MAUなど)が出てくるまでに2〜3年かかったとのことだった。「くじけず、言い続けること」「成功事例で、ほらねということ」、この2つで乗り超えたというが、特に「数字が伸びてくると、心が健康になってくる」という言葉が印象的だった。

これは一回追い詰められないと言えない言葉だと思う。そこまでコミットしてデータ活用を軌道に乗せたTBSラジオさんに拍手を送りたい。


いま、データに必要な解像度

僕は樫田光さんファンである。樫田さんがいたことで、アナリティクス業界全体に共通言語が生まれて、論理的思考力が底上げされたと思っている。樫田さんがいる世界線でよかった。

今回のセッションも、樫田ファンにはたまらなかった。現在の樫田さんならではの鋭いお話がたくさんあった。これはもうスライドの

とレポートの、

をご覧頂くのが早いと思う。思うのだが、僕なりに印象的だったポイントを3つ挙げます。

1. データは意思決定と実行の間にある

この言葉で最近、「AIの真価はワークフローにある」と聞いたのを思い出した。データ然り、AI然り、空気のように目立たず行動に介入するのが、事業の本質にコミットする王道の1つだと僕も思う。

意思決定と実行の熱伝導は100%ではない。その伝導率をデータは向上させられる、というのも示唆に富んでいた。

2. データは主観×客観の重ね合わせ

これは本当にそうだと思う。僕も「データは1つの表現方法に過ぎない」と考えている。取得段階から主観が混じるのがデータだ。

データ分析のプロセスも、本当は細かい意思決定の連続だ。だから、
・データ分析に介在する意思に敏感であること
・意思を持ちながら継続的にデータに向き合えること
が、分析家にとって必要な資質だと僕は思っている。

僕は採用要件として「データが好き」を挙げることが多いけど、それを紐解くと、この「データは主観×客観の重ね合わせ」に行き着くだろう。

3. データを使うとは、情報量をデータ消費者の言語体系に調整すること

「消費者にとって最適な情報量」という概念の導入が見事すぎた。

現場で「どういう形にすれば、データを使えるか?」というすり合わせをすることは多い。結果として、ローデータをそのまま提供したり、集計結果になったり、推定結果になったりするが、それを包括する概念として、「消費者にとって最適な情報量」と言い得たのに痺れた。

今度から「いま最適な情報量は?」と自分に問いかけたいと思う。


TROCCO®ユーザーに聞く!データ基盤を構築する上でのTROCCO®活用方法

このセッションは見た、というかスピーカーの1人としてお話しさせて頂いた。僕なりに繰り返しお伝えしたいポイントを3つ挙げます。

1. FTPに敬意を払おう

村上春樹の『ノルウェイの森』にこんなシーンがある。

永沢さんは、死後三十年を経ていない作家の本は原則として手に取ろうとしなかった。そういう本しか俺は信用しない、と彼は言った。
「現代文学を信用しないというわけじゃない。ただ俺は時の洗礼を受けていないものを読んで貴重な時間を無駄にしたくないんだ。人生は短い」

システムも然りだ。時の洗礼を受け、信頼と実績を積み重ねたシステムを採用することで、調整コストが段違いに少なくて済むようなケースがある。

だから僕は時の洗礼を受けてきたシステムを尊敬する。そういうシステムと連携できるTROCCO®はいいなと思う。

2. TROCCO®頑丈だぜ

TROCCO®のサポート対応の速さや、改善の実装速度に話が及んだときに、僕は「プラットフォーム自体の頑丈さ」がその裏にはあるのではと指摘した。

データの仕事もそうだが、頻発する問い合わせに対応しなければならない事態に陥ると、問い合わせへの対応速度は鈍る。ましてや新規開発向けにリソースを割くことなどできなくなる。

僕は以前、いちユーザーとしての使用感から「TROCCO®頑丈だぜ」と言っていた時期がある。だがそれは、TROCCO®の運用・開発のスピード感にも好影響をもたらしているのではないかと今回考えた。

3. TROCCO®はアナリストの能力を解放する

大袈裟に言うと、TROCCO®で僕は人生が変わった。と思う。

対応領域が増えて、データ活用のモックや導入を1人で実行できるようになった。それによって、よりスムーズにキャリアを歩めるようになった。

別のETLツールでもそれは不可能ではなかっただろう。だけどデータ専門じゃない人たちも含めて、みんなで触れるツールとしてはTROCCO®がベストだったと思う。僕個人だけではなく、会社としても、ちょっといい未来を実現できた。

っていうような話はこれまで何度かしているけど、今回パネルディスカッションで各社さんの話を聞いて、その思いを新たにした。このセッションを一単語でまとめるなら「UNLOCK」だったんじゃないかと思う。従来だったら、コストに見合わず見送りになる部分を、TROCCO®で乗り越えた、というのが各社の共通項だったのではないか。

改めてTROCCO®に感謝申し上げます。一緒にパネルディスカッションでお話してくださった、堀川さん、梶谷さん、池本さん、ありがとうございました!


最後になりますが、大規模オフラインイベントが少ないデータ界隈において、盛大な集まりを開催してくださったprimeNumberの皆さま、誠にありがとうございました!!たくさんの仲間に出会えたような気持ちになれた一日でした。

いいなと思ったら応援しよう!

阿部 昌利
サポートされた者たちから受け継いだものはさらに『先』に進めなくてはならない!!