12 震災のこと⑧ 父からの電話
しばらくして父から電話があった。
「掲示板にお父さんの事書いただろ」
震災時私は東京にいて、3日間家族と連絡がつかなかった。
石巻の友人達が友人たちや家族の安否を掲示板に載せてくれていて
家族と連絡が取れない話をしたら、【探してます】の場所に書いてくれた。
家族の特徴を聞かれ
父:身長172㎝、赤ら顔、小太り、眼鏡
と伝えた。
その後、見つかったと友人に報告し、安否が確認された事を掲示板にも書いてくれた。
横浜の父の兄弟から連絡が来たらしく、その掲示板を見て安心したと言っていたらしい。
「スマート、イケメンとなぜ書かなかったのか」との父からの連絡だった。
もしそう書いていたら、本人とは違うからみんな安心しなかったと思うと伝えたけれど父は不服そうだった。
その後も父から電話がきた。
「お母さんの誕生日だから¥29800の靴を買うのに2時間並んでいる」
と言っていたけれど本当は¥2980の靴だったり、、、
「避難所で仕事しているお母さんのために毎日自転車でおにぎりを届けている」と母への愛を伝える父の電話は、少しづつ生活を立て直せているように聞こえて嬉しかった。
父は昔公務員で子供たちの為に一生懸命寝ずに働いていた。
そんな働き方だったからか重い病に倒れ、しばらくして、ガソリンスタンドでバイトをしていた。バイトをすることにためらいもあったと思うけれど、そこで知り合った人とものすごく気が合って楽しく働いていた。
家族の為に働いてくれた父にとても感謝している。
父が慕っていたアルバイト仲間が震災で流されて亡くなった事は、父が亡くなった後に知った。
家が流された人や家族が亡くなった人。
色んな人がいたあの時は、それ以外のみんなもそれぞれに悲しい思いを持っていた。自分より悲しんでいる人がいる。その家族を思って何も言わなかった父がやっぱり私は大好きだ。
私は、父が大好きだった石巻のために何かできたらいいなとキッチンカーを始める事にした。
私の石巻1人電通。
人生の旅の始まりだ。
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