元ラジオ番組プロデューサーが企画運営する「社内ラジオ」のTipsを共有します
こんにちは。ファンと共に時代を進める、Web3スタートアップのGaudiyでHR/PRを担当している安部です。
今年で29歳になるわけですが、新卒からずっとHRだったので、身近な方には人事の人という印象があるかもしれません。
しかし、実はキャリアのスタートはラジオ局のプロデューサーでした。前職も人材系のスタートアップに所属していたこともあり、おそらくこのバックグラウンドを知っている方は少ないと思います(ラジオ局では自分の希望で人事と兼任してプロデューサーを担当しており、エンタメ領域で仕事をするとき以外は「新卒からずっと人事です」と答えていたのでなおさらかもしれません)
インターン時代も含めると約5年は局に勤めていたので、複数の番組制作に関わらせていただき、企画から編成・進行台本の作成や当日の進行まで一連の流れを経験させてもらいました。
2022年に入ってGaudiyに転職をしてからは、エンタメ領域に再び戻ってきたということで、わりとこのバックグラウンドが活かせる場面が多くなってきたと感じています。
さて、本題に入りますが、今さらになってラジオ番組プロデューサーだった経験をHRで活かせるのでは?と思い始め、Gaudiyに入社したタイミングで早々に「Gau-radio(ガウラジオ)」という社内ラジオを開始しました。
今回はGau-radioを始めて3ヶ月が経ったタイミングでの効果や課題/反省、プロデューサー出身ならではの番組制作方法やTips等を、自分の振り返りがてら共有できればと思います。
社内/社外向けラジオは、スタートアップ中心に組織施策として用いている企業は増えていると思いますし、今検討されている企業の方はぜひ参考にしていただけるのではないかと思っています。
そもそもなぜ社内radioをはじめたのか
前置きとして、始めた経緯にかるく触れておきます。
漠然と「radio局出身のHRってあまり見ないし、経験を活かして面白いことができるかも」と思っていたのが本当に正直な気持ちな訳ですが、本格的に始めた目的は大きく3つ。
組織拡大する中で、自分たちのカルチャーを薄めないため
メンバー個人間の線が細くなり、衝突に脆い組織になることを防ぐため
自分以外のメンバーの努力や良い部分にしっかりと目を向けるスタンスを醸成するため
この3つの懸念や課題を抱えている企業は僕ら以外にもいらっしゃると思います。解決するための手段はいくつかあると思いますが、自分の経験を活かしてすぐに始められる1つの解決策として「社内radioだ!」と思ったという流れです。
Gaudiyのas isとto be
今回の趣旨とは少し逸れるため、Gaudiyの説明はなるべく簡潔に話しますが、弊社は今、組織拡大の真っ只中です。僕が入社をしたときは20数名でしたが、現時点で内定承諾者を合わせると40名強。
よく語られているような50名の壁・100名の壁がすぐそこに迫っており、今まで大切にしていた強烈な濃いカルチャーが組織の拡大に伴って希薄化してしまったり、人数が増えることにより一体感が薄まってしまうことを避けるために、解決策を模索している時期でもあります。
これから、魅力的なスキルや素晴らしい実績を持ったメンバーを増やして、事業成長のスピードを加速させていきます。ただ、多様性のある組織になったとしても我々の大切にしているcultureは壊したくないですし、常にメンバーの成長や目立たないナイスプレーに目を向けられるような仕組みを整えていくことが、自分の役割だと考えています。
社内ラジオを制作するプロセス
前置きが長くなりましたが、どのようにGau-radioを作っているのかを説明します。今回は極力イメージがつきやすいように、制作までに必要なプロセスを、3つの大カテゴリーと8つの小カテゴリーに分けました。
前提情報
まずはスピーディーに始めたかったこともあり、ツールはすぐに開始できるstand.fmを用いました
当日の収録は60分程度
放送の時間は1回につき20~30分程度
準備編
①企画______
社内ラジオの目的を包含しつつ、今このタイミングで社内全体に聴いてほしいこと(顕在化しているissue/潜在的なissue)を洗い出す
issueを踏まえたうえで、この放送回を通して伝えたいことを決定する
トークテーマを模索し、なるべく全員がわかりやすいトークテーマに設定する
顕在化しているissueをトークテーマに選ぶ場合は、強めの企画。潜在的issueをトークテーマに選ぶ場合は、ユニークなトークテーマを通してじわじわと浸透させていきます。
②ゲストメンバーの決定______
「誰が」「なぜこのタイミングで」ラジオに出演するのがいいのかを棚卸する
数人の候補まで絞れたら、該当者のscheduleを確認する
収録予定週と、放送予定日あたりの組織のコンディションや状態を踏まえて「この人が」「このタイミングで」「この言葉を話すと社内にきっかけを提供しやすい」のかを検討し、決定する
3.に関して、再現性のない話で恐縮ですが「メンバーの感情の波」を、scheduleやSlackの発言等を見ながら最終決定をしています。今このタイミングでradioに出ることが、メンバーにとっても組織にとってもベストタイミングな状態を目指しています(僕自身まだまだやりきれていませんが)
③進行台本______
大枠の構成を考える(※放送で一番伝えたいことを、どのタイミングで話すのがベストなのかから考える)
入りの挨拶から終わりの締め言葉まで、「話し言葉」で台本を書く
台本の素案が出来たら、読み合わせをしながら「抑揚をどこでつけるのか」「相槌をどこで打つのか」等を台本に追記する
radioを良く聴く人ならなんとなくご理解いただけるかもしれませんが、結論を最初に持ってきたり、最後まで取っておくとリスナーにとっては退屈な時間になることが多いです。また、進行台本で放送の出来は決まると言っても過言ではないので、このフェーズに一番時間をかけます。
※良くも悪くも映像と違ってミラクルが起きづらいので、文字の一言一句、抑揚、会話の間まで考えるべきだと思います
~当日(収録)編
④リハーサル______
事前にトークテーマと簡単な進行台本(ゲストに必要な最低情報)をゲストに渡す(Slackでテキストを3日前には渡す)
本番環境で、5分間、改めて放送の意図や収録するうえでの注意点をすり合わせる
ゲストから収録するうえでの不安を聞く
⑤収録______
進行台本に沿って進める
収録するうえでパーソナリティが意識すべきコト3選
パーソナリティーとゲストの声量の差
収録デバイスに依存するので注意する
声量差は、リスナーに聴きずらさを与えてしまうので、なるべく差がない状態を保つ
声の被り
二人が話すタイミングが被ってしまったり、相槌が大きすぎてゲストの回答を潰さないように注意する
相槌が少なすぎるとradioの醍醐味である「生感」がなくなる。ゲストに不安を与えてしまうためタイミングと量には配慮が必要
対話スピード
対話のテンポには気を付ける
テンポが悪かったり(間が空きすぎたり)、二人の話すスピードが異なりすぎるとリスナーにストレスを与えるので注意
⑥収録終了後______
ゲストからインサイトを回収
収録では聞き出せなかった裏話などをヒアリング
パーソナリティーからフィードバック
放送終了後は、緊張のない落ち着いた雰囲気で話すことができるので、収録で聞けなかった深掘り質問や、radioに対するインサイトを回収しましょう。放送をアナウンスする際、裏話として付け加えるとgoodです。
~公開編
⑦編集______
収録データの確認(1倍速)
音声編集(BGM挿入)とデータの切り取り
タイトルや概要欄の編集
書き出し※自分のみ聞ける状態
放送データの確認(2.0倍速)
ここまで収録した10回分は、ほとんど編集していません。社内向けということもあり「質問に対して考える間」や「発言を修正し、言い直す時間」も醍醐味だと思っているからです。また、radioは2倍速で聞くことを推奨しているので、自分自身も等倍速と2倍速の両方で確認をしています。
⑧公開______
Slackで全体にアナウンス(実際のSlack)
このサイクルで、これまでの11回の放送を制作しました。
2か月で見えた効果と成果
さて、ここで気になる2か月で「どんな効果があったの?」を、定量と定性の2つの観点で共有できればと思います。
定性
radioに出演してくださったメンバー、放送を聞いたメンバーから伺ったインサイトが下記になります。
radioに出ることが決まってから、これまでのメンバーの行動を振り返る機会になり、改めていい会社に入ったなと思った
チームメンバーの良いところを探すことが習慣になった
これまで「見過ごしがちだったメンバーからの小さな配慮」を言語化することができて、これからはその都度感謝を伝えようと思った
それを踏まえて、僕が思う2か月で得られた定性的効果は下記の通りです。
メンバーの良いところに目を向ける「きっかけ」を社内ラジオによって作ることができた
改めてメンバーへの感謝・尊敬を言語化することにより、伝えた側/伝えられた側の自己肯定感が上がった
定量
総再生回数(11本):410 ※従業員数:36名(2022/7/1時点)
最近は新しいメンバーも増えてきて、再生回数が徐々に増えています。始めた当初は全員が聴いてくれるわけではないだろうと思っていたのですが「毎回聞いている」との声ももらったりと嬉しい反応をいただけています。
課題と反省
そして、ここからは2か月運用してみての課題を整理したいと思います。そのうえで、それぞれの自分の反省も併せて共有します。おそらく皆様も運用する際は同じ課題にぶつかると思いますので、僕と同じ轍を踏まないようぜひ頭に入れておいていただけると良いかと思います。
課題①:定量面での成果を実感しにくい(設定しづらい)
わりと「やっちゃえ!」という勢いで始めたこともあり、定量面でのKPI設定などはできていませんでした。通常のradio番組であればわかりやすく聴取率や流したCMからのCV率を追いますが、社内radioに関しては短期で成果が出るものを目的としていないので、制作側も成功体験を積みづらい側面があります。自分でこのnoteを書いていて「どれだけ成果が出たのか」を書きづらくて戸惑いましたw
課題②:各放送回の目的(伝えたいテーマ)が適切に伝わったかどうかを判断しにくい
上記で述べた通り、この社内radioの目的は短期での成果に繋がりにくい側面があり「本当にメンバーにとって、チームメンバーに目を向けるきっかけの提供につながったのか」「本当にこの放送がきっかけで、組織の一体感が高まったのか」「本当にこの放送のおかげで、カルチャーの希薄化を防ぐことができたのか」これらを判断することがとても難しいです……。
全員にヒアリングするのも工数がかかりますし、伝わったとしても目的が達成されるのはまだ先の話ですから「radioによってすぐに成果を出したい!」と考えている方は辞めたほうが良いかもしれません。
ネクストアクション
そして、反省を踏まえたうえでのネクストアクションについても共有します。これを見ている人で、これから社内radioを展開しようと考えている方はぜひ最初から検討してみてください。
メンバーにとっての報酬は何か
プロデューサー時代も強く意識していましたが「聴かれなくなったら意味がない」と思っています。つまり、メンバーが聴きたいと思う理由を改めて考え直す必要があると考えています。
主に社内radioで提供できる報酬は
精神的報酬:自分のことを話してくれている喜び的側面
技能的報酬:自分の知らなかった情報が聴ける学び的側面
貢献的報酬:役に立った実感を得ることできる承認的側面
信頼報酬:メンバーから信頼が他の人にも伝わり、新たな機会や繋がりをつくる評判的側面
自己理解報酬:放送を通じて自分の価値観やビジョンを刺激される、きっかけ作り的側面
この放送によって、リスナー(メンバー)に対してどんな報酬を提供できるか、企画段階で言語化をしていきます。
誰かにとって、一生思い出に残る放送に
社外ではなく、社内限定で公開しているからこそ、尖りのあるコンテンツを提供したいと思い直しました。エンタメ企業ならではのトークテーマや、メンバーの本音をしつこいくらい引き出す質問など、もっとGaudiyらしさを前面に出していきたいと考えています。
以前radio番組を作っている際に、社長から口酸っぱく言われた言葉を今でも覚えています。「聴取率が悪くてもいい。万人受けしなくてもいい。とにかく特定の誰かにとって一生思い出に残る放送を創れ」という言葉。もちろん社内ラジオで達成したい目的を忘れてはいけませんが、聴いてくれたうちの一人が「この放送のおかげで頑張れた」であったり
次の会社に転職しても「あの時の放送が、今でも頭に残っている」と言われるような放送に振り切っていきたいと思っています。
終わりに
最後にちょっとだけ、Gaudiyからのお知らせも伝えさせてください!Twitterでもシェアしましたが、先日シリーズBの資金調達を発表しました。
Gaudiyが開発・提供しているのは、Web3.0と世界に誇れる日本のエンタメ領域を掛け合わせ、理想的なファンエコノミーを実現できる「Web3.0時代のファンプラットフォーム」です。
提供サービスの「Gaudiy Fanlink」は、集英社やアニプレックス社、Sony Music社、バンダイナムコエンターテインメント社をはじめとする多くのエンタメ企業様に導入いただき、好評をいただいています。
まあつまり何が言いたいかと言うと、Gaudiyを共創してくれる仲間を絶賛大募集しています。これからグローバルに大きな挑戦をどんどん仕掛けていきます。このGau-radioも、英語放送になるの!?なんて日を想像しています(僕はまだ英語が喋れませんw)
そうなると、このGau-radioを主導する人事(コーポレートサクセス)も人数が足りません。ちなみに、人事経験の有無は正直問いません。優しく強い組織を目指したい方は、少しでも興味があれば、ぜひカジュアル面談でお話ししましょう!
そしてGaudiyの採用情報はさておき、これから社内radioを始めようと思っている方や、社内radioを始めたはいいものの、うまく結果が出ず悩んでいる方
上記に当てはまる方で相談事項があればぜひ下記Meetyからお願いします!