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名和光、蕩蜜 nawamitsu,toronmitsu
急に決まった。
フォローしている方が関西に来るのは
ポストで知った
けど
遠い話だと思ってたので
緊縛撮影会の枠が
まだ空いてますよーのお知らせは
他人事と思い
赤線で消えていく予定欄も
フムフムと思いながら見ていた
時を同じくして一昨日
出会って以降まだ親しくない段階で
相手から
なぜか別れの宣言をしろと促されて決別し
わけのわからない敗北感で
気持ちがズタズタのまま
楽しそうな報告が続く画面を眺めていたら
前述のフォローしている方、
名和光(なわみつ)さんが
スペースを開いていたので
トホホな心情を抱えつつ
彼とフォロワーさん達との会話を
ああ沖縄の時の流れ、癒やされるーと
シンミリしながら聞いていた
縛ってるたべもの意外とあるね
の話から
縄の話になり
そこから発展して
緊縛相手の体型は問わないとの話を耳にし
またまたぁー、そうは言っても
お好きなんでしょ?映える痩身♡と
聞こえないツッコミを飛ばしつつ
この気持ちの落ち着かない時期が終わったら
沖縄に旅行しに行こ…と
無沙汰にしている宮古と八重山の友人に
LINEを送り
神戸発着のタイムスケジュールを調べていたら
本島なら日帰り可能の事実に気づき
スペースに
行った時よろしくです的なことを
軽い気持ちで部屋に向けて呟いた
その時明日の運命が決まった
気づいたら翌朝
(なぜか)助手席に見学者を乗せ
(なぜか)ラブホの事前予約をし
(なぜか)名和光さんが職質受けてたら
我々が身元引受人だな…と会話してた
ロータリーで見た名和光さんは
健康的で覇気のある色気を蓄えた
笑顔の眩しい大人の男性で
車内で会話した実際も
低くて太くて安定した張りのある
エッチな声の持ち主でした
部屋に入り
空気となる準備も万端の見学者と
会話しながら機材を組み立てる名和光さん
着る服を並べてぼんやりテンパる私
これじゃあダメだと
シャワーで温め直して
前日話題になった長襦袢に着替え
緊張で頭の中が騒がしいまま
ベッドの真ん中へ進み
後ろ手に正座した私は
まぶたを閉じ
深呼吸して
名和光さんからの縄を
静かに受けはじめた
ナイロンの襦袢に縄が走って
シュルっと聞こえる
ひと月ぶりの感覚に喉の奥がグッと締まり
我慢して泣く前のあの、
コロコロキュウウっとした音が喉で鳴る
慌ててつばを飲み込み
息を整える
静かな空間に縄が進んでいく
箇所箇所で
ここは大丈夫ですか?
今の時点でキツいところは?
と囁く声に
はい、大丈夫です
できる限り集中が途切れないよう
フラットな気持ちで答える
自分の身体が何に反応しているのか
理解できないけど
急な縄の動きにドカンと何かが迫ってくる
自然と瞬間鼻息が荒くなり
胸と肩が上下してしまうので
そのたびに唇を締め直し
息を荒げないよう浅く長く
自制をかけ続ける
私の身体に縄が掛けおわり
撮影が行われる
自分のスマホで
緊縛時に撮っていただく事はあるけど
本格的なシャッター音には
耳が緊張する
足の痺れもぶりかえし
身をよじるたびにギシギシと縄が鳴く
苦しい?
気持ちいい
嫌?
すき
外からは判断できない
緊張なのかゾーンに入り始めたのかの変化は
次第に呼吸音が官能的な色を帯びてくることで
私以外の人に知られてしまう
緊張の呼吸から
縄の世界の呼吸へと
見ている人を惹き込んでいった
興奮を隠している私の呼吸は
自分が思うより乱れていたみたいで
深呼吸を促される
深く吸うと身体が膨らみ
ギチッと縄が鳴る
目を閉じ続けている私には
聴覚と触覚が全て
自分で鳴らした縄の音に興奮し
また呼吸が上ずる
ちゃんと息して。
慌てて息を吸い込んだ瞬間
ふいに胸の縄を捕まれ
胸ぐらを掴まれたように上半身が浮く
ふうぅぅううっ!
変な声が出た
恥ずかしい
目は閉じているけど
表情は見られていると思うから
余計に絶対、目は開けられない
開けてしまって
目があってしまったら
羞恥心が爆発して
受け手としての責務が果たせなくなる
息苦しさで目を開けたくなるけど
そのたびにまぶたに力を入れる
何度も繰り返し
呼吸が戻るたびに縄を引き上げられる
苦しい
苦しいのに興奮している
この矛盾を自問自答し始めると
呼吸が疎かになり
また息を吸えと嗜めるれる
名和光さんの声と呼吸に慣れるまで
何度も繰り返し
ある程度覚えたと判断されたのか
一度目の縄は解かれることになった
私の身体から縄が解かれていく
少しずつ、少しずつ
布目の上を走る縄がこすれるにつれ
小さい ぁ.. が数を増やしていく
その反応に
一度離れた縄が再び胸の上に戻り
皮膚が縄の動きを覚え
敏感になるように躾けられていく
腕に
腰に
腿に
静かで淫靡なレッスンを施される
上ずる息と
明らかに聞き取れる喘ぎ声とともに
縄は徐々に解かれる
最後
腰に渡された縄だけになったころ
開放感からなのか
敏感に仕立てられた肌がそうさせたのか
横に崩れて
枕に顔を埋めて呻いている私の腰を
一本の縄が
ビンと引っ張ったその瞬間
私の身体がすごい勢いで絶頂まで押し上がる
と、同時に
潮を噴いてしまう危機感からか
いく、ダメでちゃう!
と
叫んだが遅かった
それに
名和光さんがそこで止めるとは
到底思えないし…と
シーツに作ったあとを
できるだけ見られないように
回りをつまんでかぶせて隠してみた
バレていた
縄を受けていると
四肢が何かで留め置かれるので
不思議な安心感を得られる
バックハグして足まで絡められるような
全身を包みこまれる感覚
逆に四肢が自由だと
快楽の苦痛に耐える間とかは特に
手足がどこまでも伸びて
ちぎれて離れてしまいそうで怖い
拘束されることは
私が安心して自由になれる妙な状態
何年ブランクがあっても
手足が動かない事は
取り繕わなくていい合図なので
快楽を限界超えて受け入れられる
自由の印みたいなもの
と、思っていた自分は甘かった
ブランク中
あの苦しさを忘れたらしい
2縛目の着替え。
体型や皮膚に自信のない私は
できるだけ素肌の出ない衣装を持参した
今度は網タイツにチャイナロンパース
長袖スタンドカラーなので
手と顔しか皮膚は出ないセンシティブ対策
この格好なら
先程の長襦袢では出来なかった
開脚も可能になる
一応関節可動域は標準的硬さなので
短くて太いながらも胡座はかける
ということで次は
胡座縛りと諸手上げ縛りの
責苦されやすい緊縛になった
自分がうなづいたとはいえ
縛られている間も胡座は苦しい
ああ、安請け合いするんじゃなかった
この時点で少し後悔が出る
さらに
脇を全開にして手首は首の後ろへ
自然に組んで置いていたら
そのまま腕をまとめられた縄端は
腰縄にピンと張って結われる
ゆるい弓のような状態の上半身は
縄のテンションを確認すべく引っ張られた
ああぁぁ…
苦しさで声が漏れる
髪の毛を巻き込んでる、痛い?
そう聞かれるけどそこは全く気にならない
むしろ座禅の足が苦しい
なので足を楽にしたくて
身体が自然と前傾姿勢になっていく
最初はそれでもよかった
時間が経つにつれ
顔の横で全開になった二の腕が張り
肘から乳首まで続く皮膚に
ギリギリのテンションが伝わる
筋肉と皮膚の限界がくる
胡座の痛みとはまた違う苦しみで
身体が自然と起きていく
腰を反ると
腕は少し楽な状態に戻った
すると
ちゃんと胸を突き出して
息を吸って
だめ、吐ききれてないから吸えてない
吸って
吐いて
ウゥゥ…
美しい姿勢でないと
その人の縄の世界観の一部を
自分が損なっている気がしてしまう私
せめて
指示には従いたいという欲が強い
でもそれは同時に
己の肉体の限界を試すことに他ならない
息を止めて
その瞬間を少しでも長く保ちたい私
呼吸を止めさせたくない名和光さん
私の中では
優先順位は明確なので
名和光さんが望む行動、
息を吐くことをオートマチックに選ぶ
促されるタイミングで
息を、
吐く
限界までしっかり吐き出させた肺に
勢いよく空気が戻る
そのとき
表面積が一気に広がり
腕も足も縄がビンッと張った
食い込む縄
走る縄のキツさ
思わずグッと息を止めてしまう私
身体が丸まろうとする
すると
首の後ろで固定された手首から
背中を通り
腰に固定された縄が
そこで止められ
肘から乳首まで全てが限界に伸ばされる
私は前にも後ろにも身体の居場所を持てず
時間が経つごとに
身体を正しい位置に保てるが短くなり
うめき声を上げながら
前へ、後ろへと身じろいで
藻掻くばかりになった
それでも
丸まらずに胸を張りなさい、と
静かに言われると
限界を超えてすべてがキツい胡座でも
その言葉に従いたい
従うことで
自分に注がれている視線を
喜ばせたい、納得されたい
そんな気持ちで身をよじり続けていた
体感は30分以上、
実際には何分もしてなかった身じろぎの時間
見極めのため
指先を触った名和光さんは
解き縄に移る
流派なのか個人の資質からか
腕を戻すときに手を添えてくれた
縛られてた本人だけがわかってない
肩が自分のモノじゃない感覚
重力のまま腕を振り落としていたら
痛めてたかもしれない
大切に扱って貰う体験をしてはじめて
縛り手さんは解き縄の最後まで
気を配る人じゃないと
身体を預けてはいけないのよホントはと
ある人がつぶやいていた言葉が
ようやくわかった
駆け引きされながらも
一番の責め苦だった胡座から開放された私の足
ようやくまっすぐに投げ出せた
安堵感で
全身から力が抜ける
仰向きになってグッタリする私の足を
いたわってくれる名和光さ…ん?
え、なにしてんの
ノーガードの女に
急に関節技をかけてくる成人男性
正気とは思えない
さっきまで苦しみもがいてたその場所に
足技キメるって
どんなサディスト???
バッと顔を見たら
微笑んでいる
こわいこわいこわい
痛いし…
イタイ!痛いーっ!
思わず逃げられる方向へ身体をよじる
足が離れた
なにするんですか、と口を開こうとしたら
また足技を掛けてきた
だから痛いイタイいたい…
やめる?
そんな聞き方をされたら
やめたいとは言えないかわりに
もっと、としか答えようのない性を知っている
自分への情けなさと
見切られている悔しさと
同じだけの嬉しさが交錯する
変な時間
縄でもヘロヘロなのに
不意打ちの足技でボロボロ
ぶっ倒れたまましばらくして
ゆっくり上がってきた顔は
不思議と恍惚と、満足していたらしい
指をついて挨拶をして
再び頭が上がってきたときに
乱れた髪からのぞく私は
緊張の一切消えた
女の顔の
蕩豆そのままだったことに
見学者は少し、驚いたらしい
見学者から投げ入れられた給水タイムで
蜜豆へ戻るべく
気持ちを落ち着かせる
とりあえず途中経過として
手足指の確認、各関節を静かに回してみる
仕事で腱鞘炎になっていた箇所は
痛みもなく無事でひとりホッとする
まだ、時間ありますけど
したいことありますか?
名和光さんがフィードバックの雑談中に
聞いてくれた
2縛目の開始直後に
これが終わったあとでも
あなたをシバく時間はありますから、と
言われていたことを思い出した
私はマゾヒストではないけど
名和光さんに次してもらえるのは
私が沖縄へ行くか
あちらが商用で関西に来た時しかないので
今日お持ちのもので
色々体験したいと申し出たところ
鞭を受けることになった
これがすごかった
名和光さんの鞭は
気持ちいい鞭
一発が重くて痛くて
足が震えるほどの強さなのに
なぜか次も受けたくなる
ロンパース着用だから
皮膚に直に当たらないだけで
心と身体の受け入れ方が違うのかと
考えてみたけど
多分それだけじゃない気がする
鞭って
こんなに気持ちよく耐えれるもの?
今までなら
一発キツイのが来たらもう
あまりにもの痛みに萎えてしまって
ただただ苦痛の時間を耐えるしかない
フラッシュバックレベルに
苦手な記憶しかなかった
その私が
低くて太くて冷静な
ちゃんとしなさいとの言葉だけで
崩れた四つん這いを自らたてなおし
腰を沈め
首の後ろを手首で隠し
尻を突き出している
それも何度も、何度も
もうやめる?
と聞かれても頭を振り
なんていうの?
と問いただされて
ください…ください!
と声をだすほど
名和光さんの鞭には中毒性があった
鞭にハマった瞬間だった
私の息が整うタイミングと
覚悟が見えるみたい
決まったリズムで縄は打ちこまれていく
上から
横から
多彩な方向から
鞭は振り下ろされるのに
同じところばかりに落ちてくる鞭
打たれるたびにうめき声や叫び声が部屋に響き
体が跳ね
四つん這いは砕けて
怖さで脚は震える
体勢を戻すべく
再び四つん這いになる私の身体は
次の一撃が来るまでの
撫で鞭に怯えて崩れてしまい
反った腰を維持できなくなくなるたびに
にげない…
と低く響く声で捉えて
突き出せ
と冷静な声で押さえて
再び鋭く重い音を飛ばしてくる
その表情は
征服者の笑みそのものだったそうだ
その表情を知らない私は
ただひたすら冷静で
頑張りの足りない臆病者が崩すリズムを
仕方ないか、と呆れながら
打っていたと思ってるので
必死に
少しでも粗相のないように
けど
打撃痛のあとに来る恍惚感の中毒で
ズルズルと身体を引き戻し
尻を突き出していた
何打受けたのだろう
ついに自分が思う限界に来たので
もう、無理…と
次の体勢を取ることができなくなった
ここでやっと
名和光さんが私の視界に入る
よく頑張った
そう言ってにこやかな顔を見れて
少しホッとしたので
そのまま横倒れになり
しばし一人の世界に閉じこもり
中空を見つめながら
過去との対峙をしっかり済ませて
私の緊縛撮影体験は終了した