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【完結】神の力を貰ったので遠慮なく世界を癒します (130) エピローグ
結婚式を一週間後に控え、リオとレオンは再びブーニン地方のベルトランドの屋敷を訪問することにした。
リュシアンがエレオノーラの様子を見に行ったところ、驚くべきことにエレオノーラはすっかり農業やブーニン地方での生活に馴染んでいたそうだ。
「エレオノーラは変わった。今ならアレックスがレオンだってバレても大丈夫だろう。ベルトランド以外の男には全く興味なさそうだ」
とはいえ、リュシアンの言葉をレオンは疑い深そうに聞いていた。
でも、前回の日帰り旅行が楽しかったので、赤ちゃんが産まれる前にまた行きたいとリオは可愛いおねだりをした。レオンは「仕方ないなぁ」と愛妻の珍しいおねだりにデレデレだ。
リオのお腹はかなり大きくなった。来週の結婚式までは大丈夫だろうけど、その後はいつ出てきてもおかしくない。今のうちに行けるところに行きたいというリオの希望を、レオンはできるだけ叶えようとしてくれる。
先週の休診日には初めて海に連れて行ってもらった。いつもの護衛メンバーは勿論一緒だが、こうして積み重なっていくレオンとの思い出の一つ一つがリオにとっては宝物だ。だから、今日のベルトランド邸訪問もすごく楽しみだった。
ベルトランド邸に到着すると、建物の裏手からほっかむりをした若い女性が山ほどの野菜が入った籠を背負って現れた。その女性はリオと目が合った瞬間に固まり、そのまま隠れようとした。しかし、リオはすぐに分かってしまった。その人がエレオノーラであると。
エレオノーラは物凄く気まずそうに会釈をして挨拶をする。リオは正面から顔を合わせるのは初めてなので、ちゃんと自己紹介した。
するとエレオノーラは怒ったように「あなたのことは知ってるわ」と言う。
そしてリオに聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で
「・・・ありがとう」
と言った。
(これは・・・伝説のツンデレ!?可愛い!何この子!)
リオは内心興奮した。
エレオノーラは顔を真っ赤にして
「今日の野菜は特に出来が良いのだけ選んだんだからね!ベルトランドの料理人の腕は最高なんだから、残したら許さないから!」
と宣言した。
リオとレオンは顔を見合わせてブホッと噴き出してしまう。
耳まで赤いエレオノーラはドアを開けて奥に向かって
「ベルトランド!お客さんが来たわよ!」
と怒鳴る。
すぐにベルトランドがドアのところに現れた。
「ベルトランド、久しぶり!元気だった?今日はありがとう!」
とリオが声を掛けると、ベルトランドの動きが一瞬止まった。
顔の表情も完全に止まったので、何があったんだろう?と心配になり、彼の顔を覗き込む。
ベルトランドは感情のない顔でリオのことを見据える。
「次にリオに会った時は・・・・」と言いかけ、
リオの出っ張ったお腹に目を遣った。すると、瞬時に表情が普通に戻る。
「・・・ああ、ごめん。一瞬意識が飛んだ」
というベルトランドに
「大丈夫?立ち眩み?めまい?診察するよ」
と言いながらリオは屋敷に入っていった。
そのとき
昔、邪悪な魔術師がかけた邪悪な暗示の魔法が、
獣人の本能に一瞬で雲散霧消したことを知る者は
誰もいない。