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【ブログ】27歳のわたしと87歳の大家さん
27歳のわたしの一番の友人は、87歳の大家さんだ。
お互いの気が向いた時に、声を掛け合って月に一回くらい。読んだ本や、最近あった面白い出来事、果てには人生観まで。いろんなお話をしながら、大家さん手作りのご飯をいただく。
親子より歳が離れているのに、友達になれるなんて不思議よね、と笑い合いながら過ごす時間が宝物のようなので。そして大家さんの話がいつもとても素敵なので。独り占めしておくのが惜しくて、初めて所謂〝日記〟〝ブログ〟というジャンルの記事を投稿してみようと思った。
わたしが大家さんと出会ったのは、22歳のとき。
東京での就職が決まり、一人住まいの家を探していた。我が家はみんな、生まれも育ちも関西。何ひとつ知らない土地で、ふらりと内見した家。鍵を開けて微笑みかけてくれた大家さんの、人の良い笑顔に心を掴まれてしまい、そこに住むことを決めたのだった。
引っ越してきた日に、菓子折りを持って挨拶に行くと、「一緒にいただきませんか。」とお家にあげてくださった。お菓子とお紅茶を味わいながら、いろいろなお話をした。そんな中で大家さんが「昔は家賃も手渡しだったのに、最近は振り込みばかりで、寂しいわね。」とおっしゃった。それを聞いたわたしが「手渡しでもいいですか。」と言ったのがはじまりだった。
毎月末、お家賃を持って大家さんの元に伺う。不思議といつも話が弾んで、一時間も二時間も玄関口で話していた。そのうち私が家賃を持っていく日は、大家さんがご飯を作って待っていてくださるようになった。気がつけばお家賃を渡さない日も、お邪魔するようになった。
大家さんの出してくださるものはどれも美味しくて、いつだっていただくと幸せな気持ちになる。何がすごいって、大家さんはなんでも組み合わせてしまうのだ。
私がスパイスをお土産に持っていくと、紅茶を淹れて、輪切りにしたレモンとたっぷりの蜂蜜と合わせて飲ませてくださった。ジャムをプレゼントすると、クラッカーとクリームチーズを出してきて、サンドして一緒に頬張った。
その日冷蔵庫にあるものを組み合わせて、大家さんが出してくださる名前のないお料理が、わたしは大好きなのだ。
そのことを、大家さんに伝えると「なんだか、思いついちゃうのよね。」と笑っていうのだ。そして、「お食事は一人より、〝美味しい〟とお話ししながら誰かといただく方がずっと幸せだわ。」と。
私も一人暮らしを始めてから、つくづくそう感じる。大家さんと〝美味しいね〟とお話ししながらいただいたものは、幸せの味がする。
大家さんと特に仲良くなったのは、私が元彼と同棲するかどうかで、両親と大喧嘩したのがきっかけだったように思う。その時大家さんがしてくださったお話がとても素敵だったのだが、それは次の機会にゆっくりと語りたい。