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悔い、希望、若さ、人生
喫茶店で隣に座った若い男女が注文を終えるなり話し始めた。男の子の方は頭痛持ちのようで定期的にこれ死ぬのかな?ってくらいの痛みに襲われるのだと言う。病院でちゃんと検査をして、手術するなり薬で治療するなりしなよ、と言う至極真っ当な女の子の助言に対し、彼は長期入院にでもなったら大切な20代を無駄にしてしまう、治療するならせめて30代、だからこそ自分は毎日を悔いのないように生きている、と返し、その後は同じ学校の友人の話やバイトのことに話題が移っていった
毎日を悔いのないように生きているのは大変素晴らしいけど、彼らの倍くらい生きている私からしたら、そうしている内に30代はあっという間にやって来て、ますます大切なものや日常を失いたくなくなることを知っている。そして、今目の前にいる自分を心配してくれる女の子(彼女だと思うけど、もしそうじゃなくても親しい友人のはず)にそんな悲しいこと言うなよ、と思ってしまった。病院に行くのが怖いのはよくわかるけど、そんな形で人生を棒に振らないで、目の前の素敵な女の子のことを大切にして、と勝手に盗み聞きしながら思ってしまった
喫茶店を後にして、駅ビルのトイレに並んでいたら後ろで電話する声が聞こえてきた
「受験終わって、今◯◯のトイレにいるよ。テスト、まあまあ出来たと思うー」となんとなく嬉しそうな温度を感じた。ちらと見ると見るからにいいところのお嬢さんと言った感じの利発そうな女の子が立っていた。小6の頃の書き初めは、希望の春、と書いたなと不意に思い出した。ああ、まさに希望の春だなあ
とたった1時間くらいの間で若者の諦めと希望を目撃するという週末。私からすればどちらもとても若い。人生の入口に立ったばかりだよ。