生活,しいたけの天ぷらの ①
【こんな時期だからこそ、
アホアホなお話を書くことにしました】
オレこと、しいたけの天ぷらはその日
(も、というべきか)憂鬱だった。
だって、きっと今日も
せっかくのかっこいいイガイガの衣は
外されちゃうだろうし
「においがくさいからイヤ」と顔を
しかめられるに決まっているからだ。
この家の長女ゆうかは、14歳。
春から中学3年生だ。
まだ14年しか生きていないような
感じもするが、女子という生き物は
3歳くらいからもう「女子」であり
女子というものが対外的に
どのような存在であるかということに
極めて自覚的である。
とオレのばあちゃんが言っていた。
それゆえ、娘の一挙手一投足に、
ふわふわした笑みを浮かべる父親が
同席している夕食の時には、
いかに忙しい合間をぬって
母親が食事の準備をしたのだろうと
お構いなしで
「もう!天ぷらは太るから
嫌だって言ってるじゃん!」と
言い放ち、
おいしい油をたくわえた、
仁王様が背負っている炎のような衣を
無慈悲な顔で盛大にガリガリ
剥がしにかかるのである。
そんな彼女(ゆうか)に誰も何も言わないのは、
父親→ヘラヘラしてるから、
母親→毎回のやり取りに疲れているから、
であるし、
彼女の弟の弓人(ゆみと)にいたっては、
ご飯となると周りのことなんてお構いなし
だからであるためだった。
自分が好きなおかずを
これまた大好きな白いご飯とともに
「いかにたくさん」食べられるかにしか
興味がないのだ。
そんな彼であるが、オレの憂鬱に
さらに追い討ちをかけるのは、
やつもまた、しいたけの天ぷらを
忌み嫌っているという事実である。
やれやれ、気がおもい夕ご飯の始まりである。