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雲出ずる国への道 その参-②

ホテルは、なんというか
「えーと昔カラオケボックスだったですか」
というか、もっとなんというか
えーとあの言葉を選ばずに言えば、
元はビジネスとか旅行で
使うんじゃない方のホテルだったんじゃ?
みたいな色味なんですけど
(だって部屋のドアが真っ赤で
他のところは黒が多いのだ。
廊下は灯火管制?ていう程に暗い)

友は特に何も感じていないようなので
口をつぐんでおくことにする。
働いている方々はみなさん
とても感じがいいしね。不思議感覚。
ただ、働いている方々の親切さとかとは
一切関係なく、私はああいうパック旅行で頂く
アメニティーみたいなものがことごとく苦手だ。
化粧水とかは肌に合った試しがないし。

友の荷物に私の分もこっそり紛れ込ませて
やろうかと思ったが、いかんせん彼女は
リュック一つしか持ってないんだった。
すぐにバレちゃいそうなので諦める。

部屋にドーーンと荷物を降ろし、
宍道湖周辺をお散歩することにする。
湖の横にかかる大きな橋を渡って
素晴らしすぎる夕陽を拝む。
雲が出ずる国でもあるけれど、
美しい夕陽が沈む国でもあるのですね。
だいだい色の雫。

島根おでんというのが食べてみたかったのだが
(暑くても関係ない)
行きたかったお店が見つからず諦め、
ホテル近くの居酒屋さんで夕ご飯を食べる。
つぶ貝の塩焼きが私を無言にした。
なんだこれは。
私は気に入ったものがあると
そればかり食べる癖があるので、
2回頼んで友人の分も奪って食べた。
だし巻き卵も私に譲りなさい。
彼女にはお肉とかお野菜をあげます。

部屋にユニットバスが付いているのであるが、
友は大浴場に行くという。
私は部屋のお風呂に入ることにして、
お湯をため始める。
友がとても楽しそうに出て行ったと思ったら
わずか数分後にドアの後ろでガコガコ変な音が。
なんだよぅと開けると、鍵を開けようと
試みているところであった。
その腕には数種類の枕が。枕?
あぁ、だから鍵をすんなりあけられなかったのか。

「お風呂用のバスタオルと
タオル持っていくの忘れた・・へへ」

「いろんな枕があって
借りられるみたいだったから〜」と
戻ってくるわずかな時間も惜しまずに
枕を仕入れてくる友よ。
ちっこいところに楽しみを見つけるその精神、
非常に素敵だ。
今度こそタオルをちゃんと持って
ニコニコしながら出かけていきました。

お風呂からもどってきた後は、
また廊下に出かけて行って、
今度は小型の空気清浄機まで
貸し出してくれるらしくて、うふふ〜と
抱えてきて、ベッドサイドの床に
うふふ〜と設置してご満悦そうだ。

彼女は喘息の持病を持っているので、
今回の旅行についても
ホテルの空気は乾燥するから、
と少々不安な気持ちでいたらしいが、
(夜中に発作が出たりすると
私に迷惑がかかるから、
という理由で。その緊張が余計に
よくないんじゃないだろうかねぇ)
いいもの借りられてよかったね。

友人との旅行、でよくあるような
「夜を徹してのおはなし」なんて
ものは我々の間には存在しない。
大事な朝ごはんの時間と
それを元に割り出した
起床時間のみ確認して、さっさと眠りにつく。
睡眠は私にとって何よりも重要なものなので、
友が寝かせてくれなかったりなんかしたら、
借りてきたばかりの空気清浄機を
薄暗い廊下にぽいっとしてやる。

明日は早起きして活動するので、
この旅に対する我々のやる気が
神さまにも伝わることであろう。
待っててね神さま。



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菅野みゆき (2024年11月 salamanderから変更しました)
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