5編の"物語"の中で -[大地に耳をすます 気配と手ざわり](東京都美術館)
某日、東京都美術館。
感想をはじめに述べるなら、1人ひとりのアーティストの作品数が多く、その世界観を堪能できた。そして最後に5人の世界観が重なりあい、タイトルにもある大地の気配、手触りに回帰していくような、静かな感動を味わうことができた。
川村喜一
タイトルに「インスタレーション」という文字があり、展示の意図が伝わってきた。(もちろん会場の都合はあるにしても)、作品がワイヤーで吊るされ、作品同士が物理的につながっている点も。
シルクスクリーンに印刷された作品が背中合わせに展示され、その間に人形のような立体作品が展示もされている。
写真では省いているのだが、作家の真摯な言葉も随所に展示されており、鑑賞者たちは熱心に読んでいる。
生きる、という言葉が重みを持って、とても深く深く、伝わってくる。
ふるさかはるか
動画による作品制作過程も。
ミロコマチコ
エスカレーターを下り、地下(吹き抜け)の展示室へ。
展覧会案内には「東京都美術館の個性的な広い空間に合わせて、生命のうごめく奄美大島をイメージしたインスタレーションを制作」とある。
倉科光子
繊細な作品一点一点に、作家のコメントが添えられていた。
草花たちの作品を通した、東日本大震災からの復興の記録でもある。
榎本裕一
最後の作家は、極寒を描く。
5編の短編・中編小説を読んだような
この展覧会は、本に例えたくなった。
会場でまず目を惹くミロコマチコ氏の巨大なインスタレーション、その上階の川村喜一氏の作品たちが中編小説、3人の作家たちの作品は短編小説、という印象を受けた。
まるで、「大地に耳をすます 気配と手ざわり」というタイトルの作品集を読んだような。