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爆破的なスクワットを分析する!No.3
爆破的なスクワットを生むSSC
爆破的なスクワットを生むシステムは、ストレッチショートニングサイクル(SSC)のメカニズムにあります。
ストレッチショートニングサイクルとは、筋肉が伸ばされ(ストレッチ)、同時に短縮(ショートニング)されることで、より大きな力を発揮するメカニズムです。スクワットの場合、下降時に筋肉が伸びることでエネルギーが蓄積され、上昇時にそのエネルギーが利用されます。
1.具体的な動作
👉下肢SFL:膝関節が屈曲し、四頭筋がストレッチされることで、上昇時にそのエネルギーが活用されます。
👉下肢SBL:股関節が屈曲し、大臀筋やハムストリングスがストレッチされ、上昇する際にその力が伝わります。
👉下肢LTL:主に腸脛靱帯に連なる筋筋膜経線がストレッチされ、膝と股関節の動きに協働します。
パワーリフティングスクワットにおいて、下肢のSFLは膝関節の伸展に寄与し、SBLは股関節の伸展に主に関与します。一方、LTLは膝関節と股関節の双方をストレッチショートニングシステムで活用し、立ち上がり動作を助けます。これにより、効率的に立ち上がるための力を生成することができます。この連携によって、スクワットは全体的に力強く、効果的な運動となるのです。
2.フックの法則が爆破力を決める
2-1. 位置エネルギーから弾性エネルギーへの変換
スクワットの動作では、身体が下降する際に重力によって位置エネルギーが蓄積されます。この位置エネルギーは、体が下がることで増加し、特に股関節や膝関節の屈曲によって蓄積されます。立ち上がる際には、この位置エネルギーが弾性エネルギーに変換されます。
2-2. 弾性エネルギーとフックの法則
弾性エネルギー:弾性エネルギーは、物体が変形して元の形に戻ろうとする力によって発生するエネルギーです。筋肉や腱もこの特性を持ち、ストレッチされた状態から短縮されることで力を発生させます。
フックの法則:フックの法則は、弾性体において変形(ストレッチまたは圧縮)がその物体の元の長さに比例することを示しています。これは以下の式で表されます。
F = k ・x
ここで、Fは力、kはばね定数、xは変形量を示します。この法則が成り立つ限り、弾性エネルギーはストレッチ時に蓄積され、動作に利用されます。
2-3. より大きな浮力を得るために必要なスピード
スピードの重要性:スクワットの上昇局面やジャンプにおいて、より大きな浮力を得るためには、下降局面での速度が重要です。速い動きによって、ストレッチショートニングサイクル(SSC)を最大限に活用することができます。
エネルギーの蓄積と放出:動作が速くなると、筋肉・腱がより短時間で伸びて戻ることができ、この短期間で蓄積された弾性エネルギーが効果的に利用されます。その結果、より強い力が発生し、スクワットの上昇局面で高い浮力を得ることが可能となります。
3. バネ係数の重要性
バネ係数(spring constant)は、材料の硬さや弾性を示す指標で、筋筋膜経線のこの特性も同様に適用できます。筋肉や筋膜のバネ係数が高いほど、力を効率的に発揮しやすくなるため、重い負荷を持ち上げる際の全体的な力の生成に寄与します。このバネ係数は、筋肉の収縮速度や張力によって変化し、トレーニングによって変化することが知られています。
3-1. 神経による操作
バネ係数が神経系によって操作可能であることは非常に重要です。神経系は、筋肉の収縮を調整し、筋肉の緊張や張力の生成をリアルタイムで制御します。アスリートは、訓練を通じて神経系のパフォーマンスを最適化することで、筋肉の反応を迅速かつ効率的にすることができます。これにより、より大きな出力を引き出すことが可能になります。
3-1-1. SSC(ストレッチ・ショートニング・サイクル)による神経操作
SSC(ストレッチ・ショートニング・サイクル)は、筋肉が伸展(ストレッチ)した後に迅速に収縮(ショートニング)する運動メカニズムであり、パフォーマンス向上において極めて重要です。このプロセスでは、筋肉の弾性エネルギーを効率的に利用し、神経系がこのメカニズムを巧みに制御します。
スクワットの際、負荷を加えることで筋肉は伸展します。このとき、筋肉の緊張が高まり、弾性エネルギーが蓄積されます。その後、このエネルギーが収縮時に利用されることで、出力が増大します。そのため、スクワットではショートニングのタイミングが非常に重要です。理想的には、筋肉が伸びきる前に収縮に移行することで蓄積したエネルギーを最大限に活かすことが求められます。この「タイミング」が誤ると、エネルギーが失われ、効率的なパフォーマンスが削がれる可能性があります。
このプロセスには、筋紡錘(muscle spindle)や腱紡錘(Golgi tendon organ)などの感覚受容器が重要であり、これらが筋肉の伸長や張力の変化を感知し、神経信号を介して適切な収縮を調整します。特に、神経系の応答時間や反応速度がトレーニングによって改善されることで、ショートニングのタイミングをより正確にコントロールできるようになります。
3-2.変化する材料のバネ係数(筋膜と細胞外マトリックスの硬化と短縮)
バネ係数を考える上で、筋膜と細胞外マトリックスの硬化・短縮現象は非常に重要です。これにより、筋肉の力発揮能力や運動効率が向上し、競技パフォーマンスが最大化されます。この点については、以前書いた「パワーリフティングのピーキングは筋筋膜経線の硬度と短縮にあり」を読んでみてください。
3-3.. 観念運動行為の重要性
観念運動行為(mental imagery)は、運動のイメージを心の中で想像することで、実際の動きのパフォーマンスを向上させる手法です。スクワットなどの特定の動作において、観念運動行為を用いることによって、神経系を活性化し、筋筋膜経線のバネ係数を実質的に高めることができるとされています。この心理的トレーニングは、実際のトレーニングと同じように神経系に影響を与え、出力を最大化する手助けとなります。