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【試し読み 第2弾!】あばれる君、初エッセイ『自分は、家族なしでは生きていけません。』

あばれる君、初エッセイを出版します!

5月22日に、あばれる君はじめての書き下ろしエッセイ
『自分は、家族なしでは生きていけません。』
をポプラ社より出版します。

愛妻・ゆかちゃんへの感謝、2人の息子「ちびれる君」たちとのあたたかな触れ合い、芸人としての苦悩と手ごたえ、合格率5%の難関・気象予報士挑戦……。あばれる君の誠実でまっすぐな人柄があふれる1冊です。

前回に続き、本の中からエッセイを2本、公開いたします!
お楽しみいただけますと幸いです。

※【試し読み 第1弾!】は下記よりお読みください

※校了前のエッセイを公開いたします。書籍化した際には若干の修正が入る場合がございます。ご了承くださいませ。


【試し読みエッセイ➂】
ゆかちゃんが泣いた

養成所を卒業し、無事に事務所の預かりになりプロの芸人としての一歩を踏み出すことができました。しかし、バイトをしてもなにをしても時間が余ります。ゆかちゃんは名門病院に勤め、夜勤日勤の繰り返し。とくに、日勤は電車で座って行きたいという理由でかなり早い時間に家を出て行きました。
そんな中、僕は夜通しの飲み会からの帰り道、出勤するゆかちゃんと最寄り駅ですれ違い肩をすくめる日々でした。

午前中で終わる公衆トイレ掃除アルバイトの日給は8000円。時間の余る午後は、パチンコに行きます。稼いだお金は30分ぐらいで無くなってしまいます。家賃の支払いは折半からゆかちゃん持ちになっていきました。

たまに、ギャンブルで成功して2万~3万円を自慢げにゆかちゃんに渡すと、ゆかちゃんは戸棚にはしまわず枕元にそのまま置いておくのでした。多分、すぐにお金が必要になって、僕がせびりに来るのがわかっていたのでしょう。案の定、渡したお金を僕は次の日、ポケットにしまうのでした。

とある日、日勤から帰ってきたゆかちゃんは、感情が溢れてしまいます。なんでお金がないのとシクシク泣くのです。稼いだ日給は、パチンコで無くなったと伝えました。

ハードな日勤と夜勤を繰り返し、仕事で人を支えて、家に帰っても収入が安定しない僕を支えなくてはならないのは本当にかわいそうだなと、そのときはじめて思いました。恥ずかしながら、それまで人の気持ちを考えるなんてことはまったく頭になかったのです。ゆかちゃんの夢まで俺が背負ってるんだから働いてくれという傍若無人な発想でした。ゆかちゃんのやさしさも限界に近づいていました。

そのとき、自分の人生、本気でやらなくてはいけないと気づくのです。


【試し読みエッセイ④】
僕はお父さんに自分のミニ四駆が走る姿を一緒に見てほしかった。

週末は、お笑いステージで全国をまわることが多いです。イオンタウンや複合施設にたくさんの子どもたちとその家族が客席で待ってくれています。控え室からそのワクワクしている表情を覗き見ると、思わず涙が出てきます。自分でも思いますが感受性が豊かなのです。

小学四年生のころ、同い年の友達と週末に開かれるミニ四駆の大会によく出ていました。馴染みのない隣町の子や大人もたくさん参加していました。小さなコミュニティでもじもじしていた僕にとって、大会自体がとても華やかに見えました。

そんな中、一緒に親身になってミニ四駆を作ってくれる友達のお父さんがすごく羨ましく思えました。大人がバックについていると技術も経済力も段違いで、その友達のミニ四駆はとても速かったのです。
思い切って、僕も父を週末のミニ四駆大会に誘いました。なにも買ってもらえなくてもいいからとにかく、自分のマシンが走る姿を一緒に見てほしかったのです。父は渋々着いてきてくれました。

父はいまいちミニ四駆大会になじめていません。口をぽかんと開けて放心状態みたいになっています。これは父の癖です。人見知りが強く、知らない人がたくさんいる学校行事などでよくこの状態になっていました。動かない「ASIMO」を想像してもらえればわかりやすいと思います。たぬきが死んだふりをするように、これが父の防衛本能です。息子の僕はたまったもんじゃありません。

僕は、「よし。このベアリングをつけてコースアウトを防ごう」とか、「ギアにグリスを塗ると速くなるんだった」とか独り言を父に聞こえるようにわざと大きな声で言いました。ミニ四駆の醍醐味を必死に伝えようとしたのです。まわりのお父さんと同じように一緒に作ってほしかったのです。ミニ四駆のおもしろさを伝えることでこれからも父が見にきてくれるかもと期待したのです。

レーススタート直前、僕のマシンが突然走らなくなりました。接触不良なのか、モーターの不具合なのかわかりません。そのとき、

「いじってばっかりいるからダメなんだよ‼」

と父にみんなの前でいきなり怒られました。
(当時、父は本当に忙しそうだったし、一時的な感情だろうから仕方ないです。)

みんなの前で恥ずかしかったし、そんなことより走らなくなったマシンを直してほしかった。だから泣きました。もう週末に父をミニ四駆に誘うのはやめました。週末の家族連れを見るとふと思い出す記憶です。

話を戻すと、僕は特にお父さんと子どもの2人で遊びに来てくれているパターンに弱い。たくさん妄想してしまいます。普段、仕事で疲れているお父さんは子どもと最近あまり遊んでいないことに気づく。そんなとき、あばれる君が近くの複合施設に来るという告知が目に入る。(普段からポケモンとか好きだし、教えてあげたら喜ぶかな?)わが子を喜ばせたい一心で、そのお父さんは子どもに相談する。

「あばれる君が来るらしいよ。一緒に観に行く?」
「ええっ⁉ 本当⁉ 行く‼」

週末まで胸躍らせてその家族は過ごす。当日は、興奮で早く起きるはず。整理券配布の時間に合わせて家を出発し、無事に整理券を手に入れて、ステージの時間までキラキラした施設を巡って待つ。

すみません、ハンカチを貸してもらえませんか……? 妄想で涙が出てきました。息子の笑顔を見たい父とあばれる君を見たい息子。そしてその2人を想像して涙が込み上げるわたくし、あば。

そんな期待に溢れた家族連れが、たくさん観に来てくれるのだから手は抜けません。少しでも週末のいい思い出になってくれたらいいな。


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