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おむつを開けずに中が見たい(#ねかいごと #ヘルプパッド2)

私たちは、人間の鼻のように”におい”で排泄が分かる「Helppad」(ヘルプパッド)を開発しています。開発したきっかけは「おむつを開けずに中が見たい」という介護職員さんのひと言でした。

大学時代、実習で介護施設を訪れたときのことです。私はとんでもない光景に直面します。便座に座っている高齢の入居者さんを介護職員が二人がかりで押さえつけていました。入居者さんはうめき声をあげ、嫌がっても職員さんたちは力を緩める様子もなく、必死の形相でお腹を押しています。もうすぐ帰宅時間なので、施設にいるうちに排便させるために、腹圧をかけていると言います。 

 あまりにショッキングな光景でした。私は思わず、「これはご本人が望んでることですか?」と尋ねました。質問しながら泣いてしまっていたと思います。職員の方は私をとがめることも、慰めることもなく、ただ静かにこう答えました。

「わからない」  
 重たい葛藤を背負いながらケアの現場に立ち続ける介護職員の方々。できることがあるなら、少しでも力になりたい。そんな思いで「どんな製品があったらいいと思いますか?」と尋ねたとき、返ってきたのは「おむつを開けずに中が見たい」でした。

本気ではなかったと思います。ドラえもんの道具でも願うように、苦笑まじりで教えてもらった、介護職さんの思い。でも、私は確かにあの日、願いとして受け取ったのです。

あれから15年。ようやく自信を持って「おむつを開けずに、中が分かるようになりました」と伝えられるところまで来ました。ベッドに敷くだけで排泄を検知できる。排泄データを蓄積し、明日のケアに生かすこともできる。私たちのヘルプパッドは介護者の願いを叶えたプロダクトだと自負しています。

でも、これはまだほんの入口に過ぎません。これからも私とabaのメンバーは、介護の願いに挑み続けます。同じ志を持つ技術者とも手を取り合い、競い合い、介護の願いを叶えていきます。

執筆:宇井吉美(aba代表取締役CEO)
初出:2023年11月11日・ねかいごと2023

今年のねかいごとイベントは11月10日(日)、11日(月)の2日間、東京都千代田区紀尾井町にある オープンコラボレーションハブ LODGEにて、無料で一般公開させていただきます。日々の暮らしの中で大切にしたい、ちいさな願い、その願いから生まれたプロダクトに興味がある方ならどなたでも大歓迎です。

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