最強に面白い四季賞受賞作「いつか故郷をくちずさんで」1/2
みなさんこんにちは。
今日は「いつか故郷をくちずさんで」を紹介します。
●書誌情報だぞ!
アフタヌーン6月号で掲載された四季賞の大賞受賞作です。
作者の佐武原先生はTwitterにおられるっぽく、小さな漫画を載せておられたり同人作家として本を出されているようです。
アフタヌーン買ってねぇから読めんよ。って方はモアイで読めるのでお時間ある時にどうぞ!
また、アフタヌーン6月号は今月までコミックDAYSでよめますので、定期購読している方は今のうちに読んじゃいましょう。してない方はとりあえず漫画書いコスパ最強サブスクリプションですので、永年買った漫画は手元にないの嫌!って方じゃなければ入ったらみるのおすすめです。
●震災だけがテーマじゃない、人生の一大決心の瞬間を描いた漫画
アフタヌーン編集長の選評がすごく良かった。
物語の中で主人公の誕生から最期まで人生全部を描くことは不可能です。物語を描くことは、主人公の生涯の一部を抜き出す作業だと言えます。では、主人公のどこ生涯を抜き出すことが正解か。1つの答えは「主人公が人生最大の決断をした瞬間」です。どんな人間でも人生最大の決断をした瞬間には人の心を揺さぶるドラマがあります。その瞬間を描くにはそこに至る心の過程を描く必要があり、決断後のその人の行末を想像しうる余韻も必要です。それらが描かれていれば、その物語は主人公の人生の最重要な場面を描き切ったといえるでしょう。(後略)
太字の部分は僕がつけました。
つけちゃいたいくらいの頷きのある選評だったからです。
漫画の舞台は現代よりも科学技術が発展し、地震が発生する場所や規模を予測できるような近未来の日本。
中でも、限界集落に生きる少女が、自分の生まれ故郷で大規模な震災が予測された事によって町が廃れていく様を見せつけられながらその中で人生の一大決心をするまでの過程と、余韻というよりはその後の未来を感じさせるような予感に溢れた〆によって構成されています。
●自分は二度被災した
この漫画を読んで思うのは、自分が東日本大震災と熊本地震を経験した時に感じた色々な感情でした。
自然災害という人間では太刀打ちのできない、現象に対して、当時高校生、大学生だった自分ができたことは何もありませんでした。
小さなボランティアをしようと動いた事があったのですが、単純な水上の交通整理すらできませんでした。その結果、みんなの足を引っ張ってしまい、「もういいから」と優しくボランティアのメンバーに言われてしまい、そのままうな垂れながら今にも崩れそうなアパートの中で引きこもってしまった、という苦い思い出が僕にはあります。
この漫画の世界では、地震が起きる事場所や発生する時間について予測可能な世界であり、その為の保証や災害が起きた時に国が瞬時にリカバリーできるほどの対応力を保持しているような世界です。
つまり、地震が起きた時に一般人ができる事というのは「地震が起きる前にとっとと避難する事」だけであって、自分の土地を捨てる事ができない人達の事情など考えません。
というか、地震が起きると分かっている場所に止まるという事自体が国の方針からすればナンセンスな訳ですね。
また、自分の身に交通事故が起きると分かっているなら、それを避けない人間はいません。
多くの人間は限界集落ということもあり、村からどんどんさっていきます。この土地に残ったとして、いい事など一つもないと国から言われますが、しかしそれはわかりやすい論理として提示されるわけです。
あんたらの故郷に対する思い一つだけが残っていて、それが足かせになっているだけなのだから、とっとと避災しなさい。
そんな、何もする事が出来ない主人公の前に幼なじみが現れ、状況が一変していきます。
というところで今日はおわります!!
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