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「市場価値」の呪縛。

「自分の市場価値を知りたい」

そう言って面談に来られる方が、少なくない数いらっしゃいます。若い方に多いです。「市場」とか「マーケット」とか、神聖なる仕事探しに関する言葉としてふさわしくない気もしますが、求職者にとっての転職、企業にとっての中途採用においては、「求人と人材」は「需要と供給」の関係となっているので、そうした無機質な経済用語が使われるのも仕方がないのかもしれません。

市場価値とは平たく言うと、自身が転職する場合、他企業からどのくらいの評価を得られるのか、という話です。今いる会社でしか活躍できないのではなく、職場がどこであってもしっかり評価されるような働きをしたいという心意気は素晴らしいと思います。私も「需要と供給」の状況をよく知るプロとして、客観的な意見を述べ、キャリア検討の材料にしてもらいたいと常々考えています。

ところが、です。これが「市場価値を知りたい」から「市場価値を高めたい」という話になってくると、私は少々眉をひそめてしまうのです。「どの会社に転職したら市場価値を高められるか」とか、「30歳までに市場価値を高めなければならない」という考え方をする方がたまにいらっしゃるのですが、いつも何か引っかかる違和感があります。自身をより高く評価してもらうことの方に意識が行ってしまい、目の前の仕事に力を尽くすことが疎かになってしまっている精神状態に思えるのです。

オレがオレが、アタシがアタシがどれだけ評価されるのか。ベクトルが完全に自分に向いている人の思考パターンです。そんなことを気にするより、目の前にいる顧客やユーザーの幸せをどれだけ作り出せるか、目の前の仕事をどれだけ質の高いものにできるかに集中する方が、よほど自身の潜在能力を引き出せると思います。誰かのためになる仕事ができると思います。結果として市場から求められる人になると思うのです。

「あなたはすごい」と言われるより、「あなたのおかげで幸せになれそうです。ありがとう」と言われる方が何百倍も素敵だと思いませんか? 「自身の市場価値を高めなければならない」という呪縛はもう捨てましょう。「俺スゲー」の押し売りはやめましょう。ベクトルは内ではなく外に向けましょう。あなたがこの世にいたから、あの人の幸せが生まれた。仕事でそんな出会いが創出されたら、この仕事をやっていてよかったな、この世に生まれてきてよかったなと本気で思えると思います。

皆さんがそんな仕事に巡り合う機会をつくることに、残りのキャリアを捧げたい。生え際の後退が隠しきれなくなりつつあるおじさんではありますが、そんな思いで目の前の求職者と今日も面談でお話ししています。よかったら会いに来てくださいね(笑)。

(この投稿はnote開始前のブログで2019年6月16日に発信した内容です)

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