桜色選書〜4月のAoyama Book Colors〜
Aoyama Book Colors、それは青山ブックコミュニティーによる色々選書。本屋さんで出会い大切に読んできた本を、毎月メンバーのコメントと共に紹介します。
4月は春めいたピンクの装丁を集めてみました。桜色選書のはじまりです。
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1、川上未映子『あこがれ』(新潮社)
自分ではない何かになりたいけれど、それを実感するのは他でもない自分でありたい。大人になることを恐れ、待ち受け、その揺らめきすらも煌めいていた。あの頃、光といえば金色だった。エネルギーに満ち満ちた、少年少女の心の冒険譚。
装画:羽島好美
装幀:名久井直子
選書:松下大樹
2、文月悠光『わたしたちの猫』(ナナロク社)
文月さんの恋に纏わる第3詩集です。ずっと愛でたくなるような表紙の手触り。あとは恋のぽわんとしつつ心がきゅっとなるような感情を表現した、全項ピンク色のページが絶妙な配色だなとおもいます。
装丁:名久井直子
選書:Ayana Suzuki
3、マキヒロチ『スケッチー』(講談社)
「いつかティファニーで朝食を」で有名なマキヒロチさんの新作。
今までスケボーと無縁だった女性たちが思い思いに、スケボーにチャレンジしていく姿は、新しいことに取り組む新年度の4月にお似合いな気がします〜
装丁:大島依提亜
選書:Marina Kawamoto
4、渡辺保『歌舞伎ナビ』(マガジンハウス)
歌舞伎演目の解説本。役の気持ち、役者の腹づもりがしっかりと書かれていて、各演目のストーリーを楽しむ手引書になっています。昔の役者さん達の写真がたっぷり使われていて、歌舞伎ビギナーズでも歌舞伎ファンでも楽しめる内容です。
装画:歌川国芳
デザイン:寺田明子、坂田真
選書:松本優美
5、NHK放送文化研究所編『NHK 日本語発音アクセント新辞典』(NHK出版)
ご存知!日本語の音声表現に関わる人の強い味方、アクセント辞典!1943年の発行から、2016年で、6回目の改定。時代とともに変わりゆく言葉のアクセントのしんがりを務めている。
装丁:清水肇
選書:鈴木ユースケ
6、よしもとばなな『どんぐり姉妹』(新潮社)
インターネットでお悩み相談を始めた“どんぐり姉妹”。突然両親を亡くし、運命に翻弄されながら、大人になるのを急ぎすぎた姉妹の成長の物語です。双子のようにお互いを慈しみながら淋しさにじっと耐えてきたふたりが、未来に少し期待して、今を生きようとする姿に勇気づけられます。
ちょうど2020年を生きるわたしたちに向けたような言葉もありました。
“何日も外に出ていないと、頭の中の世界のほうが実際の世界よりも少しずつ大きくなってくる。気づくと思い込みの度合いがそうとうまずいことになっていて驚いてしまう。そうしたらちょっとだけ外に出て調整する、そのくり返し。今は身を低く、力をためて。そう思っていないと、やられてしまう。”
自分の心に心が負けないように、今を生きのびることだと思います。
装丁︰不明
選書:須藤妙子
7、エドワード・ゴーリー著/柴田元幸訳『華々しき鼻血』(河出書房新社)
いわゆるアルファベット絵本で、独特の言い回しとイラストで副詞を紹介。同じ体裁の『ギャシュリークラムのちびっ子たち』はひたすら悲惨なのに対し、この作品には呆気にとられるほどのユーモアが込められています。ゴーリーのチャーミングな部分が濃縮された一冊。柴田さんの翻訳も心地良いです。
装丁:不明
選書:松下大樹
8、エーリッヒ・フロム著/佐野哲郎訳『生きるということ』(紀伊國屋書店)
原題は「To have or to be?」。持つこと(所有)とあること(存在)の違いとは何なのか。40年以上前の本ですが、分断された、行動が制限された今だからこそ胸に来るものがあります。ピンクのドットの濃淡で背景に原題が浮かび上がる表紙もよいです。
個人的にはイギリスの詩人のテニソンの詩と、松尾芭蕉の俳句とを対比させながらこの概念を説明してるところが興味深かった……
装丁:不明
選書:Ayana Suzuki
9、村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス(下)』(講談社文庫)
言わずもがな村上春樹の羊シリーズの完結編。私は一時期この本にハマり過ぎて謎の分析ノートをつけていました。
装画:佐々木マキ
選書:藤井絵里子
10、矢沢あい『ご近所物語 完全版 1』(集英社)
わたしにとって、ピンクといえば間違いなくこれです〜
服飾デザイン科に通う実果子と幼なじみのツトムを取り巻く高校生の人間模様・恋愛模様を描いた作品。
矢沢あいの漫画はファッションや色使いが独特なので、何年経っても色褪せない…
この完全版、表表紙の内側がくり抜かれていてハートだったりフリルのようになっていたりこだわりが凄いんですよ…!
装丁:不明
選書:藤原有希
11、『ちゃぶ台 Vol.4「発酵×経済」号』(ミシマ社)
書店に直接本を卸すスタイルで出版業界の「原点回帰」を掲げるミシマ社が制作している雑誌です。
発酵デザイナーで有名な小倉ヒラクさんを筆頭にイラストレーターの益田ミリさんや文筆家の平川克美さんなど、豪華な著者たちのエッセイや対談がぎゅっと詰まった読み応えのある一冊です。
装丁:矢萩多聞
選書:横山えりな
12、志村ふくみ『一色一生』(講談社文芸文庫)
染織家・志村ふくみさんのエッセイ。
植物から染まる色への思い、そしてそこから展開する芸術観や人生観を
詞的かつ繊細なことばで綴られています。
装丁:菊池信義
選書:横山えりな
13、さわぐちけいすけ『人は他人 異なる思考を楽しむ工夫』(KADOKAWA)
人付き合いでのありがち?な悩みに著者がポップなノリとタッチで答えるコミックエッセイ。
一つの話が短くて読みやすく、みんなどれかは共感できるはず。
装丁:コードデザインスタジオ
選書:岸本晃輔
14、田口ランディ『アルカナシカ 人はなぜ見えないものを見るのか』(角川学芸出版)
UFOや神秘体験をどうして人は見てしまうのかを追った迫真のノンフィクション。
装丁:不明
選書:吉森雄作
15、つかこうへい『つかこうへい’98戯曲集』(三一書房)
98年当時のつかこうへいさんの戯曲。つかこうへいさんは口立て(しゃべりで役者にセリフを写す手法)で芝居を造る方だったので、あまり戯曲が残っていない。当時としても、戯曲集としては高かったのは覚えています。
装丁:不明
選書:吉森雄作
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それでは、また来月お会いしましょう。
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