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蕨(わらび)と        涙と価値観と


蕨をいただいた。
旬のものを口にできるのは幸せなことである。わざわざ山から取ってきていただいたもので、貴重で、この上なく贅沢な気がする。


蕨の季節になると
毎年思い出すことがある

結婚後、初めての夫婦喧嘩は蕨が原因だった。当時も蕨は貴重品だった。私も主人も好物で、この頂き物を大いに歓迎した。

いつもはビール党の主人も
この日は蕨に合わせて日本酒にした。

私は、筍と合わせて煮物にして、食卓に並べた。
まだ新妻だった私の
母親に聞きながらの力作だった。


ひと目見て、主人の顔色が変わった。

「もったいない。」

新妻の渾身の手料理は粉砕された。
ぽかんとした表情で主人を見ると、こう言われた。
「もったいない。煮ちゃったのか。台無しだなぁ。さっと湯がいて、鰹節と醤油をぶっかけるだけでよかったのに。」

私の実家は、そんな食べ方をしたことがない。

「こっちのほうが美味しいと思って料理したのに、、。。」

新妻は涙を浮かべて訴えた。

しかし、それ以来、我が家の蕨の食べ方は鰹節と醤油をかけたおひたしだ。

今、思えば貴重な二人の好物の貰い物をどう料理するか、仲良く相談すればよかったのだ。そして、一緒に料理する。
そうすれば、料理とともに
仲睦まじい新婚夫婦の出来上がりだ。


でも
 しかし
  だって

新妻の頭の中には、この言ってはいけないワード、ベスト3が炸裂していた。

価値観とか、好みとか、
どんなに親しくなっても
お互いに
全てが一致することは
あり得ない。

いや、あったらむしろ気持ち悪い。
そのことは肝に命じておかなければならない。

このほろ苦い教訓を
今もたびたび思い出す。

話して
 聴いて
  譲り合って
   
相手を尊重する

でも、我慢だけでもだめ。
譲れないところは、理由とともに相手を否定しないで、やんわり伝える。お互いを思いやる気持ちがマストなのだ。

わかってはいる。
わかってはいるが、、、。

好みや価値観の違いは
日常の些細な場面に溢れている。


例えば車を購入するとき
例えば家のリホームをするとき
例えば子どもの育て方
例えば外食で食べたいもの
例えばトイレの使い方
例えば洋服の趣味


今日、あさりをいただいた。
私の食べ方の好みはみそ汁だ。主人は酒蒸し。

さて、、、。


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