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カタチは変わっても願いごとは消えない


サクラチル

3年前

彼女はこの事実を受けとった
まだ15の彼女には重い現実だった
瞳から大粒の涙が
ポロポロとこぼれ落ちた

「誰にも会いたくない」
「死にたい」
何度もこんな言葉を口にした

彼女の世界はあまりにも小さい
どんな言葉も今は届かない

かける言葉は見つからず
やっと
かけた言葉は
はらはらと
地面に落ちた


そのとき

彼女に贈った詩


『紙風船』   黒田三郎作
落ちてきたら
今度は
 もっと高く
  もっともっと高く
何度も打ち上げよう
 美しい
 願いごとのように


願いごとは消えない

そこにたどり着くための道は
変わるかもしれない
願いごとの形が変わるかもしれない
ときには、小さく
しぼんでしまうこともある

でも
打ち上げるたびに願いごとは
空に舞う
この紙風船みたいに

願いごとは消えないよ

いつか彼女に
想いが届くと信じていた


サクラサク

3年後
彼女に舞い込んだ知らせ
3年間
彼女は懸命に願いごとを
打ち上げ続けた

願いごとは消えないよ

18の彼女は満面の笑みで
報告に来てくれた

届いていた

これからも
打ち上げることを
やめてはだめだよ
これから願いごとは形を変え続ける



今年も
合格発表の時期

おめでとう
おめでとう

歓喜のかげで
涙を流す人もいる

打ち上げ続ければ
願いごとは消えない

サクラチル

サクラサク

願いごとは儚い

打ち上げることを止めた瞬間
地面に落ちてしまう
だから
もっともっと高く
打ち上げよう

サクラサク

サクラチル

今年は
どれほどのサクラが咲いただろう


3年後
彼女に会いに行こう
咲かせたサクラはどうなっているだろう

紙風船を手に会いに行こう
 





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