石本陽「ことばの音」
佐賀大学の芸術地域デザイン学部の一期生、そして佐賀大学大学院地域デザイン研究科を2022年3月に修了した石本陽の個展を東京都文京区水道にある現代アートギャラリー aaploit で開催しています。
ことばの音は、佐賀大学大学院の修了制作展として制作されました。学部の教室をまるごとひとつ使ったインスタレーションは、壁一面にひらがなを書き出すものでした。壁に描かれたテキストは、文字が重ねられ、文章のように見えますが、意味を脱構築されており、もはや意味が通じないテキストを石本が自ら朗読していました。
目と耳から入ってくる意味を奪い去られた"ことば"、そのことばが脳内に響くとき、それは目から入ってきた情報なのか、石本の朗読によって耳から入ってきた情報なのか、思考に到達したことばの音は、もはや視覚と聴覚を超越しているかのように感じられます。
音がことばに変化することは、どういうことなのか。
石本は「音の中に無限の意味を求めるだけでなく、”ことば”には、むしろ
無限の意味を求めるために、自分のいのちや生を投入するひろがりであり場であろうとする力が働く」と言っています。
aaploit の展示では、<ことばの音>を再解釈した作品として展開しています。誰もが知る物語のことばをずらし、やはり、朗読しています。朗読のことばのリズム、意味が捉えきれないようにずらされた”ひらがな”ですが、目でテキストを追うとき、不思議と物語を理解してしまうのです。それは知っていることを引き出したと言えるのでしょう。音から引き出された思考が、意味を取り去られたテキストから意味を見出していきます。
日常を鑑みれば、会話の際に知っている単語の音を全て聞いているのか、お互いが共有しているコンテキストの量によって会話が成り立っているということに気が付きます。そうなると、言葉と音との関係性とは、なんとも危ういものであるだろう、と感じてしまうのです。
ことばの音の額装された作品が展示されていますが、反響の音、語りの音も提示されています。この展示空間ならではの石本の世界を是非、体験してみてください。
aaploit は文京区水道にあるアートギャラリーです。現代アートを扱いますが、様々なプロジェクトも企画進行中です。有楽町線江戸川橋駅の4番出口から徒歩9分程度です。