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1996_横浜のお嬢様part1.../23.オルセー美術館にて
登場人物
幸田(会澤)耕一 日仏食品 ビジネスサポート部 1970年(29歳)
幸田麗華 大介の長女 幸田グループ会社セダ 1976年(23歳)
幸田大介 幸田商事 社長 1940年(59歳)
佐藤愛子 幸田商事 社長秘書 大介の愛人 1966年(32歳)
ルシア・マルガリータ・ロペス ワイナリー勤務 1978年(18歳)
江川直樹 日仏食品ビジネスサポート部 部長 1950年(46歳)
白川萌奈 大手住宅会社 東京支店建築部門事務 1975年(24歳)
10月に耕一は、ベルギー・デンマークへ出張に行った。
今回は、果物等加工品、お菓子、パスタを中心に新しい製品の開拓と確認である。
パリ、ブリュッセル、コペンハーゲン、パリと移動した最終日に、パリのホテルに戻ると、ルシアから連絡があり、会いたいと言う。
耕一「良いけど、明後日の便で帰国するよ…」
ルシア「丁度、パリへ行く用事があるので、明日ホテルへ行くね…」
という、やり取りがあり、翌日朝、ルシアが訪ねて来た。
ホテルの近くのカフェで朝食を一緒に取ろうと言うと、
ルシア「奥さん、美人ね。ハーフなの?」
耕一「いや、曾祖父がフランス人…」
ルシア「やっぱり、今日はどうするの?」
耕一「オルセー美術館で印象派コレクションを見ようかと思っている…」
ルシア「私も一緒に行くわ、良い?」
耕一「良いけど、大丈夫なの?」
ルシア「うん、耕一が来るの待っていたの….」
耕一「..」
オルセー美術館は、印象派コレクションで、一度は見たいと思っていた美術館だから、今回は2日間ゆっくり見ようとしていた。
耕一「ルシアは美術館で絵はよく見るの…」
ルシア「マドリードのプラドは何回か見たわ…」
耕一「プラドも見たいね…」
ルシア「今度マドリードでプラドを一緒に見ましょう…」
耕一「そうだね…」
結局、オルセー美術館には、丸一日居た。名画が多く、やはり一日では見きれない。
耕一「やはり一日では、見切れないね。明日も見に来るけど、ルシアはどうする?」
ルシア「耕一が来るなら、私も一緒に…」
流石にここまでルシアに言われて何も感じない訳には行かない。
耕一「ルシア、気持ちは嬉しいけど。実は妻が妊娠したことが分かって、来年の春にはパパになるんだよ…」
ルシア「..」黙って、耕一の顔を、目を見ている。
耕一「だから、君の気持ちには、応えられない…」
ルシア「..、それでも良い。今晩は一緒に居て…」
耕一「..」
結局、耕一はルシアと一晩を過ごそうとした。
耕一は、結婚して初めて、妻以外の女性と一夜を共にしたが、ルシアの強い気持ちに負けたとも、海外で妻の目が届かないということが、そうさせたのだろうが、決して許されることでは無いと自覚はしていたが…。
あれほど、妻から厳しく言い渡されて居たにもかかわらずである。
その頃、横浜の山の手通りの幸田邸では、麗華が携帯電話の前で、何度もコールをしていた。横浜の午前5時はパリの午後10時である。
何か嫌な、胸騒ぎがしていた。耕一の妻とは、こうも落ち着かないものだろうか、今更ながら少し後悔した。悟るにはまだ早いのであろうか。
間違いなく、今頃パリのホテルで、耕一とルシアは一緒にいる、そして..。
すると、電話のコールが切れて、向こうから耕一の眠たそうな声が聞こえる。
麗華「もしもし、ルシアに変わって…」
唖然とする耕一、隣に寝ているルシアに受話器を渡す。
それが、2000年10月の出来事だった。