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中世を旅する人びと/阿部謹也 自宅の本棚から その13

1978年初版本が本棚にあった。多分大学3年の時に、大学生協の書店で購入したと思われ…自宅には他に「ハーメルンの笛吹き男」「中世の窓から」があった。サントリー学芸賞を受賞しているヨーロッパ中世史の名著である…久しぶりに手にとってみると再読したいと思った。

にぎりが2つ付いている大鎌で牧草を刈る男と、熊手で牧草を集める女。その後ろに砥石で大鎌を研いでいる男が見える。(シモン・ベニングの「フランドル暦」15世紀)

阿部謹也先生は一橋大学でドイツ中世史を専門とし同学長も務めていた。他に「ハーメルンの笛吹き男ー伝説とその世界」「世間とは何か」など著作も多い。

この本の概要について:ヨーロッパ中世というと魔女狩りや宗教裁判、火炙り、焚書など暗黒時代というイメージがある。でもこの本に出てくるのは庶民であり、旅人なのである。遍歴職人、牧人、放浪者、ジプシーなど旅に生きる人びとと、農民、粉ひき、パン屋、肉屋、居酒屋、渡し守など定住者の世界とが交錯する中世ヨーロッパの民衆を描き、その暮らしについて、実に詳しく書かれている。

盲目の乞食が犬に引かれて歩む。傭兵隊の兵士の隊列の彼方には吊り首にされた死体と、傍に車裂きの車輪が2本見える。(ヴェルナー・シュドラーの年代記、1514年ごろ)

初心者が勉強を始める第一歩として使うのに最適である。日本語で読める中世の市民や農民、旅人にスポットを当てた本は数少ない。その意味で、この本は実に貴重な一冊と言える。


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