小心者、イエベブルベ入門
SNSで見つけた「イエベブルベ」の呪文を唱えるきれいなお姉さんたち。
イエベブルベってなんなん?
調べていくと肌の色や目の色味など、生まれ持った色味からベース色を診断し、「イエローベース」「ブルーベース」の2タイプに分けるというもの。さらにベース色にのっとり、様々な色を4群に分け、そのうちどの群が1番似合うかを診断するという。
名付けて
"パーソナルカラー診断"
聞くところによるとパーソナルカラー診断はピンキリらしい。
平均的な価格相場は1万円〜2万円。
でも小心者で美容に疎い私は色の診断に1万の価値をまだ見出だせていない…
そこで、ネットで調べてみると百貨店の美容部員さんっぽい方が5000円ほどで診断を行っている場所をたまたま見つけたので予約してみることに。
胸を躍らせ百貨店の受付へ。
素敵な香水の香りがしそうな、麗しき百貨店のお姉さまがお出迎え。
高まる緊張感。
高まる場違い感。
やばい、なんかいけるかな、わたし。
個人情報に関する簡単なシートを記入し、通されたのはちょっと広い試着室のような鏡の間。
鏡の間に机があり、机の上に鏡がある。
鏡のマトリョーシカ。
そしてその横に並ぶカラー見本と色の布。
色の布はドレープというらしい。
ベース色とシーズンを見極めるために、ドレープを顔元にあてていく。
そのために着てきた衣類の色合いが邪魔になるため、美容室のようなケープをかぶる。
お構いなしに百貨店の緊張感が押し寄せる。
ちんちくりんな私が、白いケープに覆われてさらにちんちくりんに。
上品、高級から対極な姿。
小心者が加速する。
赤は赤でも4種類の赤が用意されている。
少しずつ濃淡が異なる同系色のドレープを顔元に順に当てていくと、色味によって顔の映え方が変わるらしい。
「あ、この色だと目鼻立ちが引き立ちますね」
「この色は顔のトーンが下がりますね」
「これは目のクマが目立ちます」
「これは顔の血色がよくなりますよね」
畳み掛けるお姉さま。
戸惑う私。
2色、3色と試すうちに、目が肥えるのか、洗脳なのか、確かにそんな気がしてくる。
「これは輪郭がはっきりしますね」
「これは小じわが目立ちます」
「確かにそうかも!」
乗り気になる単純なわたし。
ドレープはお姉さまの手によって、シュパッ、シュパッと入れ代わってゆく。
一瞬でドレープを抜き去り、次のドレープを顔元に見せる。
お姉さまの技が光る。
これはあれだ、フラッシュカードだ。
英語の授業とかで、カードを抜き去りながら発音させていくような、あのシュパ、シュパ感。
私の脳内は、「百貨店」「お姉さま」「鏡の間」ですでに埋め尽くされていたが、次の瞬間には英語の授業でカードをめくるお姉さまの姿でいっぱいになっていた。
妄想ははかどる。
どうでもいいことで頭をいっぱいにしているうちに、どんどんドレープを当ててのカラー診断は進んでいく。
そして時々、お姉さまはフェイントをかけるように「どっちの色が好きですか」と質問してくる。
似合う色じゃなくても堂々と好きな色を言えばいいとは分かりつつも、お姉さまが勧めてくれていた私に似合いそうな色合いの方を答えた方がよいかと色々と思案してしまう。
どきまぎは消えないまま、時間は過ぎていく。
しかし一方で、自分の顔色が良くなる色合いは確かに納得できて、なんとなくこの色は私に合うんだろうなと確信に変わっていく。
最終的に私がたどりついたのは
「イエローベース」シーズン「秋」
アースカラーとか、秋の収穫色のような、ざっくりいうと緑とかオレンジとか茶色が似合うらしい。
27歳にして初めて自分に似合う色が分かった。
似合う色が分かるって素敵だな。
特別な日に私は「イエベ秋」を味方にしていく。
パーソナルカラー診断を受けて、私は心のお守りを手に入れた気分になった。
でもお姉さまがフェイントのように聞いてくれたけど、好きな色はやっぱり好きだし、自分に合う合わないを乗り越えてご機嫌になれる色も大事にできたらいいなと思う。
パーソナルカラー診断の他に、未知の領域展開「コッカクストレート」など、なんか色々とまだあるらしい。美への道は険しい。
しかしながら、小心者にもパーソナルカラー診断の道を切り開いてくれたお姉さまと百貨店に心から感謝したい。
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