見出し画像

うちのシフォンケーキ

 家では、私が時々作るシフォンケーキがおやつになることがあります。

 シフォンケーキのいいところは、他の洋菓子に比べ、圧倒的に小麦粉と油分と糖分が少ないところ。うちの家族は脂っこいものや甘いものはあまり好まないため、レシピよりさらに砂糖の量を減らして作りますが、家族みな大喜びしてくれます。
 1ホール焼いたシフォンケーキは、あっという間になくなってしまいますが、頬張って思わず笑みがこぼれる家族を見ていると、美味しいものをシェアする喜びと楽しさを感じ、この上なく幸せを感じます。

 私が生まれ育った実家は、両親とも共働きだったこともあり、母が忙しかったのと、私がちょうど成長期に父が痛風など生活習慣病を患ったそうで、私の実家の料理は”できるだけ安くて量があるもの”、”食材がもったいないから残さないようにしなきゃいけないもの”、”空腹を満たすもの”、”病気にならないように制限するもの”というのがテーマの食卓でした。
 そのためか、私は食が細く、料理や食事することにあまり興味がありませんでした。
 それはそれで仕方ないことだと理解しています。

 しかし、それは違うのではないか、と強く感じるようになったのは、特に”デザートを食べる”、つまり”食べることを楽しむ”ということに目を向けるようになってからです。シフォンケーキが、そのきっかけだったのです。

 15年以上前、近所にできた洋食屋さんのデザートとしてあったのが、シフォンケーキでした。
 今でこそ時折見かけることもありますが、私が出会った15年前ごろには滅多に見かけないケーキで、私はその時に初めて”シフォンケーキ”というものを知りました。

 その洋食屋さんでは、セットにシフォンケーキがついていました。
 私はケーキなんて食べたくないんだけど、その時一緒に来ていた甘いものが好きな主人にあげよう、と思って食後にデザートを受け取りました。
 あまり好きではなくても、とりあえず一口は味見をしようと思い、一口食べた瞬間。
 その生地は想像以上に香ばしくて軽くてふわっふわで、あっという間になくなってしまいました。まるで綿あめのよう。残ったのは、添えられていた生クリームだけ。
 その初めての食感には本当に驚き、感激したのを今でも覚えています。(そのお店は料理の味もとても良く、もちろんそのケーキの味自体も、とても美味しいものでした。)
 
 それ以来、その洋食屋さんにはそのシフォンケーキを食べにいくために、ちょこちょこ行くようになりました。そこから、食べるのを楽しむ、美味しいものを追求する、ということを積極的にするようになりました。

 しかし数年後、そのお店は閉店。その頃ちょうど忙しく、しばらく行けないまま・・・。久々に行った時には店はすでになく、ネットで調べても痕跡もなく、どうやら閉店したらしい、ということだけしかわかりません。
 今でもとても残念に思います。

 それから数年の間、シフォンケーキは私の中で”幻の美味しいもの”と化していました。
 が、ふと時間が空いた時期に、”ないなら自分で作ったらいいじゃない”と思い立ちました。その頃にはインターネットもだいぶ普及し、ネット検索も気軽にできるようになっていたのも大きいです。

 最初に作ったシフォンケーキは、膨らみが少なく崩れたり潰れたりして失敗(シフォンケーキは少しコツが必要です)。でも、それから、あの時のシフォンケーキをなんとか再現したい、と、何度も作っているうち、自分好みに作り上げられるようになってきました。材料を変えてみたり、配合を色々変えてみたり・・・。
 私の中で、初めて料理に興味を持ち、作るのが楽しい、と思えました。
 料理でも特にお菓子は、1gの配合の違いで出来上がりや食感や味が全然変わってしまうんですよね。それがまた研究のしがいがあるところ。

 今では季節に合わせた材料を混ぜたり、トッピングを変えたりもして楽しんでいます。一番よく作るのは、中に刻んだナッツ類を入れたものです。

名称未設定2


 私が特にこだわっているのは、食感。
 生地がある程度しっかりしていると、使用している素材の味を味わうことが一つの楽しみです。が、うちのシフォンケーキの場合、フワッフワにさせるのと、型崩れしないギリギリの配合で作って、口に入れるとなくなってしまって、『なんかわからないけど美味しいだけ残ってる・・・』というような食感を目指して作っています。
 シフォンケーキの起源は、卵黄を使わないで似たような製法で作られる『エンゼルフードケーキ』だそうです。
 卵黄を使うと天使は食べられないかな、と思いながら、それでも天使がデザートとして食べても、また飛び立てるくらい、軽いフワッフワなシフォンケーキをこれからも研究して作っていきたいと思っています。

画像2

 私が初めて食べて感動したシフォンケーキとはきっと違うものだけど、何度も私が研究がてら(笑)作りまくったものを試食してきた家族にとって、最早”おふくろスイーツ”。
 初めは、「こるね~」「研究熱心だね~」と、呆れたように言っていたうちの家族ですが、それでも試食の度に幸せそうに頬張るので、余計に楽しくなってしまってやめられません。

 また、食について他にも様々なことを学んだおかげで、制限しなくても、我慢しなくても、体を悪くしなくても、美味しいものを食べて幸せになることができることを知りました。そういった面から見ても、シフォンケーキって優秀なんだ(材料やトッピングにかなり影響はされるものの)とわかり、最近改めて惚れ直しているところです。

 私の家族には、食べることの幸せと大切さを、シフォンケーキを始めとした手料理をとおして、理解してくれて健康に幸せにすごしてもらえるといいな、と考えています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?