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男は背中?



“お前そのままじゃ逃げ癖が付くぞ”

そう言われたのはまだ若干16歳、部活動を辞める際コーチに言われた言葉である。理不尽なことばかりが嫌になり、摂取と発散と蒸発を繰り返すだけの無機質な生活から当時好きだったスポーツを切り離し、何の願掛けかも忘れたミサンガも切り離し足を洗った。

高校生活は主に勉強とアルバイトに費やした記憶と隣の席の奴に笑い転がされた記憶。帰り道に男女で買い食いやボーリングやカラオケで桜花するなどの俗に言う青春じみたものは蕾すらも芽吹いちゃいない。
どこにでもいるだろうし、どこにでもいてほしい学生A君がこの僕である。取られるような取り柄も特出した特技も何もない。平々凡々。今書いてても虚しくなるまである。

そんな平々凡々な人間が憧れたのがバイト先の先輩である。地元のそこそこ繁盛している飲食店に中学の頃からの友人が誘ってくれ、教育担当に就いてくれたのがこの先輩。
二つ歳が離れた何もかもに気の利いた性格、誰からも愛される人柄、仕事に対して真っ直ぐな姿勢、見た目はかっこよく見えた、と思う。

その時の先輩は全てが輝いてみえた。後光がさす先輩の背中を追いかけ続け、自分もこんな人間になりたいと切に願った。
特別、先輩の言葉を覚えてはいない。楽しく話し込んだ記憶も忘却の彼方へいってしまった。
しかし、あの背中だけは覚えている。あの動きだけは覚えている。あの人の振る舞いだけは覚えている。

何事も言葉だけが全てではないんだと。
行動してみせるあの背中が僕にとっての全てである。
自分がどうあるべきか、どうありたいのか少し悩んだ時に先輩を思い出した。
あれがかっこいいんだ。あれがかっこいい生き方なんだ。まだまだ未熟な僕は路頭に迷う瞬間がよく訪れる。
そんな自分にいい先輩がいてくれた事を今でも感謝します。

今こうして記しているのは、この思いを忘れない為。
ヒトリゴトですから、悪しからずです。
そして、絶対逃げません。逃げたくなる時がきても逃げません。そんな背中は見せません。

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