断片1
一回目の緊急事態宣言のころ
私は二回生に上がったばかりで、まだ危機意識とかも低かったから、よく夜中の二時とか三時くらいにのそのそ外に出て散歩をした。
歩くのもすぐ飽きるからそんなに遠くには行かなかったけど、星を見ながらだらだら歩いたり、そのまま夜が明けるまでどこかにぼーっと座ったりしていた。
だんだん青くなっていく空を見ながら、何も持っていないけど ただただ時間だけがある、という感覚を知った。
長いリールでつながれた先の自由みたいな、
ぽかあんと知らない場所に投げ出されているわけでもなく、帰る家もあるけれど、
でも何者でもなくて誰も私のことを見てなくて、
そういう中途半端な自由が恨めしくも心地よかった。
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