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へろへろ…ニューヨークひとり旅 入国編

最大の難関であった入国編である。難関と言っても別に頭を使って窮地を切り抜けた〜とかそういう展開ではない。精神的に一番キツかったポイントである。とは言えこれを書いたらもうあとはごく普通の旅行記なので今回で最終回でいいかもしれない。

前回、出国直前にエスタの申請をし、バスの中でさらに公式サイトからエスタを申請し直した私は、心臓バクバクで入国審査場に辿り着いたのであったが…


早くも入国審査!
やっと公式サイトを探し当てて、エスタを申請した10分後…もうバッファローの入国審査の場所に着いてしまった。トロントはそもそもアメリカとの国境に近い都市である(ナイアガラの滝の近く)。不機嫌なジーニー的運転手さんに促され、乗客全員バスから降りる。私はベトナム人のお兄さんと一緒に一番前の座席に座っていたので、入国審査を受ける順番も早い。エスタを申請した2つのサイトのステータスをチェックすると、どちらもいまだに「承認待ち」である。心臓はバクバクしている。
あるサイトによると、「「入国審査の時に、ビザかエスタはあるか?」と聞かれて、「あります」と答えたら、特にそれを詳しくチェックされることはなく、そのまま通れた」とあった。本当だろうか。「あります」と答えてとりあえずここの審査を通過し、ニューヨークを旅行している間に承認されればOKなノリで行けるのだろうか。しかし、私は嘘をつくことができない。嘘をつくのが苦手すぎて、その罪悪感が顔に出てしまう。人生で嘘をついたことはもちろん何回かあるのだが、その度にどうしようもないしんどさに苛まれた。「え!エスタって申請さたらそれでいいんじゃないんですかぁ?承認ってステータスがいるんですか!?」と白々しく「嘘はついてない。知らなかっただけ!」の体をとってみるか…やはり無理がある気がする。とはいえ、高い金を払ってここまで来て、入国できずにトロントへ帰るというのも辛い(というかどうやって帰るのかわからない。)そんなふうにぐるぐる考え事をしているうちに私の順番が来てしまった。

窓口の人が私のパスポートと指紋の登録を求める。パスポートを差し出し、機械に指を当てて指紋を認識してもらう。「何しにニューヨークに行くの?」「観光です。」「何日間?」「3日です。日曜日の朝にバスに乗って帰ります。」「どこに泊まるの?」「ここのホステルです。」(住所を見せる)ここまではスムーズである。このまま、窓口の人が(ニューヨークに行くんだから当然エスタくらい申請してるよな)と思い込んで質問せずに通してくれないだろうか・・・!と願っていた。しかし

窓口の人「ビザ…は無しか。エスタは申請した?」

やはり聞かれてしまった。ここで、英語がわからなかったフリをして「はい!(?)」と元気よく答えて通してもらうこともできるのかもしれないが…

私「はい、申請しました。」

嘘は言ってない。申請はしたのだ。まだ承認されてないだけだ。しかし、この「申請しました!」に「申請して承認された」まで含んで解釈してくれれば…そして、明日の昼、ニューヨークに着くまでに実際に承認されれば…

窓口の人「うん、で、承認はされた?」

聞かれてしまった……ここで嘘をつく度胸はない

私「承認待ちです…;;;」

窓口の人「え!?マジで!?じゃあだめだよ!?えええ!?」

ですよね…ですよね…すいません…の気持ちであった。いや普通に考えて不法入国なのだ。そもそも嘘をつくとかそんなことしていいわけがなのだ。ああ、このままどうなるのであろうか…!!!!!

窓口の人「もう君の対応は後にするからさあ、ちょっと端で待ってて!」


失意
私はまた端に避けて、他の乗客たちが入国審査を通っていくのを見ていた。その間、何度もステータス画面をチェックし、その度に「承認待ち」の文字を確認した。普通に考えて、私はこのままバスに乗ることはできないだろう。申請したのが10分前なのだから、1時間かかったとして、間に合わない。きっとここに残されて、新しくトロント行きのバスを予約し、明日の朝か昼か夕方か、ここを通過するバスに乗せて帰宅することになるのだろう…陸路とか空路とか関係なしに、とりあえずエスタを申請しとけばよかった・・・!すごく後悔した。「陸路ならいらないなら申請しなくていいか!」ではなくて、たった20ドルぽっち、事前に申請しとけばよかったのだ。そしたら今頃大手を振ってバスに乗ってルンルン気分でニューヨークを目指せていたのだ。今回の旅は、もう最初から何もかもがグダグダであった。そんな中でせっかく準備をして気持ちを高めていざ本番!でやっぱりポシャる。私は何をやってもダメなんだ。全部自分のせいだから他人を恨まなくていいからそこだけが救いだ。いつか笑い話になればいいや。しかし現段階ではしんどすぎて立ち直れない。

私はスマホを取り出して、「損したお金 金額」と検索した。自分以外にも大金を損した人の話を読んで落ち着こうと思ったのだ。今思うとつくづく自分は性格が悪いな〜!とは思う。でもその時は、「これくらいの金額の損、世界的に見ればよくあることだよ!」という気持ちになりたかった。検索をすると、「今めっちゃ落ち込んでます;;皆さんの今までで一番損した金額も教えてください!」「しんどすぎるので、ここで書いて笑い話にさせてください!」みたいなタイトルのページがたくさん出てきた。それだけでもなんだか元気になった。何件かサイトを見てみると、ギャンブルで、FXで、数百万消えたとか、個人の都合で航空券キャンセルしたけど契約上の問題で返金されなかった、とか、普通にお金落としたとか買ったばかりの最新のパソコン壊したとか色々なしんどさが出てきた。読んでるうちに「え!?マジで!?」と引き込まれ、「私も頑張らなきゃな…(?)」と謎の感情が湧いてきた。

奇跡!
しばらくスマホを眺めて心を落ち着けていると、バスの乗客の入国審査が全て終わったようだった。あと数分でバスは出発するだろう。もう私は流れに身を任せることにした。最後に、もう一度だけ、ステータスを確認することにした。すると、画面に「承認済み」の文字が。え!????申請してからまだ30分である。本当に!???もう一度確認し、念のため翻訳にかけてみたが、やはり「承認済み」である。私は震えた。私が宗教に入っていたら「神はいらしたのだ!!!!!!!」とさらに信仰を深めただろう。

窓口の人「さてと…残るは君か…どうしたもんかな…」

私「あの!申請!通ってました!承認されてます!」(画面を見せる)

窓口の人「おお〜間に合ってよかったね!?本当はさ、出発の3日前には申請しとかなきゃいけなかったんだよ!?」

私「本当にすみませんでした!私の落ち度でした!ご迷惑おかけしました!」

私の心臓はやはりバクバク言っていた。ちなみに、申請が通っていたのは公式サイトの方であった。さすが公式…30分で通るとは…感謝しかない。


本当に出発!!!
私は入国審査を通過し、荷物のチェックをしてもらい、外に出た。まだバスは停車していた。運転手さんが私の前に現れた。

私「あ、あの!エスタ承認されました!」

運転手さん「それで…あんたはどこ行くの?」

私「え!?」

この質問に私は凍りついた。バスに乗せてもらえないのだろうか!?せっかく申請通ったのに!!

運転手さん「だーかーらーあんたの目的地はどこなの?」

私「えっと…可能ならば…ニューヨー…」

運転手さん「イェーーーー!!ニューヨーク!!!さっさとそれを答えなきゃぁ!!!ニューヨーク行くんでしょ!??ほら切符!これ持って!早くバスに乗った乗ったァ!!!!!」

私「はいいいい!!!!!!アリガト!!!!!!」(動揺)

テンションの変わり方に目が点になったが、辛うじてテンション高めに返事をした。ジーニーだ…と思った。私は切符を受け取り、バスに乗り込んだ。


バスが動き出す。運転手さんのアナウンスが車内に響く。

「このバスはこれからニューヨークに向かいます。到着予定は明日の午前10:30。照明を落とすから携帯はあんまり使わないように!マナーモードにして音を一切出さないで!電話なんか絶対にしないでよ!Thank you!」

これで、安心して朝まで眠れる…
私はゆっくりと目を閉じた。


1時間後

運転手さん「○○に着きました!全員荷物を持って降りて降りて!!!」

寝ぼけたまま私はバスを降りた。そこは、おそらくバスセンターで、たくさんのバスが駐車されていた。建物何に入ると、各バス会社のカウンターと、ベンチがたくさんあった。待合室みたいな感じだ。運転手さんはさっさとカウンターの中に入っていった。私は何がなんだかわからす、ベンチに座った。乗客はそれぞれ家族や友達と会話をしたり、売店でお菓子を買ったりしていた。おそらく運転手さんの休憩か、交代をする場所なのだろう。ぼーっとしてバスに乗り損ねてしまわないように、私は気を張っていた。この時点で深夜1時であった。途中、他の乗客がセンターの外に出たりして、なんだか人数が減ったような気がした。私の知らないうちに、みんな別のバスに乗り換えて出発した…とか…ないよね!?とすごく不安になった。私以外の人は正規のルートを知っていて、既に正しい道を行っているのか!?だから数がだんだん減っていくの!?ハンター試験かよ!?一体ニューヨークに行くまでにどれだけの関門があるんだ!?とメンタルがまたおかしくなった。

午前2時半。
乗客が急に一つのゲートの前に並び出した。私も周りを見ながらそれに倣った。どうやらやっとバスが出発するらしい。1時間以上もこのセンターで待たされていたのか…
私たちが乗ってきたバスとは別のバスに誘導され、そちらに乗り込む。運転手さんも変わっていた。他の乗客の人たも混乱していたみたいで、「これはニューヨークに行くよね!?」と確認していた。ほとんどの人は大きい荷物(スーツケース)を前のバスの下に積んでいたので、それを受け取ってから新しいバスに移動するので、ちょっと手間取っていたようである。日本にいた時、何度も夜行バスを利用したが、こんなにスリリングなのは初めてである。

座席に座り、今度こそ、本当に、ニューヨークに、行ける、よね!?と心の中で叫ぶ。バスの照明が落ちたので私も眠る準備をする。その後、何度かバスが停まっていたが、トイレ休憩らしく、全員が降りる必要はなかった。私はうつらうつらしていて、あまり熟睡はできなかった。

そんなこんなで翌日午前9時半、バスはしっかりとニューヨークに到着した。ここではもう何もチェックされることなどなく、バスを降りた瞬間に自由であった。本当に、ニューヨークにきたのだ…

私は、次回は絶対飛行機を使って来よう…と心に誓った。


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