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心療内科
暑い日が続いていた
そんな中、黄色い尖り屋根のその病院は、
細々と診療を続けていた
中年の婦人ミスブラウンが、
診察に来た。
「初めてだね。今日はどうしました」
医師は聞いた。
ミスブラウンの瞳には涙が薄っすらと浮かんでいた。
「あの、出て行ってしまったのです。」
「あ、家出か、誰じゃ」
「くもこです」
「珍しい名前じゃな、お嬢さんかな」
「はあ、いえ」
「ほう、親戚の方かなんかの?」
「あの、昨日までは壁にいて話かけると親身に私の話を聞いてくれていたのです」
「なに?壁?」
「はい、その・・・蜘蛛なものですから。」
医師は絶句した
「それで蜘蛛子か」
医師は、呟いてから、少しの間黙った。
そしてまた、ミスブラウンを見て
優しい瞳で言った。
「今日は蜘蛛子くんの話をじっくり聞くよ」
(終わり)