只の日本人、茶漬けを食う(素)
――茶漬けを食うか。
草薙は思った。
そうだ茶漬けだ、茶漬けを食うのだ。
草薙は白米をよそった。
白米に茶をかける。
湯気がたった。茶の湯が米の器を満たしていく。
器が満たされる。
白い米が茶の湯に浸かった。
仄かに、爽やかな、雰囲気。
(茶漬けだ)
米と茶だけだ。
お茶漬け海苔はない。
鮭も、塩昆布も、海苔もない。
米と茶、古来日本から在る食材のみ。
だが――
(それもまた良し)
草薙は食べる。
白い米に熱い茶をかけただけの飯を
茶漬けを――食べる。
(うまい)
透明な味がする。
(いいな)
草薙はこの透明さが好きだった。
飯を口に運ぶ。
味は薄い。
だがその薄さは爽やかさだった。
食は進む。
透明な日本を味わう。
そして――
「うまかった」
草薙は茶漬け(素)を食べ終えた。
透明な食感。
単純な食事だった。
だが――
(――それもまた良し)
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