只の日本人、鶏の唐揚げを食べる(塩)
(ごちそうだな)
草薙は食べ物を見た。
――鶏の唐揚げ
(ごちそうやないの……)
そう思う。
ごちそうやないの。
(唐揚げやないの……)
高級な肉ではないだろう。だがそれでもごちそうだ、なんせ唐揚げである。
草薙の感覚は庶民であった。
肉だ!
唐揚げだ!
(さて……)
一つ考える事があった。
(何をかけて食うか……)
唐揚げに何をかけるか、である。
塩をかけて食うか?
マヨネーズをかけて食うか?
醤油をかけて食うか?
ソースをかけて食うか?
(今日は……塩だな)
今日は塩をかけて食おうと、草薙は思う。
理由は無論、なんとなく。
(かけるか!)
適当に置いてある塩を適当にかける草薙。
無造作である。
(うまそうだ)
焦げ茶色の鶏肉のからあげにかかった白い塩。
肉に塩をかける。
それは昔から親しまれた食べ方。古来の調理法。
素朴で簡単な食べ方。
草薙が好むものである。
草薙は、塩がかかった鶏の唐揚げを手に取り口に運んだ。
(うむ……)
――うまい。
ジューシーだ。
パリッとした食感も小気味良い。
肉汁がいい。
肉の味がいい。
肉にしみた塩がいい。
(いいな)
肉を食べると元気がでてくる気がする。
草薙の食生活は、庶民より質素なものが多い。
故に、たまに食べるちょっとした贅沢はおいしく感じる。
(うむ)
食べる。
塩が染みた鶏の唐揚げはいい。
食が進む。
そして……
(うまかった)
鶏の唐揚げ、よかった。
ごちそうであると思うのは、いささか庶民感覚過ぎるかもしれない。
だが――
(それもまた良し)
草薙は鶏の唐揚げ(塩)を食べた。
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