只の日本人、梅干し茶漬けを食べる(梅干し丸々一個)
――いただきます
草薙悠弥は手をあわせた。
今日は――梅干し茶漬けだ。
市販の茶漬け海苔によるものではない。梅干しを丸々一個入れる古式ゆかしき梅干し茶漬けだ。
市販の梅茶漬け海苔も草薙は大好きなのだが……梅一個丸々入れるのも好きである。
熱々のお茶がある。
椀の中には、ほかほかの白米がある。
米は今日もうまそうだ。
そして茶も良さそうだ。
(茶漬けをつくる)
素の茶漬けだ。
草薙は白米の椀の中に茶を入れた。
トクトクトク。
湯気が沸き立つ。
白米にお茶がつけられ、茶漬けができる。
(このままでもいいのだが……)
素の茶漬けを食うのは好きだ。
このままで食べてもいい。
だが、今日は
(梅茶漬けだ)
梅を丸々一個入れるのだ。
梅を茶漬けの中に入れる。
茶漬けの中にうっすら梅の朱がひろがり。
赤い梅の果肉が茶漬けに溶け合うようだった。
箸で茶に泳ぐ梅の果肉をちぎった。
茶漬けと梅の果肉を同時に食べる。
茶漬けの透明な味に梅の酸っぱさと仄かな塩気が混じる。
(和食だな)
そう、これは和食だ。
古来からの日本の主食白米。
これまた古来から親しまれている日本の茶。
そして古来から親しまれている梅干し。
簡素だがそれゆえに多くの日本人が食べてきた食といえるだろう。
梅茶漬けをかきこむ。
うまい。
梅茶漬けをかきこむ。
うまい。
お茶で暖かくなった梅を頬張る。
茶に混じる梅の味が良かった。
梅干しの茶漬けは実に良かった。
うまかった。
――ごちそうさまでした。
草薙悠弥は梅干し茶漬けを食べた。
梅を丸々入れた梅茶漬け。
簡素な和食。
だが――
――それもまた良し
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