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只の日本人と稲の天日干し

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――時刻は昼。

――場所は田。

草薙悠弥は天日干しを見ていた。

稲があった。

稲がまとめて干してある。

(はざかけだな)

はざかけは稲を天日干しする古来からある手法である。

基本、稲狩り後に行うもの。

田に稲を天日干しするための「はざ」を立てる。

そこに稲をまとめ、干すのだ。

日の光、自然の風、流れる時間が、米の良さを引き出す。

(ふむ)

はざかけされた、稲の天日干しの光景。

その自然風景が海のように広がっている。

(良い)

天日干しの光景を見て草薙は思う。

茶色の稲がたくさんまとまっている。

一面に広がる稲のはざかけ、天日干し。

その光景を良いと、草薙は思った。

(……調和だな)

自然に寄り添った調和ともいえる。

古来から続く稲と人との対話のようにも思えた。

少し大げさだが、これらの営みがもたらした恩恵を考えればあながちそうでもしれもないかもしれない。

(綺麗だな)

そうも思う。

稲は食料である。

稲は生活を支えるものである。

それが自然に寄り添い視界いっぱいに広がっている光景を綺麗に思う。

(稲は日本の生活を支えてきた)

稲は多くの元となる。

米、ぬか、わら、もみがら。

様々な用途に使えるのだ。

その稲をはざかけし、天日干しする。

その素朴な光景をきれいに思う。

生活、営みのための光景。

ある種の機能美といえるかもしれない。

只の稲。

只のはざかけ。

只の天日干し。

だが――

それもまた良し。

風が吹いた。

太陽に向けて、草薙は歩き出した

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