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【エッセイ】転職サイトに個人情報の削除依頼をした結果

現代社会は、ヒト、モノ、カネ、そして情報が資源として活用されています。たとえば、ヒトを扱う人材派遣会社、物流を司る商会や運送会社、カネを扱う銀行、そして情報管理を専門とする企業があります。

そして社会では(個人)情報は売買される時代です。それゆえにランサムウェア等、まさに情報(端末)を人質にして金儲けする集団が存在するのです。

企業のリスク管理部やセキュスペがこの危険性を把握していても、個々人がこの事を十分に理解が浸透しているかというと難しいところです。だからランサムウェアが流行るのですが……

ところで、個人情報には厳密には2種類存在するのをご存知でしょうか。

ひとつは個人情報です。そしてもう一つが要配慮個人情報です。要配慮個人情報とは、既往歴や前科前歴などの個人情報の中でも極めて慎重な取扱が求められるものです。

わたしの場合、最も意識する要配慮個人情報は精神障害に係る情報(障害者手帳の有無)です。

既往歴として、わたしは花粉症とアレルギーがあります。これも厳密には要配慮個人情報ですが、世間話で他人に躊躇なくカミングアウトできます。しかし、障害者手帳を持っていることは無闇矢鱈に言いません。そもそも言いたくありません。

だから行政サービスを除いて民間サービスで障害者手帳の情報の開示、提出は極力避けたいです。背に腹はかえられぬと映画館や博物館で手帳を使いますが、提示する都度抵抗感を覚えています。

ただ障害者雇用をする上で、転職サイトや転職エージェントに障害者手帳の写しを提出しなくてはなりません。これは致し方ないのですが、転職サイトによってはGoogleフォームに写しを提出させるところもあり不安です。もちろんGoogleフォームはSSL暗号化(※覗き見防止フィルターみたいなもの)を採用しており一定の対策をしてはいますが、脆弱性やリスクは少なくないので正直心配になります。

なので、わたしの対策方法は利用しなくなった障害者向け転職サイトでは個人情報の削除を依頼するようにしています。

皆さんは規約の全文を読むでしょうか? 実は規約を読むと退会後の個人情報の取扱は企業により様々です。とりわけ就活・転職サイトの場合には個人情報を削除しない場合が多いです。理由としては職業安定法に拠ります。

第三十二条の十五 有料職業紹介事業者は、その業務に関して、厚生労働省令で定める帳簿書類を作成し、その事業所に備えて置かなければならない。

e-eov法令検索

ただし、ここで保存が必要なのは帳簿に記録する氏名等であり障害者手帳の写しについては保存する必要性はないと判断できます。ここは弁護士に確認済みです。法的根拠としては、個人情報保護法にあります。

第十八条 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。

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転職サイトを退会した段階で、障害者雇用の応募に際して必要な障害者手帳の写しを企業が利用する目的は無くなります。そのため「利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない」という根拠から、企業に対して同法第三十五条により利用停止又は消去を請求できます。

第三十五条 本人は、個人情報取扱事業者に対し、当該本人が識別される保有個人データが第十八条若しくは第十九条の規定に違反して取り扱われているとき、又は第二十条の規定に違反して取得されたものであるときは、当該保有個人データの利用の停止又は消去(以下この条において「利用停止等」という。)を請求することができる。

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実際のところ、法的根拠を挙げつらうまでもなく、個人情報管理部門に削除依頼を連絡することで職業安定法で定められた個人情報の保管を除き、個人情報の削除依頼には応じてもらえます。なので要配慮個人情報である障害者手帳の写しも削除依頼するで削除してもらえます。実際にわたしも依頼をして必要書類を提出して数日後に削除完了の連絡をいただきました。

個人情報は資源である一方で漏洩した場合のリスクが大きいにもかかわらず、なぜ多くの転職サイトは削除しないかと言うと、職業安定法により職業安定法により個人情報を保管する必要があり、いちいち削除するデータと残すデータを分別するのが手間だからだと思います。だから依頼があれば適切に対応するが、なければファイルをサーバにそのまま保管しているのかもしれません。

わたしは極度の心配性なので削除依頼をしましたが、障害者手帳の写し等の要配慮個人情報の漏洩が就活・転職サイトで実際に起こった話は管見の限り見たありません。なので実際には削除依頼しなくてもほぼほぼ問題は起こらないのだと思います。起こる確率は交通事故に遭う確率と同じかそれより低い気がします。

ただ今回ここに書いたのは、もし同じような事を心配している人がいれば、個人情報の取扱については削除依頼などの対応策があることをお伝えする事で悩みの解消に繋がればと思ったからです。

最後に注意書きとして、今回の件についてはあくまでも個人の一事例であり、全てに適応可能かは法律の専門家ではないのでわかりません。またカスタマーハラスメント等、様々な理由で企業側が削除依頼に応じない場合もあるそうです。

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