星に恋をしてしまった話
ある日、夜道を散歩をしていたら知らない場所まで来てしまっていた。
目の前には橋向が見えないほどの長い橋がある。
古くからあるように思えたその橋に勇気を振り絞って1歩を踏み出すと橋は軋む音を立てた。
石橋を叩いて渡るじゃないけど、恐る恐る前に進む。
手摺に捕まっていないと落ちてしまいそうで怖かった。
少し下を覗くと巨人の寝息のような風が下から吹き上げてきた。
この橋を渡ろうと決意した自分を恨んだが、後戻りしたいかと言われたらそうでもないので取り敢えず進む。
30分程歩いただろうか、まだ橋は続いている。
向かい側から人が歩いて来る気配もない。
後ろを振り返ってみたが橋を渡る前に居た場所は当然見えなくなっていた。
歩き疲れたので少し立ち止まって、ふと空に目を向けた。
その瞬間、たまたま目に入ったひとつの光に目を奪われてしまった。
一目惚れだった。
私の瞳に映る彼は他の誰よりも輝いて見えた。
とても美しかった。
手摺に身を乗り出して手を伸ばしてみたが届くはずもない。
数分眺めた後、何とか自分の中で区切りをつけて再び歩き始める。
しばらく歩くと橋の向こうに森が見えてきた。
やっと終わりが見えてきたという安心感と森なのかという残念な気持ちが複雑に絡み合う。
橋を渡りきると疲れがどっと出た。
地面に座り込み少し休んだ。
周りは動物の居る気配がしないほど静かだった。
耳をすますと遠くの方から水の流れる音がするのが分かる。とても心地よい。
ふと我に返り、橋を渡りきったものの何もしないままその場に留まり続けて朝日が昇るのを待つのもつまらないので、取り敢えず森の中に民家があるか分からないが探すことにした。
木漏れ月が照らす道をひたすら歩く。
民家はなかなか見つからない。
更に奥へと進むと微かな光が見えてきた。
私は早く安心したいという気持ちを胸に抱いたまま小走りで光の方へと向かっていたら森を抜けた。
目の前には橋の上で見た彼が私を待っていてくれていた。
私は嬉しい気持ちを抑えられず、彼がいる空に飛び込んだ。
しかし彼に触れたのは、ほんの一瞬だった。
触れた後は空が歪み、周りにいた星々も散ってしまった。
私の中に彼と同じ世界のものが流れ込んできて、それは私を満たしていく。
何が起きたか分からないまま私は必死に藻掻く。
私のいる世界からひとつの光が滲んで見えた。
彼であると分かり安心し、私は藻掻くのを止めた。
次第に意識が遠くなり私は宙に漂った。
静かになった空に再び星々が集まる。
私も星になれたかな?
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