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第1章 未知の敵

1615年、大坂夏の陣。豊臣を打倒し、天下統一を成し遂げるべく、徳川家康は大坂城に向けて進軍していた。しかし、初陣を迎えた家康の孫・徳川魁人(かいと)は、城に翻る赤、白、青の見慣れない旗に不穏な気配を感じ取っていた。それは未知の力が秘められた旗であったが、徳川軍にはその意味がわからなかった。

異国の砲撃

突如として大坂城から轟音が響き渡り、徳川軍の前線が粉砕される。豊臣が密かに入手した最新式の大砲が徳川の兵士たちを次々となぎ倒していくのを目の当たりにし、魁人はその強烈な威力に恐怖を覚えつつ、剣を握りしめて戦い続けた。

家康もまた、敵の猛攻に対して進軍を続ける決意を固めるが、その最中に、老将・本多正信が敵の砲火に巻き込まれ、重傷を負い、陣に運ばれてきた。正信の体は血に染まり、息も絶え絶えでありながら、家康と魁人のもとでかすれた声を絞り出した。

本多正信との会話

魁人が正信のもとに駆け寄ると、正信は魁人を見上げ、震える声で言った。

「魁人…この砲撃の威力、尋常ではない。あれは…我らの知る火縄銃などとは次元が違う。まるで…鬼神の如き破壊力だ…」

魁人はその言葉を聞き、戦場で感じた恐怖が再び胸を締めつけるのを感じた。

「正信様、これは一体どういうことなのですか?豊臣が、こんな武器を手に入れているとは…」

正信は血の滲む唇をかみしめながら、苦しげに答えた。

「どうやら…異国の力が豊臣に加担している。この砲火の前では、我らの剣や槍など通用せぬ。我々が挑むのは、ただの豊臣だけではないのかもしれぬ…」

魁人はその言葉に圧倒され、目の前の戦況の厳しさを痛感した。その時、家康も正信のもとに駆け寄り、彼の顔にはかすかな動揺が浮かんでいた。

「正信…お前の言う通り、この武器は異国のものか…」

正信は血の気の失せた唇を震わせながら、最後の言葉を絞り出した。「家康様…今ここで無理に攻めれば、我らは全滅します…どうか、一度…退かれることを…」

その言葉を最後に、本多正信は目を閉じ、静かに息を引き取った。

恐怖の退却

正信の死がもたらした恐怖とその警告は、家康と魁人の胸に深く刻み込まれた。敵の武器がどれほど恐ろしいものかを知った家康は、戦局の維持が不可能であると悟り、やむなく撤退を決断した。魁人も、初めての戦場で味わう敗北の苦しみと共に、この異国の力の恐ろしさを忘れることができなかった。

この敗北は、徳川家にとって深い傷跡を残し、豊臣との戦いが新たな局面へと移行する運命を予感させた。異国の力に怯える徳川軍の退却は、戦乱の長き闇の始まりを告げ、魁人にとっても忘れがたい恐怖の記憶となった。

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