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やがて野となれカベとなれ


「こっちに来なさい」


厳格そうなお父さんが呼びかける。


「はーい」


すこし後ろ髪惹かれつつも、素直に従う子供。



ショッピングセンターのキッズスペース、児童館、公園。


あらゆる公共の場で見かける親子のやり取りだ。


その親子のやり取りを見て少しため息をついた後、心の中にすっと見えない壁が建った。


あっちとこっちを分ける壁。


何度呼んでも遊びをやめる事の出来ない自分の子供を尻目に親子の姿は視界から消えていく。


何度繰り返すんだろう、この状況。


ため息の後に自分の中の負の感情が頭をもたげてきた。にゅるにゅるととぐろを巻いた蛇みたい。


同じような年の頃の子に、同じような日本語で話しかけたはずなんだけどな。
何でこうも反応が違うんだろう。
きっと違う惑星の住人なんだ。



散りやすいくせに過集中。
調整のつまみは最小と最大。


特徴なんて分かりきっている。だからといって四六時中、対応できる訳もなく、次の用事が待ってるのに、この年齢になってもまだ察することが出来ないのかと、また負の感情がどっと押し寄せる。


ほんの些細な事だけど、この些細ないら立ちがまた見えない壁をまた少し高くする。




帰るそぶりも見せずにどこ吹く風の子供は遊びに熱中している。


早く帰りたいんだけど。


子供を呼ぶ語気が少しだけ強くなった。


 



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