イケメン巨根おじさんについて4〜飲み会編〜チェーン店内での喫煙が禁止された今。
参加者5名中5名全員が喫煙者という、令和では珍しい喫煙率100%の飲み会だったが、
今時のチェーン店の居酒屋では、飲みながら煙草が吸えない。
「どうする?次、行く?」
店の外の喫煙スペースの灰皿の前で、5名全員がゾンビのような顔で失われていたニコチンを摂取していた時、でくのぼうさんがそう問いかけた。
『つーか、ちょっと良い声で言うのやめてもらっていい?月9?少女漫画気取り???アラフォーだろ???テメー。』
と、今の私なら心の中で盛大にツッコむと思うのだが、当時の私はまだ特に気にならなかった。
「じゃあ、行きましょうか。」と言う夫に続き、チンピラさんも「行こう、行こう!!!!!」と、大声で言った。
この辺りから、チンピラさんの様子がおかしかった。
普段のチンピラさんの体内に備わっているはずの、音量調整機能が完全に失われ始めたのだ。
その後私達が行き着いた先。二軒目の店は、カラオケの付いたスナックだった。
古びたのれん。気さくなママと、常連客らしきオッチャン達が楽しそうに話していた。
良い店だな。中で煙草が吸える。
「乾杯〜!!!!!!!」
完全に音量の調整機能を失ってしまったチンピラさんの音頭で、二次会がスタートした。
噂には聞いていたが、彼はお酒を飲むとかなり人が変わるらしい。
「あらよちゃん!あらよちゃん!何か歌おう!」
とデンモクを差し出してくる。
確かに。無愛想で無口な怖さは無くなったな。だが、これはこれで、別の怖さがあるな。
ある程度時間が経ち、皆良い感じに酒が入っていた。
私はというと、酒乱の自覚がある事と、まだ慣れない環境の中なので、全く酔っていなかった。酔わないと心に決めた緊張感が続いていた。
でくのぼうさんは、常に色々な話をしていた。話題が絶えなかった。
内容は一切覚えていない。理由は話が全く面白く無いからである。
それまで、でくのぼうさんと、仕事以外で長い会話をあまりした事が無かったため、気付かなかったが、
酒の席でこんなに話が面白く無い人間も珍しいな。
と考えながら話を聞いているフリをしていた事を今でもハッキリと覚えている。
私の夫も、私と同じような感情で彼の話を聞いているようだったし、チンピラさんに至っては全く話を聞いていなかった。
そんな中、キラキラとした瞳で、真剣に話を聞いている人間が唯一いた。
彼の妻である。
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