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ハイボールシンデレラ2〜親友からの結婚報告〜
「は? 誰と?」
自分の服に少しかかってしまったグレープフルーツサワーをおしぼりで拭き取り、僕はそう聞いた。
「誰とって、普通に彼女とだよ。」
彼に「普通に彼女」と言う概念があった事にまず驚いたし、そんな存在が居た事も知らなかった。
タツヤとはだいたい月1、2ペースで顔を合わせるのだが、その度に違う女性の話をしていたし、その女性達の統一性の無さにいつも疑問を感じていた。
5つ下の女子大学生との付き合いを話していたかと思えば、次に会った時には50代の既婚者女性と不倫をしていたし、
中学校で国語を教えている教師との出会いを語っていたと思えば、その次の月にはタイから留学してきた女性と付き合い始めていた。
驚いた表情でタツヤの顔を見る僕に、
「俺の事はいいんだよ。お前の話だよ。」
と、話を続けた。
「いや、良くないだろう。いつから付き合い始めた?」
「うーん、半年前くらい?」
確かに、思い返せば半年前ほどから、タツヤのそういった話を聞かなくなった。
当たり前に、タツヤは統一性の無い女性達と遊んでいるとばかり思っていたため、特に気に留めていなかった。
聞けば、半年前に出会った整体師の年上女性と付き合い始め、出会って3ヶ月程でプロポーズをし断られていたが、先月OKが出て、来月には籍を入れるらしい。
写真を見せてもらうと、黒い艶やかな髪を後ろで簡単にまとめ、ナチュラルなメイク、シンプルな服を着こなすスラっとした細身の女性だった。
タツヤのような、遊び果たした人間が行くつく最終地点はこういう所なんだ。と感慨深くその写真を眺めていた。
「彼女に出会った時に、この先長く居られるな。って人生で初めて思ったんだよね。」
タツヤのこういった顔を初めて見た。
そうか、結婚。僕の周りには、SNS上でちらほらと結婚したと報告している同級生が増えていたが、こんなに身近で結婚の報告を聞いたのは、タツヤが初めてだった。
「おめでとう。」
「おう。」
僕達はそう言い合うと、一口酒を飲んだ。
「俺達、もう20代も後半に入ったべ?
結婚は、俺がしたいからするけど、このご時世しない奴も多いし、したくないならする必要もないだろうけど、お前は童貞こじらせすぎだろ。適当にアプリでも始めてみれば?」
グサグサと痛い所を突いてきた。
僕は「いや、童貞じゃねーし。」小声でそういうと、
空いたグラスを机に置いた。
僕は童貞ではない。
細かく言う所の、素人童貞だ。
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