ハイボールシンデレラ14〜割としっかりとした作りの部屋〜
割としっかりとした作りのエレベーターに入り、僕はマキさんが住む階数のボタンを押した。
到着を知らせる音と共に、エレベーターの扉が開くと、割としっかりとした扉が並ぶ道へと続いていた。
その道を、割としっかりとしたライト達が照らしていて、僕は割としっかりとした作りの道を進んだ。
確実に僕よりも良い所に住んでいるな。
……「保育士」は、多忙だというしな。
その割には、低所得なので早期退職する保育士が増えていて人手不足だと、前に社員食堂の小さなテレビで見たニュース番組を思い出していた。
…きっと改善されたんだな。
割と最近見た様な気がしていたが、この最寄り駅には急行が止まらないし、きっとマキさんは物件を選ぶセンスがあるのだと感心した。
僕はマキさんの家番号が表記されている扉の前に立つと一息つき、割としっかりとした作りのインターホンを押した。
すると、ガチャっという音と共に、マキさんが顔を出した。
「童顔」であった。
2週間の間に、僕はマキさんの顔の記憶が少し薄れていっていた為か、かなり記憶を美化していた部分がある事に「マキさん」の顔を見て、気が付いた。
「おつかれー。結構遠かったよね!ごめんねー。」
マキさんは扉を大きく開き、「どうぞ!」と中へと案内した。
割と広めの玄関には、可愛らしいインテリアとこぢんまりとした観葉植物などが飾られていて、とても綺麗にまとめられていた。
外観もそうだが、内観もかなり好条件であった。
…家賃、どのくらいだろう。
そんな下品極まりない考えが浮かんでしまった自分に嫌気が差し、僕はマキさんとの時間に集中しようと心を入れ替えた。
マキさんは、白の着心地のよさそうなタオル生地のショートパンツを履いていて、色白の綺麗な太ももが、僕の目に入ってきた。
……好き、なのかもしれない…。
僕は、先ほどまでの物件に対する疑問など吹き飛んでしまい、マキさんの自宅にいるという緊張と胸の高まりが態度に出てしまわないように、必死に冷静を装っていた。
玄関で靴を脱ぐと、白でセンスのあるインテリアで統一された、綺麗なリビングに案内された。
僕は「座って〜」と言われるがまま、白のソファーに腰掛けた。
腰掛けた瞬間に「あ」と声に出した僕はすぐに立ち上がり、「さっき、アイス買ってきたんだよね!」と持っていたビニール袋をマキさんに差し出した。
「えー、ありがとうー!」と笑顔で言うと「これ、めっちゃ好きなやつ!あとで一緒に食べよう!」と言い、冷蔵庫の冷凍室にしまった。
その後、マキさんは冷蔵室を開けると、「ユウくんお酒、何が良い〜?レモン酎ハイとか買っておいたけど。」と言い、僕の方を見ると「"この間"飲んでたから。」と少し意地悪そうに笑った。
「え、あ、何でもいいよ。」
僕がそう答えると、大きめの氷が入れられているシンプルだがセンスの良い形をしたグラスが目の前に置かれ、
「私、ハイボール作るから一緒に飲む?」と炭酸水とウイスキーを持ったマキさんが隣に座った。
白のショートパンツと色白な太ももが、つい、目に入る。
おかしい…。
まだ僕はアルコールを摂取していない。
しかし僕の目には、また変化が起きていたのだ。
僕の隣に座る彼女は「童顔の美女」だったのだ。