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ハイボールシンデレラ19〜親友の左手の薬指〜【ユウ編・終】



目の前にハイボールが運ばれると、僕は勢いよく飲んだ。

美味しかった。

マキさんと飲んだハイボールとはまた、違った味だった。



ビールを勢い良く飲み、電子タバコを加熱し始めたタツヤの事を見て、僕は一つ思い出した。


「そういえば、タツヤ結婚は?今月って言ってなかったっけ。」

電子タバコを吸い、煙を吐き出したタツヤは「したよ。」と答えた。


先月の頭、この居酒屋で飲んだ以来、僕達は会っていなかった。


「おめでとう。どう?結婚は。」


タツヤは、また電子タバコを吸うと、左手を僕に見せた。


薬指には指輪がはめられていなかった。


「離婚、しました!」

タツヤは堂々と答えた。


先月、彼から結婚の報告を聞き、今はその翌月だ。


「は?」と言って驚いて見せたのだが、実際の所、彼から「結婚報告」を聞いた時よりも、「離婚報告」を聞いた今の方が、妙に納得してしまった自分がいる。



タツヤはまた一口ビールを飲むと、「で、あの子は今俺が惚れてる女。」と、カウンター席に1人で座っていた女性を指した。


実をいうとカウンターに、あまりにも派手な服装をした女性がいるな。と、ずっと気になっていた。彼女は髪色も明るかったので、店内でとても目立っていた。


振り返った彼女は、笑顔を見せて、飲んでいたジョッキを持って僕達のテーブル席へと移動してきた。


「こんばんは〜」彼女は満面の笑みで僕に笑いかけた。


「とりあえず、お兄さんの失恋と、タツヤさんの離婚に乾杯しましょっか!」


彼女がそう言うと「そうだねー」と、タツヤが気持ちの悪い笑顔で派手な女性に言った。


「乾杯〜」

ハイテンションでそう言う女性と、それに続くタツヤの勢いにつられて、僕も乾杯に交わった。



親友の離婚報告に続き、突然初対面の女性が出てきて、動揺を隠せなかった僕だが、



先程まで悩んでいた「マキさん」の事なんて、そんな気にするような事ではないような、そんな気がしたのであった。


3つのグラスが合わさる音が鳴ると、僕はまたハイボールを一口飲んだ。


美味しい。

ハイボールシンデレラ・ユウ編【終】

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