ハイボールシンデレラ22〜ミナミの帝王〜
俺がトウコとの「結婚」を望んだのは今から、およそ半年前。
出会ったその日の事だった。
俺は大学生の時、4年間近所のコンビニで深夜帯のアルバイトをしていたのだが、その時に出会った3つ年上の、「ミナミくん」という先輩がいた。
同世代の従業員が多かったため、その時は、ミナミくんがアルバイトの中では1番年上で、歴が長く、仕事もできた。
深夜帯のバイトリーダーだった彼を、俺達は「ミナミの帝王」と呼び、慕っていた。
ミナミくんと俺は、睡魔を乗り切りると湧いてくる、深夜の意味のわからないハイテンションを共にした思い出深い仲である。
そんなミナミくんとは、「アルバイト」という接点が無くなってからも時々連絡を取っていたし、たまに飲みにも行っていた。
そしてある日、いつも通りミナミくんから突然連絡が来た。
「タツヤ明後日ヒマ?」と。
俺は暇だった。とても暇だった。
というのも、ついこの間まで付き合っていたタイの留学生の彼女が、国に帰ってしまったのだ。
「ゴメン、タツヤ、モウ、アエナイ」と言われた時、俺はかなり落ち込んだ。
彼女との時間はとても居心地が良いもので、とても気に入っていたのだ。
その時間が無くなってしまい、かなりの喪失感があった時に来た連絡だった。
「めっちゃ暇です。」俺は速攻で返した。
すると、すぐにミナミくんから電話が来た。彼は文章があまり好きではないため、すぐに電話をかける癖がある。
「タツヤ久しぶり。」
「久しぶりですね。」
「明後日18:00にいつもの居酒屋来れる?」
「相変わらず要件しか言わないですね。行けます。」
ミナミくんは自分からは要件しか言わないのだが、質問には割と答えてくれる。
俺の方から詳しく聞き出すと、彼女が出来た事を教えてくれた。
ミナミくんの彼女、「ミナミくんの恋人」は、ヨガインストラクターをしていて、スタイルが良い上にかなりの美人らしい。
どうやら俺に紹介して自慢したいようだった。
失恋したての俺にとっては、少し鼻についたのだが、ミナミくんの恋人が1人友達を連れて来るらしく、俺への女性の紹介も兼ねてくれるようだった。
その事を聞いた俺は、「行きます。行きます。」と二つ返事で了承した。
そんな経緯で、ミナミくん、ミナミくんの恋人と、その友人、俺での4人での飲み会が開催された。
当日になり、俺は約束の店に行くと、先にミナミくんが来ていて、テーブル席に座っていた。
「お久しぶりですー。」と声をかけると、「おう、タツヤ。久しぶりだな。座れよ。」と、隣の席を指差した。
俺が到着したすぐ後に、2人の女性も店内へと入ってきた。
ミナミくんが女性達に声をかけると、「こんばんはー。」と笑顔でこちらに来て、正面の席に座った。
僕の前に座った女性は、シンプルな服装を着こなす長身で細身なモデルのような女性で、愛想も良い。
彼女と出会わせてくれた彼を、さすが「ミナミの帝王」だ。と、改めて尊敬したのであった。
これが、「トウコ」との出会いだった。
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