ハイボールシンデレラ27
順番になった俺達。
空いたカウンターに横並びに座った。
亭主と奥さんらしき女性が、手際良く作業しており、トウコちゃんと「楽しみだね」なんて密やかに話すと、あっという間に目の前には、溢れんばかりの炒飯が置かれた。
2人で頼んだ「並」サイズが、男の普段の感覚からして大盛りくらいあるのだが、こんなに細身の女性がこの量を完食する事は難しいだろう。
トウコちゃんの見た目で判断した俺だったが、その期待を裏切られた。
トウコちゃんの細身の身体にどこに収納されたのだろうというほどに、綺麗に平らげてしまったのだ。
その姿に横目で感心しながら、俺もその炒飯を全て平らげた。
絶品であった。
流石、行列になり、話題になった店である。
2人で完食し終えると、満足そうにパーキングまで歩き、車に乗り込んだ。
車に乗り走らせると、2人で炒飯について絶賛し合った。
「やっぱ人気な所って美味しいね。お腹いっぱい」と、トウコちゃんはお腹を抑えるポーズをして言った。
「てか、サイズ思ったよりデカくなかった?大丈夫?」
「ね。」と彼女は大きく笑い、「でも、美味しくて全部食べれちゃった。」と笑いながら続けた。
可愛い。
打ち解けた雰囲気になった事もあってか、トウコちゃんは自然な表情で俺を見つめてきて、正直今俺はとても、ムラっとしている。
俺は本能にかなり忠実に生きている男だ。満腹になる事により、3代欲求の睡眠欲と性欲に全然神経が重きを置き始めたのである。
俺は車の窓を開けて、風を感じた。
「え?暑い?」
快適な温度であった車だったが、何故か窓を開け始めた俺に、トウコちゃんは疑問の表情をしていた。
今、僕のチンコに人格を乗っ取られて、君の身が危ないので、頭を冷やすために窓を開けました。なんて言ったら、きっとトウコちゃんは恐怖のあまり、そのまま警察に通報する事だろう。
俺は「アハハ」と笑い、「風あった方がドライブっぽいかな。と思って。」と、訳のわからない言い訳で返した。
車を走らせ、先ほど合流したコンビニに戻った。
早かった。
デートとの道中は、ドライブだと特に感じるのだが、行きより帰りの方が早く感じる。きっと、打ち解けた安心感からか居心地がいいのだろう。
「トウコちゃん、何が飲む?」
俺は車を停めると、トウコちゃんに尋ねた。
「えー、ありがとう。
じゃあ、紅茶ラテ。なかったらカフェラテ。」
「了解。」
自分至上最も爽やかな表情で、「了解。」と答えたのだが、これで紅茶ラテが無かったら、どうしよう。少し恥ずかしいな。なんて考えながら、コンビニに入った。
「紅茶ラテ」はあった。
確かに。
トウコちゃんの近所のコンビニである。
ラインナップは分かっているであろう。
俺は「紅茶ラテ」と、自分のコーヒーを手に取り、レジで会計を済ませると、トウコちゃんの待つ車へと戻った。
トウコちゃんは少し、ウトウトした表情をして、背もたれに、もたれかかってきた。
俺は空調の温度を少し下げた。
「え?暑い?」
「いや、風を感じたくて………
寒い?」
「いや、大丈夫だけど。」
俺は手にしていた紅茶ラテをトウコちゃんに渡した。
「これ飲んだら解散しようか。」
「あ、ありがとう。わかった。」
トウコちゃんは、ストローを刺すと、紅茶ラテに口をつけた。
可愛い。
俺もコーヒーにストローを刺して、飲み始めた。
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