ハイボールシンデレラ7〜夜の新宿は刺激的〜
時刻は21時30分。
店を出た時、話をしている女性達に大声で叫ぶガラの悪い若者がいたり、夜の新宿らしさが出てきていた。
僕達はビルの中にあるカフェ&バーに場所を移動させた。
僕はあまりこういうお洒落なバーには行く機会がなかったのだが、マキさんはこの店に行った事があると言っていた。
マッチングアプリで出会った男性と行ったのかな。この子。と他の男の影を感じ、少し嫌な気分になったのだが、「童顔の美女」なら致し方ない。
薄暗い店内に辿り着くと、彼女はモヒートを注文し、僕はまたハイボールを注文した。
雰囲気の良い音楽が流れていて、僕の酔いのスピードはまた上がってきていた。
「ユウくん、彼女とかいないの?」
「うん。いたらアプリなんかしないでしょ。」
「………そうだね。」と彼女は笑った。
何だか今、変な間があったな。と少し思ったが、気にしなかった。何故なら彼女は「童顔の美女」なのだから。
2杯飲み終えると、マキさんは「酔ったー」と言い、こちらを見つめてきた。
「童顔の美女」にこんなに至近距離で見つめられ、ドキッとしない男がこの世の中に存在する事だろうか。
僕はその目を見つめ返す事が出来ず、カウンターに大量に置いてあるボトルの酒に目を逸らし、ラベルの柄に目をやった。
「俺も酔ったし、そろそろ出ようか。」
小さな皿に置いてあるミックスナッツを食べ終えると、僕達は店を出た。
バーを出ると23時近く。人が多く通る路地で野ションをしている中年の男がいた。男は酔っているようだった。
「おい、見ろよ!オッサンおしっこしてる!」その周りでガラの悪い若者数人が笑いながら動画を撮っていた。
新宿だ。
かなり良い雰囲気になった僕達だが、その空気が一気にブチ壊れた。マキさんが男達にドン引きした表情をし、「行こうか。」と半笑いで言った。
「そうだね。」僕も半笑いで答えた。
僕達は駅の方へと歩き始めたのだが、マキさんが「どこか行く?」と少し冗談混じりに僕に言ってきた。
どこか行く?
どこかって?
これは?
これは?
どういう、意味、なんだ!!!
そういう、意味、なのか???
僕は割と年季の入った童貞なので、脳内でパニックが起きていた。
「え、え、え、あ、え、どこかって?え?」
かなり気持ちの悪い感じになってしまったのだが、そんな僕にマキさんは余裕そうに笑いながら、「そことか。」と建物を指差した。
看板に派手な光が装飾してある、宿泊施設だ。
どこかってーーーーーーーー!!!
ここだったーーーーーーーー!!!!!
僕のパニックは増していた。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
ここは断るべきなのではないだろうか?
お酒が入って酔った女性と会ったばかりでそんな事になるだなんて、何か試されているのではないだろうか?
男としても、ここは帰りな。と言って少しカッコつけたいところーーーー
「嫌だ…?」
「童顔の美女」は目を潤ませ、悲しそうに僕の目を見つめてそう、言った。
「行きます。」
僕達は建物へと向かって歩き始めた。
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