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ハイボールシンデレラ25〜昼間は俺のターン〜



デート当日、俺は朝からレンタカーを借りに行った。

トウコちゃんを連れて行きたい店が、車では行きづらい場所にあるのだ。


初デートに昼間のドライブデートを選んだのには理由がある。

基本的に俺が女性と遊ぶ時は、夜に酒を飲む。
今までの俺は、デートからベッドまでのスピード感を求めていたのだ。

俺の中でのデートで目標とする最終着地点はベッドであった。


もちろん、自覚している。最低である。



今回の俺は今までと違う。

もちろんトウコちゃんとセックスがしたい。

しかし、今までとは何かが違うのだ。


今まで女性を口説き、デートし、セックスし、そのまま成り行きで付き合うまでの俺の行動や言動は、いつも「チンコ」が主導権を握っていた。

俺のチンコが「綺麗」「可愛い」と女性に伝え、チンコが面白い会話を作り、チンコが会計をし、チンコがホテルまでのルートを辿った。


だが、トウコちゃんに対する俺はチンコではなく、俺自身が喋っている。

今日、俺が性欲を見せてしまうと、その気持ちが伝わらないような気がしたのだ。


なので、ここは昼間のドライブデート。

夜の暗い雰囲気がチンコに主導権を与えてしまう気がするし、アルコールなんて入れてしまった時には、確実に俺の人格がチンコに乗っ取られてしまう。

車を運転し、レンタカーを返しにいく。という予定を立てることによって、俺のチンコは封印されたのだ。

今日はチンコではなく、俺のターンだ。


トウコちゃんに「もうすぐ着く」とメッセージを送信し、彼女の家の近くのコンビニまで迎えに行った。

シンプルなワンピースを着こなした彼女が待っていて、アイスコーヒーを2つ持っていた。

そして「迎えに来てくれてありがとう。はい。」と、片方を俺にくれた。

可愛い。

「ブラックで良かった?」

可愛い。

「タツヤくん?」

可愛い。



俺はチンコに主導権を握られている時とは、また別の頭の悪さがあった。

「トウコちゃん、この間会った時みたいな服装も似合うけど、そういうワンピースとかも似合うんだね。何着ても可愛いね。」

ブラックでいいかと聞かれているのにも関わらず、トウコちゃんのあまりの可愛さに会話が出来なくなっていた。


「ありがとう。」

トウコちゃんは戸惑いつつも笑ってくれた。



トウコちゃんが車に乗り込んだ事を確認し、目的地までの経路を辿り始めた。


ある程度女性と遊び慣れると、俺は「緊張」という感情を失っていたのだが、この時俺はかなり、緊張していた。



場数を踏み、多くの女性と会話する事で、俺は女性を口説くのに変な自信が付いてしまっていた。

しかし、本気で1人の女性を口説く時には、今までの経験なんて水の泡という事に気付いた。



俺は今、本気だ。


この本気が焦りとなって、トウコちゃんに余裕のない姿を見せないように気を付けたいものである。


「いただきます。」とトウコちゃんにコーヒーを見せる仕草をし、一口頂くと、「今日は、トウコちゃんに絶品の炒飯を食べさせに行こうと思います。」と、伝えた。

「炒飯なんだね。」

「炒飯です。」

「白米ではないんだね。」

「あえてのね。」


俺はあの飲み会の時から、ずっと炒飯が食べたくなっていたのだ。

前にネットで、行列が出来る中華料理店の炒飯が特集されていて、少し話題になっていたのを思い出したのだ。


「ありだねぇ。」と、トウコちゃんは笑った。

「炒飯はありだよね。」と、俺も笑った。


緊張していた俺だったが、トウコちゃんと話をしていると、気付けば普段の調子を取り戻していた。

彼女とは何だか会話の空気感が合うのだ。

昔からの友人のような親しみを覚える。



「並ぶみたいだけど、大丈夫?」

「え、並ぶんだ。そんなに人気なんだね。」


初デートに連れて行くには、少し汚い店だし、無難な選択ではないかもしれないが、俺には作戦があった。



いついかなる時も、気まずい空気を作らない作戦である。


行列に並んでいる間に、俺は俺自身をプレゼンし、彼女に売り込もうと思うのだ。

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