ハイボールシンデレラ23〜俺の白米にかける思い〜
飲み会が始まり、全員が生ビールの中ジョッキを頼んだ。
席にジョッキが行き届くと、乾杯の後に「待ってました」と言わんばかりのミナミくんが、すぐに恋人を紹介した。
ミナミくんはかなり浮かれているようだった。
彼女は「ハルミさん」という名で、皆が「ハル」と呼んでいた。
ハルさんは確かに美人だ。
ハキハキと話し、頭の良さそうな女性で、ミナミくんが自慢したくなる気持ちも分かると思った。
そして、ハルさんがインストラクターになる前に、別のヨガ教室で知り合った友人である「トウコちゃん」を紹介された。
トウコちゃんは、ハキハキ話すハルさんとは対照的に、穏やかにゆっくりと話し、柔らかい雰囲気が魅力的な女性だった。
かなりの薄化粧に見えるのだが、肌が物凄く綺麗な上に、この雰囲気なので、とても若く見えた。
初対面では年下かと思ったのだが、聞けば俺の5つ年上であった。
女性の年齢とは、本当に分からないものである。
続けて俺も自己紹介を終えると、ハルさんとトウコちゃん2人共に、「若いんだね。」と少し驚かれた。
俺は親友のユウには「無駄に堂々としている」と言われ、そのせいか実年齢よりも上に見られる事が多い。
決して俺の肌が汚いわけでも、老け顔なわけでもないと信じたいと思っている。
自己紹介を終えた俺達は、何品かつまみを注文した。
その流れから、複数の初対面の人間が集まると始まりがちな「食の話題」で話をし始めた。
この、何気ない「食の話題」だが、俺が「トウコ」との運命を感じざるを得ない大きなキッカケとなったのだ。
「私はね、白いお米が好き。」と、トウコちゃんが言った。
何が「食」の中で1番好きか、という話題の中で、「白米」と答えた人間に初めて出会ったのだ。
「え?」
俺は、食い気味で聞き返した。
「結局、白米の甘みが好きなんだよね。おかずは、お米を食べるために有る物だと思ってる。」と、笑いながら言ったのだ。
「雑穀米は?」
俺の問いに対して彼女は、「うーん。雑穀米はちょっと苦手なんだよね。口に残る感じがするし、おかずよりも主張してくる感じがある。」と言った。
俺は、この答えをしたトウコに対して激しい共感を感じた。
こんなに、「雑穀米を食べそうな女性」が、白米が好きで、雑穀米を嫌っているという事に、とてつもない良い「ギャップ」を感じた。
俺は注文してあったチゲ鍋の残りを、雑炊にする為に添えられた白米をジッと眺めると、再び、トウコの顔を見た。
白米の「白」から、トウコの「真っ白なウエディング姿」が容易に俺の頭に、思い浮かんで来たのだ。
俺は、こんなに価値観の合う女性に初めて出会ったと、思ったのだった。
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