ハイボールシンデレラ24〜魂の猛アタック〜
「分かる。」
俺は、激しい共感の気持ちを、真っ直ぐと目を見 てトウコちゃんに伝えた。
俺の目の圧に、彼女は少し戸惑っていたのだが、困った顔をして笑った。
「雑穀米はねぇ、邪道だよねぇ。」と俺が言うと、これにはトウコちゃんが「分かる。」と、乗った。
「炒飯は?」
ミナミくんの問いに、「炒飯はありだな。」「あぁ、それはありだね。」と、俺達は答えた。
「意味わかんねーな。」と、ハルさんとミナミくんは笑っていた。
「あれは、美味いじゃんか。炒飯は。」
「うん。炒飯は美味しいからアリだね。」
と、2人で共感し合った。
ミナミくんが、「お前らは雑穀米がただ、口に合わないだけじゃないか。」と言っていたが、そんな事は聞いていなかった。
何故なら、今俺は同志に出会ったのだ。
今俺の目にはトウコちゃんしか映っていなかったし、トウコちゃんの声しか耳に届かなかった。
俺は昔から「女」好きだった。
特に好みのタイプというものも無い俺は、「女」という生き物ほぼ全員が、とても可愛く見える。
高校生になったあたりから、俺は何も考えずに片っ端から女性と付き合っていた。
「可愛い」と思う女性を目の前にすると、俺は「口説く」という、手段しか思い浮かばなくなってしまうのだ。
その結果、嫌な思いをさせた女性達が、俺の悪口を書く掲示板がネット上に出来ていたらしいが、
それでも女遊びを辞めなかった俺の悪口を言う事を無駄だと思った彼女達は、
最終的に俺の事なんて忘れて、とても仲良しグループになっていた。
俺の悪口の掲示板はカラオケの約束をする掲示板に変わっていた。
なんと最近もその仲は続いているようで、その元カノ達が、某テーマパークで、お揃いのネズミのカチューシャをつけて、全員で「重り」を持ち上げているような写真を、撮っていたのをSNS上で見た。
彼女達の友情を繋いだキッカケになれて、嬉しいとさえ思っている俺は、
女遊びを辞める気は全くもって無かった。
俺は「今」のために女性と付き合っていたし、先の事を考えた事なんて一度も無かった。「結婚」なんて、俺の頭には浮かんだ事も無かったのだ。
しかし、この日俺はトウコとの「未来」を想像した。
こんな気持ちは初めてであった。
4人で楽しく飲み、この日は一次会で解散になった。
帰り際、「トウコちゃん連絡先教えてー」と、言った俺に、「いいよー」と彼女は快く応えてくれた。
この日、トウコちゃんに対して、誰が見ても分かるくらいの好意を見せた俺に、ミナミくんからは小声で「俺の彼女の友達なんだからな。ふざけた真似はするなよ。」と、脅された。
ふざけた真似をする気はない。
今、俺はトウコちゃんを振り向かせたい!!!ただ、一心だった。
この日から、俺の決死の猛アタックが開始した。
俺は自宅に帰ると、すぐにメッセージアプリで、トウコちゃんに家に無事に着いたかを確認した。
「無事着いたよーありがとう」と、可愛い絵文字と共に送られてきた。
俺は直ぐに電話をした。
女性にアプローチをする際、文でやり取りが残ってしまうのは少し危険だと思うのだ。
文というのは、良くも悪くも残る。
酔いが覚めたトウコちゃんが朝、俺の文を見た時に、気持ち悪いと思われる危険性がある。
「女」というのは不思議な生き物で、好印象だと思っていた男も、冷静に考えると突然、気持ち悪く見えてくる事があるらしい。
俺が会って間もない人間への、アプローチで大切にしている事、それは、冷静に考える隙を相手に与えさせない。という事である。
「もしもし?」
突然の電話に驚いたようなトウコちゃんが、電話を取った。
「もしもし、トウコちゃん、今日ありがとう!めちゃくちゃ楽しかった。」
と、伝えると、「今度トウコちゃんと2人で、飯行きたいんだけど、空いてる休みある?」と続けた。
「私も楽しかったー!えーっと…来週の日曜は空いてるけど…」
「じゃあ昼飯行こう!」
「えー…(笑) 分かった。空けておくね(笑)」
半ば強引な誘い方をしているため、トウコちゃんは若干引いていたが、女性を口説く時には勢いも大切だと俺は思っている。
結果として、俺はトウコちゃんと初デートを約束する事に成功したのであった。
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