古代オリエントの神々 -文明の興亡と宗教の起源

 この内容の本が1000円かそこらで買えて誰でも読めんのすごくね????

 まっっっっっっっじで面白かった。断片的に知ってる古代世界の神様たちが極めてわかりやすくまとめられてて、しかも、これが特に重要なんだけど、どんな社会基盤の上にその神に対する信仰が生まれたかっていうのも死ぬほどわかりやすく書いてあって、頭から最後までずっと興奮しながら読んだ。

 本の構成としては、まず第1章で、古代オリエントがどんな社会制度だったかを超特急で説明してくれます。

 約3000年の歴史を駆け足で紹介した。

 ここまでで42ページ。気が狂うほどの速度である。
 その後に、各地で信仰された神様をジャンルごとに分けて解説してくれるんだけども、もうすでに読者はそれぞれの土地柄がわかってる状態だから、わかりやすさのケタが違う。

 古代文明の宗教っていうと、なんとなく各地でいろいろ神様がいた多神教の時代だったんだよな〜みたいな、平たいものの見方をしがちだった、ていうことに気付かされた。
 そもそも、メソポタミア地域とエジプト地域の根本的な環境の差を理解してなかった。

 どっちの文明も川から畑まで水路を引っ張る灌漑農業で栄えてたけど、泥ばっかりで一旦川が氾濫したら家も畑も全部台無しになっちゃうメソポタミア(というかメソポタミアのほぼ南端に位置するシュメル)と、1年中ほとんど快晴で川の氾濫も予知できるほど定期的でナイル川が運ぶ豊かな土壌のエジプトだと、死後の世界観も全然違う。

 恵まれた環境にあったエジプト人は死んでもまたエジプト人として復活したいし、そもそも外国で死ぬのなんて絶対耐えられなかったのに対して、メソポタミアはその後旧約聖書に反映されるような「裁きを受けて天国(=メソポタミアではない場所)に行ける」っていう死生観なんだよな。
 そりゃエジプト人が熱心にミイラ作るわけだよ。死んでもコンティニューしたいんだもん。

 あと、この本でもちょくちょく触れられてるけど、この時期の宗教観ってめちゃくちゃ旧約聖書に取り入れられてるんだなって思った。
 旧約聖書は古代イスラエル人が単独でいきなり作ったものじゃなくて、それまでの文化を下地にして出来たってことが、すごくよく分かる。当然っちゃ当然なんだけど、そんなこと今まで考えたこともなかった。せいぜい「あー洪水神話はバビロン捕囚時代にメソポタミアから輸入したのね」くらいにしか思ってなくて、ほんとに勉強になった。

 1個納得いかなかったのは、地母神がネコ科の動物と一組になってる例が多いっていうところ。豊穣の象徴である地母神がネコと一緒に描かれるのは、ネコの鳴き声か雷鳴を連想させるからだって言うの。
 雷が豊穣と結びつくのは日本でも同じよね。稲妻って言うくらいだしね。
 でも、そんな言うほど、ネコの鳴き声って雷鳴っぽいか…?wwww

 どんなジャンルでもオタクやってればそれなりに古代神話について断片的に知ってるひとも多いと思うんだけど、これ1冊読むだけで頭の中でバラバラに散らかってる知識がきれいに整頓されて、もはや快楽って言えるくらいの面白さがあるのでぜひ読んでみてほしいです。

 この著者はたぶんメソポタミアが本職の方っぽくて、シュメルっていう新書も出しててそっちも面白いです。この本読んでシュメルに興味湧いたら手足してみてほしい。





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